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開幕から30分くらいして、空気が変わった。
舞台上で、俳優たちがガチでバーチャ対戦をはじめたのだ。
「TOKYO HEAD 〜トウキョウヘッド〜」 は、90年代半ば。ブームになったセガの3DCG対戦格闘ゲーム・バーチャファイターに青春を賭けた男たちのドキュメンタリー「TOKYOHEAD:REMASTERED」(大塚ギチ著)の舞台化。
バーチャファイターは94年にアーケードゲームとして登場、リアルな格闘技とシンプルな操作性が受けて人気を獲得、ハマった人達(主に男子)による勝ち抜き大会が行われ、95年にはブームが沸騰した。その熱狂の様を当時新人ライターだった大塚ギチが密着取材してノンフィクションとして発表した。
西新宿のゲームセンターSPOT 21に通い詰める新宿ジャッキー(菅原永二)、池袋サラ(石田明)、ブンブン丸(尾上寛之)、柏ジェフリー(吉沢亮)・・・などという通り名をもったおそろしくキャラ立ちした人たちはただひたすらバーチャをやり続け、お金も人生もなげうってしまう。という話がメインなので、ほとんどゲームセンターの中で芝居が進行する。舞台上にはホンモノのバーチャの筐体が置かれ、上手の上部のスクリーンにキャラが闘っているモニター画面が映し出される。
背中合わせの筐体に向かって座った達人たちがモニターを凝視しながらスティックとボタンを操作している様子がホントかウソ(芝居)か、観客の中には半信半疑だった人もいるだろう。私はあらかじめガチでやることがあると聞いていたので、あ、はじまったと身を乗り出した。
俳優の目つきも、スティックを操る手つきもボタンを押す指も呼吸も、勝って嬉しかったり負けて悔しかったりのリアクションもマジだ。
と言うと、対戦になるまでの芝居がウソっぽいみたいで、俳優たちには申し訳ないが、どんなにうまく演じていても、段取りが決まったものと決まってないものの差はなかなか埋められない(そこを埋めようと努めるのが俳優の使命でもある)。
だからこの舞台は、単にバーチャファイター全盛期の記録を舞台化しただけではなく、演劇というウソに堂々と向き合った意欲的な作品だった。
大塚の原作を脚本化し、演出まで手がけたのは劇団ヨーロッパ企画の上田誠。
彼は本に書かれた事実をベースにしながら、取材者である大塚(劇中ではオーツカ/亀島一徳)を登場させ、他にも結婚を間近に控えていたにもかかわらずバーチャのせいで破局した恋人たち(今井隆文、村川絵梨)というオリジナルキャラを作った。…