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がんは不治の病ではない。研究の現場を訪ね歩くと、そう感じる。アプローチは1つではない。治療法はあらゆる角度から進化している。研究者たちのほとばしる熱意を感じてほしい──。
放射線療法の課題は「いかに正常組織を傷つけず、がん細胞に線量を集めるか」につきる。
局所固形がんに保険適用を持つ放射線療法では「IMRT(強度変調放射線療法)」が実績を持つ。多方向から放射線を当て、がん塊で最も多く重なるように照射する原理は3D照射や定位照射(リニアック)と同じ。しかし、IMRTは一方向からの照射範囲の中にさらに放射線の「強弱」をつけ、がん塊のデコボコにあわせた照射を可能にしている。
IMRTの「縦・横・斜め」三次元照射に「時間軸」を加えた四次元照射をリードするのは、京都大学の平岡真寛教授のグループと三菱重工が共同開発した「動体追尾放射線治療システム」だ。治療中の呼吸運動で動いてしまう肺がんや肝臓がんの動きを「追尾」して放射線を当てる方法で、がん塊に集中攻撃できる一方で、正常組織を傷つける確率はさらに低下する。
すでに肺がんと肝臓がんの治療が始まっており、京都大学附属病院や国内の一部病院で受けられる。IMRTの一種なので、放射線治療部分には保険が適用され、自己負担は数万円程度だ。治療装置の「Vero 4DRT」は日米欧の薬事承認を取得し、海外でも稼働中。次のターゲットは難治がんの代表、膵臓がんだ。
■中性子線を使い、進行がんに効果
さらに次世代の放射線療法としては「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」への注目が集まっている。現在、京都大学原子炉実験所・附属粒子線腫瘍学研究センターにおいて、世界で唯一の病院設置型加速器を使った第I相の臨床試験が行われている。(※2013年取材時)
BNCTが利用するのは中性子線自体の破壊力ではない。BNCTを受けるがん患者は「BPA」というホウ素化合物を点滴で注入する。BPAはタンパク質を構成するアミノ酸の一種とホウ素の化合物で、がん細胞が取り込みやすい性質がある。そのうえで正常細胞に影響しない程度の線量で照射する。
がん細胞に集まったホウ素化合物に中性子が衝突した瞬間、核分裂が起こりアルファ粒子とリチウム原子核が飛び出す。その飛距離はおよそ10μメートル。ちょうど「がん細胞1個分の大きさ」なのだ。周辺への影響はごく軽度で、ごく短い飛距離に全エネルギーが集中されるため、殺細胞力は重粒子線を凌駕する。…