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【北京時事】中国国営・中央テレビを離職した著名女性記者、柴静さん(39)が、微小粒子状物質PM2.5の実態を調査し自主制作したドキュメンタリー番組の余波が拡大している。「称賛」と「批判」。大気汚染という全国民が抱える難題でも世論が分裂するのは、「共通認識」を得て共に行動を起こすことが難しい中国社会の現実を露呈した形だ。
◇「改革後押し」か「政府が利用」か
「穹頂(天空)の下」と題した103分のドキュメンタリーは、5日の全国人民代表大会(全人代=国会)開幕を控えた2月28日、インターネットの動画サイトで公開。大きな反響を呼び、数億人が視聴したとされる。
環境規制があっても守られていない現実を批判し、利権のため市場を独占して質の悪いガソリンを供給し続ける大手石油会社の体質に切り込んだ。「称賛派」は、民間の視点で市民の環境意識を高めた勇気ある柴さんの行動に心を打たれ、「民間から改革を後押しできる」と歓迎した。
一方、「批判派」の一部は「陰謀論」を唱える。柴さんが通常では取材が難しい環境政策の政府高官にインタビューでき、番組が共産党機関紙・人民日報のサイトでも公開されたことから、「全人代を前に大気汚染対策をアピールしたい党・政府に利用されている」と主張する。
汚染対策の強化や国有企業の利権解体は全人代の焦点。李克強首相は5日の政府活動報告で「環境汚染は民生の患い、民心の痛みだ」と訴えた。これに対して「批判派」の中には、「大気汚染の根本的原因は共産党一党体制による弊害が背景にあるが、柴さんはここを強く批判していない」とした上で、政府との協調姿勢では問題解決は厳しいという声も出ている。
◇世論安定へ「民間」排除
1日には番組を視聴した陳吉寧・新環境保護相が記者団に柴さんの行動を絶賛したが、番組へのあまりに大きな反響に、メディア規制を統括する党中央宣伝部は3日、国内メディアに対し、全人代では柴さんの番組をこれ以上報道・評論しないよう指示。「秘密」扱いの指示内容がネット上で暴露された。
結局、全人代や中国メディアから番組に関する話題は消え、李首相ら政府高官の公式見解だけがクローズアップされた。政府が選んだのは「民間」の言論を排除して世論の安定を保つといういつもの管理方法だった。
言論統制が厳しい中国では、当局の意向を無視すれば、番組を世に出すこともできないのが現実。柴さんもPM2.5問題の深層を告発するため、ギリギリの線で番組を制作した。…