2014年は、世界中のファンを魅了するムーミン物語の原作者トーベ・ヤンソン(1914–2001)が100歳を迎える年である。というわけで、今年一杯はフィンランドを中心に、世界中のあちこちで「トーベヤンソン生誕100周年」と題する様々なムーミン関連イベントが企画されている。

　 → 世界的に愛されているムーミンの生みの親トーベ・ヤンソン

　この「生誕100周年」にちなんで、ムーミンキャラクターのマグカップ製造元としても良く知られるフィンランドの老舗陶器ブランドARABIA（アラビア）が早速、1月から新しい期間限定のムーミンシリーズをリリースした。同シリーズは、マグカップと大きさが異なるふた付きの陶器製のジャー（瓶）3種からなる。

　このシリーズは、1製品を購入する2ユーロ（約283円）が自動的にユニセフ（UNICEF）に寄付され、寄付金は世界の子ども達の教育向上推進プログラムに役立てられる。トーベの姪で、ムーミンキャラクターズ社のクリエイティブディレクター兼会長のソフィア・ヤンソンさんが、昨年の8月9日、まさしくトーベのお誕生日に語ってくれた同社の展望がついに実現したという訳だ。

　アラビアのムーミンマグといえば、そうでなくても毎年新しいデザインが発表されるので、毎年買い集めるコレクターやファンも多い。今回の「生誕100周年」シリーズのイラストは1977年に出版された絵本『ムーミン谷へのふしぎな旅』をテーマに、トーベ・スロッテが手掛けた。画風は出版された当時を意識したレトロな感じが漂う中、キャラクターそれぞれの動きや表情が生き生きとしているのが特徴的だ。とりわけミイの小さな仁王立ちとふふんと勝ち誇ったような表情がたまらない。

　『ムーミン谷へのふしぎな旅』のストーリーを簡潔に紹介すると、気むずかし屋の少女スサンナが眼鏡を無くしてしまい、野原で新しい眼鏡を見つける。スサンナが拾った眼鏡をかけてみると不思議不思議、今までの世界が全く違ったものに見えてきた。新しい眼鏡に導かれるまま、スサンナは冒険を繰り広げ、ヘムリンやメソメソ君、トフスランとビフスラン夫妻などのムーミン谷の仲間たちとも出会う。やがて嵐が来て、スザンナと彼女の仲間たちが避難場所を探していると、トゥーティッキが気球に乗せてムーミン谷に連れてきてくれる。ムーミン一族は、気球ではるばるやってきたお客様たちを温かく迎え、早速ガーデンパーティーを開いた――というものである。

　 → アラビアの生誕100周年記念シリーズ

　この愉快でにぎやかなパーティーの様子が描かれた「生誕100周年」シリーズのマグには、6個に1つの割合で、カップの内側にスサンナの眼鏡が描かれている。運よく（？）眼鏡を見つけたあなたにはスサンナ同様に、ムーミン谷にたどり着く新天地への大冒険が待ち受けているのかもしれない――このような、まるで「おみくじ」みたいなスリルがある、心憎い演出である。

　大中小と3つの異なるサイズのジャーには、マグカップと同じムーミンキャラクターがパーティーをしている場面が描かれている。ジャーの一番小さいサイズのものには、ムーミン族の小さな仲間達が、大きなサイズのジャーには体の大きな仲間たちが、というように描き分けられており、黒塗りの木製のふたがついている。このクオリティー高いジャーには、お菓子や乾燥食品などの保存をしても良し、思い出の品やジュエリー、もしくはコスメティックアイテムなどを保存しておくのにも最適な優れものである。

　さて、このみずみずしいデザインの限定シリーズを眺めているだけでも、うっかり満足してしまいそうになるのだが、トーベ「生誕100周年」だというのに、お祝いするのはアラビアだけ？と首を傾げたあなたは鋭い。さすがデザインの国とあって、フィンランドの他のデザインブランドMuurla（ムーラ）やOpto Design（オプトデザイン）なども、琺瑯（ほうろう）のマグやトレー、コースターにティータオルなど、ユニセフへの寄付を募るムーミンキャラクターのデザイングッズの販売を開始している。

　どれもこれもかわいすぎてもう大変なのだが、自分へのご褒美を買っても、大切な人に贈り物を買っても社会貢献ができるというこのアイディアには脱帽するばかりである。

　 → アラビアの生誕100周年記念シリーズのジャー

　 → アラビアの生誕100周年記念シリーズのマグカップ。「眼鏡入り」のレアなマグカップは6個に1個の割合

　 → 愉快なムーミン一族のパーティーの様子が描かれている

　 → ユニセフとのコラボレーショングッズの数々