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「桃香、クリスマスまでに答えくれよな。その日をふたりで過ごすか、サッカー友達とやけ酒を飲むか。天国と地獄みたいでスリル満点だ」
桃香は頷いた。自分でも恋に答えを出さなければならない時期なのだ。宇宙の要塞のライトがチカチカと点滅して、桃香にそろそろ答えを出すようにせかしている気がした。白い強力なライトが線になって夜空に溶け込んだ。
桃香は恋愛に関してはカオル先生が言ったようにまだまだビギナーだと自分なりに思う。慎吾を守ってあげたい気持ちと冬馬に守られたい気持ち、どちらも心地よくどちらも大切でひとりに決めることができない。
恋愛の意味がわかるまで誰とも付き合わない方がいいかもしれないと思い始めた。冬馬を選べば鮎子との友情が壊れてしまうかもしれない。慎吾がまた引きこもるかもしれない。慎吾を選べば冬馬に頼ってしまうことはできなくなる。くる日もくる日も考えて迷路にまぎれこんだようだった。
数日後。鮎子に誘われた。慎吾のことで喧嘩して以来、職場でもそっけない態度で気になっていた。
「ねえ、桃香、自由が丘にフレンチトースト専門店できたみたい。ネットで見たよ。行ってみない?」
桃香は驚いた。同時に自分が気持ちを決めないと鮎子との友情をなくしてしまうと思った。
「行く行く! 甘いの食べたい」
ふたりは久しぶりに向かい合って座った。ふわふわのトーストの上にシロップがかかり、甘い密の香りを漂わせた。卵とミルクはどうしてこんなに相性よく混ざり合い、おいしいものを生み出すんだろう。人を幸せにする香りも生む。
卵とミルクのような恋ができればいいのになと桃香は思った。自分は全然だめだけれど、迷いがふっ切れなくて周りを傷つけてしまうかもしれないけれど。今度の歌は卵とミルクの恋の歌にしょう、白いナフキンにささっと、アイデアをメモした。鮎子が覗き込んで「作詞はじまったあ。ロマンチストなアーティストだね」とつぶやく。
「ううん、最近、作詞や作曲に意欲なくなってるんだ。歌のレッスンやバイトは楽しいけど、本気になれない。こんなんじゃプロになんてなれない」
「本気になれないって?」
「プライベートで悩むことが多くて、自分のわがままさや弱さが悔しい…」
鮎子は一瞬黙り込み、すぐに話を続ける。
「慎吾のことだけど。この前、私、きれちゃって悪かったなと思ってる。会社でも無視したりしてごめん。桃香の気持ち考えると、あんなこと言っちゃいけなかった。…