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[写真]首相とメディアの関係をどう考えるべきか(ロイター/アフロ)
大手新聞社やテレビ局の幹部が安倍晋三首相と夜の会食を繰り返し、「メディアにあるまじき姿」「首相のメディア対策は行き過ぎ」といった批判が出ています。第2次安倍政権が誕生して以来、メディア首脳と首相の会食は確かに増えてきましたが、いったいどこが問題なのでしょうか。
会食の回数、突出
読売新聞の渡辺恒雄グループ本社会長、産経新聞の清原武彦会長、フジテレビの日枝久会長……。2012年末に第2次安倍政権が誕生して以降、大マスコミのそうそうたるメンバーが首相と会食しています。「首相動静」によると、読売新聞や産経新聞といった保守色の強いメディアばかりではありません。毎日新聞、朝日新聞、テレビ朝日、日本テレビ、共同通信など全国メディアのトップはこの間、ほとんどが首相と会食を持ちました。中日新聞(名古屋)、中国新聞(広島)、西日本新聞(福岡)などの有力地方紙社長とも会っています。
昨年12月の東京新聞によると、安倍首相とメディアの夜会食は、就任後の2年間で40件以上になったそうです。2008年から1年間首相だった麻生太郎氏(現財務相)は10件以下。2009年から3年間の民主党政権時代は、3人の首相合わせて11件しか確認できなかった、としています。
安倍首相は経営陣だけでなく、各社の政治部長や首相官邸キャップらとも頻繁に会食しています。有力紙の記者は「小泉政権時代も首相・メディア幹部の会食はあったが、これほど多くなかった。国政選挙や重要政策の決定直後に会食が多いのも特徴」と言います。
実際、昨年12月には衆院選から2日後の夜、東京の高級寿司店で各社の編集委員・解説委員クラスとの会食があり、出席者の1人だった記者が、集まった番記者らに「内容はオフレコだ」と“解説”してみせる一幕もありました。
メディア懐柔策?
こうした会食は、どこに問題があるのでしょうか。まずは「なぜ会食するのか」の言い分を見てみましょう。
朝日新聞は1月14日の「お答えします」欄でこの問題に言及。安倍首相と親しいことで知られる曽我豪編集委員が「最高権力者である総理大臣がどういう思いで政治をしているのかを確かめる取材機会を大事にしたい」とコメントしました。高級店での費用は首相分も含めて参加者の割り勘、だそう。同様の説明は他のメディアからも出ています。
会食場所は名店や高級店、ホテル内のレストランがほとんどで、料金は1人1万円〜3万円のようです。決して安くはありませんが、店選びには警備当局の判断も働くので、「安い・高い」を軸に考えるのはここでは控えておきます。では、会食問題はどう考えればいいのか、報道現場の声を拾ってみました。
あるテレビ局のデスクは「まずは回数の問題」と言います。
「首相とテーブルを囲む時間が増えると、どうしても相手と一体化していく。会食しながら厳しく問いただしていけるか。しかも内容はオフレコ。厳しく接していると反論しても誰も信じない。視聴者にどう見えているかも考えず、権力者との近さを社内や業界内で誇っているだけ」
メディアの経営陣が首相と会食する、そのこと自体を問題視する声も強くあります。次は官邸詰めの記者。
「日本のマスコミは報道だけでなく、不動産や広告、イベントなど多様な事業部門を抱えているのに、主力の広告収入は減り、どこも先行きが見えない。そんな中、例えば、一大イベントの2020の東京五輪に向けて政府と協力してください、と首相に言われたら、経営陣はいろんな計算を働かせるでしょう」
「どう見えているか」が見えていない大手メディア
ある大手新聞では、首相と社長の会食問題が労使交渉のテーマにもなったそうです。その際、役員は「社長が会食しても紙面は変わっていない(影響を受けていない)」と説明。“メシを食っても筆を曲げなければいい”式の考えを披露しました。
「筆を曲げなければいい」という発想は日本のマスコミに染み付いていますが、そこには「国民にどう見られているか」という視点はありません。ネットの発達で「取材のプロセス」もある程度の可視化が進んできました。報道への評価は「商品である記事や番組の内容」だけではなく、「商品ができるまでの過程」も含むようになっています。その点をメディア自身が理解していないと、「メディアと権力は互いにうまい汁を吸っている」という批判は払拭できないでしょう。
ところで、この問題に関しては、「欧米メディアは権力者と会食などしない」という見方があります。編集部門を中心に記者倫理や厳しい行動基準を設けていることは事実ですが、例えば、米国のニューヨーク・タイムズ紙では、社主が政府要人を招いてしばしば午餐会を開いてきました。その他の国々でも同様の事例はありますし、中国やロシアのように報道機関が事実上、政府の統制下に置かれた国々では関係はさらに密接なはずです。ただ、「首相動静」のように詳細日程を明らかにしていない国も多いことなどから実態は見えておらず、今後は洋の東西を問わず、「マスコミ内部のブラックボックス」の可視化が問われていくかもしれません。
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