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身近な「生と死」にやさしく気づかせてくれる物語

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身近な「生と死」にやさしく気づかせてくれる物語

 身近な「生と死」にやさしく気づかせてくれる物語

 

 メメント・モリとは、「死を想う」という言葉です。生きとし生けるものには、ひとしく死が訪れるのに、なぜか人は生きることに執着して、死に対して想いを傾けるのがすくなくなりがちではないでしょうか。

身近な「死」に想いをよせる

 たとえ死を想うことがあったとしても、身内の死や、自分の病気などをきっかけにした人の死についてであって、ヒト以外の死についてはさほど大きく意識することがない、というのが正直なところです。

 でも牛も鶏も魚も、人と同じように呼吸をして、同じように生と死をもつ生き物。しかも彼らの命がわたしたちの「生」の一部を担ってくれています。そんな生き物たちへのメメント・モリを、詩人の谷川俊太郎さんはお説教でもなく、残酷さを描くのでもなく、柔らかく明るい絵本にしています。

 絵本『しんでくれた』は、子供向けの絵本でありつつも、身近にある死についてやさしく想いをよせている作品です。

 だからぼくはいきる

 うしのぶん ぶたのぶん

 しんでくれたいきもののぶん

 ぜんぶ

 (『しんでくれた』P28~32より引用)

 この絵本にあるのは、死にたいする感謝の気持ちです。やさしく「ありがたいなあ」という気持ちでメメント・モリすること、そして生きることはしんでくれた生き物への祈りそのものなんだ、と教えてくれます。

自分に喝をいれるきっかけに

 「亡くなったひとのぶんも頑張って生きていきます!」というフレーズはよく耳にしますが、定型句としての追悼文として聴いてしまうと、心に響いてきません。ところがこの絵本はそんな「ありがちな表現」を超えて、暖かみのある空気をまとって、それでいてはぐらかさずに命への「ありがとう!」を生きる力に変えてくれるのです。

 メメント・モリすることは、しんみりと死を悼むことではなく、ぼんやりとすごしてしまいがちな自分の命にあらためて喝を入れること。『しんでくれた』は、そんな新鮮な気持ちがもらえる絵本だと思います。

 [しんでくれた]

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