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2月4日に発表された米国心理学会(APA)の世論調査の結果報告「Stress in America: Paying With Our Health」によると、米国人にとって、主なストレスの原因が金銭であることが判明した。
今回の調査は、昨年8月に成人3068人を対象に実施されたもので、成人の64%が金銭上の悩みを意味のあるストレス源だとしている。ちなみにそのほかのストレス原因は、仕事(60%)、家族への責任(47%)、健康問題(46%)で、金銭上のストレスが全てを上回っていた。
さらに、成人の約4人に3人が少なくともときどき金銭のストレスを感じ、約4人に1人は過去1カ月に金銭について非常に強いストレスを経験したとしている。米国人の平均ストレスレベルは低下傾向にあるものの、心理学者が健康であると考えるよりもそのレベルは高く、約5人に1人がストレスを十分コントロールできていないと回答した。
性別、年齢別に見ると、金銭のストレスが多かったのは女性、親、若年成人だった。つまり、収入を得る可能性の低さ(女性)や支出の負担の大きさ(親)、労働機会の低さ(若年成人)が、経済的なストレスにつながっている。50歳未満の親および成人の4人中3人は、金銭が多少または非常に大きいストレス源だと答えた。
社会の格差とこのストレスを相関的に見ると、低所得者と高所得者のストレスレベルの差も広がりつつある。アメリカでは、2007年は収入5万ドル以上の人とそれ未満の人でストレスのレベルは差がなかった。しかし、2014年には高所得者よりも低所得者のストレスが高まっているという。
また、「精神的支えがない人」の43%が過去1年でストレスが増大したと答えたが、「支えのある人」では26%だった。APAでは、友人や家族に精神的な支えを求めるよう推奨している。
日本社会のストレス分析をしっかりすべき
そもそも、ストレスにはどんな種類があるのか。厚生労働省の資料(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/info03k-03.pdf)では、
「ストレス要因(ストレッサー)」として、5つのカテゴリーを挙げている。
① 物理的要因 :温熱、寒冷、痛覚、圧力、光、騒音、振動、放射線等
② 化学的要因 :アルコール、たばこ、薬剤、有害化学物質、環境ホルモン、化学合成物等
③ 生物的要因 :細菌、ウイルス、カビ、ダニ等
④ 社会的要因 :人間関係、仕事上のトラブル、近親者の死亡、離婚、引越し等の家庭内の変化等
⑤ 心理的要因 :不安、焦燥、いらだち、怒り、緊張、ゆううつといった情動を起こすもの
金銭的、経済的な要因は、おそらく④社会的要因に含まれるのであろうが、言葉として入ってこない。…一方、やはり同じ資料の中の、勤労者のストレスアンケートでは、自分の仕事や職業生活に関する「強い不安、悩み、ストレスがある」とする者は 61.5%。年齢階級別でみると、30~39 歳で 66.2%、40~49歳で 65.2%であり、この年代は他の年代よりも有訴率が高い。仕事でのストレスがある労働者が挙げた具体的な内容は、「職場の人間関係の問題」が多く、次いで「仕事の量の問題」、「仕事の質の問題」の順となっている。ここにも収入、賃金の問題は上位に顔を出していない。
日本での金銭的ストレスはどのような状況なのか? OECD加盟国中の自殺率は、最近、韓国が日本を抜き最高となったものの、依然極めて高い自殺率を示し続けている。所得や資産の不平等あるいは格差をはかるための尺度であるジニ係数も、年々上昇傾向だ。
安倍晋三首相は2月18日の参院本会議で、格差社会の拡大について問われ、「全体の底上げをしっかりと行っていく」とのみ答え、この議論を避けた。格差論議をしっかり進めることはもちろんだが、同時に日本の社会的なストレス、特に経済的なストレスに関する十分な分析が急がれる。
(文=編集部)