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4年前に起きた東日本大震災では、多くの海岸堤防や防波堤が大きな被害を受け、津波を防ぎきれなかった。その教訓から、強度が高く、想定を超す津波が来ても壊れにくい堤防や防波堤の建設、研究が進められている。
(浜中伸之)
福島県いわき市の夏井地区海岸に、全長約1キロの真新しい海岸堤防が延びる。高さは7・2メートル、幅は最大で18メートル。見た目はふつうの堤防だが、福島県いわき建設事務所の猪狩(いがり)洋・河川海岸係長は「実は、震災で生じたがれきを使って造ったのです」という。
震災時、この場所に堤防はなかったが、隣接した場所にあった堤防は、7・6メートルの津波で大破した。
国土交通省によると、震災では、青森県から茨城県までの29の港湾で、海岸堤防や防波堤などの防災施設が被災し、被害総額は約4000億円に上った。
国の中央防災会議は震災の半年後、こうした防災施設は「最大級の津波でも一気に倒壊せず粘り強く耐え、避難できる時間をできるだけ確保できるように強化すべきだ」と提言した。
夏井地区海岸の堤防新設に当たって、福島県は提言を踏まえ、粘り強さを発揮できる様々な工夫を取り入れた。
従来の堤防は、盛った土の表面をコンクリートで覆う工法が一般的だ。震災では、津波でコンクリートが割れて土が流出し、堤防が即座に崩壊する被害が多発した。
そこで、震災がれき約4万立方メートル(ドラム缶約20万本分)をセメントと混ぜ合わせ、ブルドーザーで踏み固めながら海岸に積み上げて造った。
がれきによる工法は、ダム建設で使われているが、ダムほどの強度は必要ないと思われがちだった海岸堤防では国内初の試みだ。工事を担当した大手ゼネコン鹿島の神戸(かんべ)隆幸・土木工務部課長は「土より固く、流れ出しにくい。がれきの有効利用と建設費の削減にもつながる」と利点を語る。
がれきで造った本体の表面は、本体の10倍という強度を持つコンクリート(厚さ50センチ)で覆い、海岸にいる人が避難する時に駆け上れるように、階段状に仕上げた。
新堤防は約11億円をかけて、2013年11月に完成した。堤防の前にコンクリートブロックを置いたり、背後には防潮林を植えたりと、二重三重の強化策を講じている。
南海トラフ巨大地震で大津波が押し寄せると想定されている浜松市でも、がれきを使った同様の工法で海岸堤防の建設が進められている。
◇海中でも津波止める
陸から離れた海中で津波を食い止める防波堤も、強度を上げる工夫が模索されている。京都大防災研究所や港湾空港技術研究所などは、津波が来ると、波の力で自動的に立ち上がる防波堤の研究開発を進めている。
湾の出入り口に当たる沖合に設置するため、普段は船が航行できるよう海底に沈める。防波堤の本体は、コンクリートより強く、加工もしやすい鉄板を使う。
海底に土台を造り、円弧の形をした鉄板を、丸い面が下になるように置く。津波が押し寄せると、その衝撃で鉄板が垂直に立ち上がる仕組みだ。土台と鉄板は、金属製のワイヤを編み込んだ合成ゴムの丈夫なベルトでつなぐ。コンピューターや模型での実験で、東日本大震災級の津波にも耐えられることを確認した。
研究チームの東(あずま)良慶(りょうけい)・京大防災研助教(水工学)は「湾の出入り口を完全に閉じることができれば、防波堤を越える津波が来ても、その威力は大きく減らせる」と話す。
和歌山県沖では国土交通省が、鋼管78本が海中から浮上するという大がかりな防波堤を建設していたが、最大級の南海トラフ巨大地震に備えるには費用が膨大になることがわかり、2月に建設を断念した。
鉄板を使う新たな手法は仕組みが簡単なためコストをかなり抑えられるといい、採用を検討している自治体もある。