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岩手県大槌町は、東日本大震災で犠牲になった町民の生前を記録する「生きた証プロジェクト」の本格的な聞き取り調査を昨年11月、始めた。犠牲者の経歴や人柄、震災当日の行動などを遺族や知人から聞き、検証や防災、風化の防止に役立てようとするものだ。
岩手大学などを中心とした調査チームが、地元をよく知る「案内役」の町民とともに遺族などを訪ね、証言を丁寧に書き留めていく。大槌町の行方不明者、関連死を含む犠牲者1284人全員を目標に、今月3日までに216人分を聞き取った。
先月中旬、案内役の中村百合子さん(71)は、夫・竹雄さん(当時77歳)を亡くした三浦枝美(えみ)さん(75)に話を聞いた。枝美さんは、崩れた防潮堤のそばにある自宅跡を見つめてつぶやいた。「対岸の山が隠れるほどの高い波だったのに。(夫は)どうして戻ったの」
あの日、夫妻は高台まで一緒に避難したが、竹雄さんだけ自宅へ引き返し、津波にのまれた。「お庭で過ごした二人の時間が忘れられない」とうつむく枝美さんに、そっと寄り添った中村さん。「皆つらい思いをしている。あなたは一人じゃないよ」と優しく声を掛けた。中村さんも津波で兄弟2人を亡くした。
プロジェクト実行委員長で、吉祥寺(きちじょうじ)の住職でもある高橋英悟さん(42)は、「証言は、大切な人を思い出すよりどころとなる。震災の経験を打ち明けることで前に進めた遺族も出てきている」と、故人を記録する意義を強調する。
妻・ケイさん(当時74歳)のことを話した東谷(あずまや)藤右エ門さん(81)は、携帯電話に保存した写真を見ながら言った。「妻を知ってもらうことが自分自身の救いにもなるんだ」
写真と文 武藤 要
(昨年12月26日から2月20日に撮影)