[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
「右だよな。右に蹴るんだろう、右に」 7日に行われた湘南ベルマーレと浦和レッズのJ1開幕戦におけるひとコマ。両チームともに無得点で迎えた前半34分に、ベルマーレがPKを獲得した直後だった。 右サイドからMF古林将太があげたクロスを受けようとしたFW大槻周平を、レッズDF森脇良太がペナルティーエリア内で背後から引っ張り倒した――微妙なホイッスルを吹いた松尾一主審に対して、最後まで執拗に抗議していたDF槙野智章が、判定が覆らないと見るや驚くような行為に出る。 ■囁き ペナルティースポットにボールをセットし、心の準備を整えているベルマーレのDF遠藤航の目の前に立って両足のストッキングを上げ直す。次の瞬間、槙野は悪戯小僧っぽい笑顔を浮かべて、まるで旧知の間柄のように左手を遠藤の右肩に添えながら話しかけた。 「どっち側に蹴るの?」 22歳になったばかりの遠藤に対し、槙野は5月に28歳になる。前者が神奈川県横浜市出身なら、後者は広島市出身。これまでに接点も面識も何もない遠藤は驚きながら「秘密です」と返す。すると、間髪入れずに槙野がかまをかけてきた。 「右に蹴るんだよな」 松尾主審にうながされても、槙野はペナルティーエリアから出ようとしない。遠藤の背後に回って、耳元で執拗に「右、右」とささやく。見かねたベルマーレのキャプテン、MF永木亮太が遠藤のもとに駆け寄り、ユニフォームの左胸の部分をポンと叩く。 永木は「気にするな。集中しよう」と声をかけたのだろう。永木からもっと距離を取るように促された槙野は、永木の手を振り払いながらようやくペナルティーエリアの外に出た。それでも、遠藤の左斜め後ろにポジションを取って声を発し続けている。それが冒頭の「右だよな。右に蹴るんだろう、右に」だった。 槙野としては「ささやき戦術」にこんな狙いを込めていたのだろう。右という意識を磨り込むことで、逆に右に蹴ってはまずいと遠藤に心理的なプレッシャーをかける。向かって左側に蹴る確率を高める。日本代表GK西川周作が左側にヤマをかけて飛んでPKをセーブする――。 ■逸話 槙野の「ささやき」に関しては、面白い逸話がある。サンフレッチェ広島に所属し、J2を戦っていた2008年シーズン。開幕直後の3月20日に、ベルマーレのホームに乗り込んだときだった。 1点リードで迎えた後半32分に獲得したコーナーキック。槙野は自らをマークしていたDF斉藤俊秀(現U‐15日本代表コーチ)のもとにあえて駆け寄り、笑顔で握手を求めた。…