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3月14日に長野-金沢間で延伸開業する北陸新幹線人気が過熱し、沿線自治体で思わぬ“副作用”が出始めている。富山県では、「宿泊先確保が難しい」として富山空港を利用する外国航空会社が減便に踏み切り、今春に善光寺(長野市)で7年に1度のご開帳が行われる長野県でも、宿泊予約が取りにくい状況という。全国で先行開業した新幹線の沿線自治体の中には開業2年目に観光客が減少するなど厳しい現実に直面したケースもあり、観光資源が豊富とはいえ、北陸地方もひとごとではない。
■「ホテルがとれない」…富山では中華航空が減便
開業初日の一番列車の切符がわずか25秒で売り切れるなど、高い人気をうかがわせる北陸新幹線。「今回の延伸開業は盛り上がり方が半端じゃない。とりわけ、北陸地方の期待感は際立っている」。これまで複数の新幹線の立ち上げに携わってきたJR東日本の幹部も、開業前の高揚感を肌で感じている。
ただ、北陸地方では新幹線人気の過熱によるマイナス面も出ている。風光明媚(めいび)な北アルプスを貫く立山黒部アルペンルートを抱える富山県はその一つ。
「北陸新幹線開業に伴う宿泊施設逼迫(ひっぱく)への懸念もあり、今回の決定に至ったと伺っている。宿泊施設の確保が困難である以上、やむを得ないものと受け止めている」
2月12日。石井隆一知事は、台湾の中華航空が3月末からの夏ダイヤで、台北-富山線の運航便数を週5往復から4往復に減便することを受け、県のホームページ上にこんな談話を発表した。大きな宿泊需要に対応しきれないもどかしさが行間からにじむ。
県では県外の宿泊施設も含めたリストを台湾の旅行業者に配布するなどして増便に向け巻き返しを図り、その結果、中華航空も5月から臨時便の運航を決めた。ただ、同県観光課の担当者は「大型宿泊施設がそれほど多くない県内では、団体ツアーの受け入れには限度がある」と話し、宿泊施設不足が課題である現状は変わらない。
■金沢の基準地価は全国トップの上昇率…善光寺ご開帳で混雑拍車
北陸新幹線への高い期待感は地価にも表れている。国土交通省が昨年9月に公表した基準地価では、新幹線の発着駅となるJR金沢駅(金沢市)西口前の商業地が前年比15・8%上昇し、商業地の上昇率として全国トップに躍り出た。
兼六園などの観光名所が集まるにぎやかな東口とは対照的に、開発が遅れ「駅裏」とも呼ばれた西口は今や北陸新幹線開業を当て込んだホテルや商業施設の進出が著しく、街並みは変わりつつある。
新幹線による北陸観光熱は、長野県の宿泊環境にも影響を及ぼしている。
同県では数え年で7年に1度、善光寺の「前立本尊」(重要文化財)を公開する「ご開帳」が4月5日から5月31日まで行われ、全国から大勢の人出が見込まれる。今年は北陸新幹線の開業後という絶好のタイミングもあり、「東京だけでなく、石川や富山など北陸からのお客さんも増える」と長野県旅館ホテル生活衛生同業組合(長野市)の担当者は期待を寄せる。
ただ、北陸から見れば、事情はやや異なるようだ。新幹線で北陸に来た客は、4月下旬からの立山黒部アルペンルートを経由して長野入りを希望する客も少なくないとされるが、「すでにご開帳の時期の長野側での宿泊予約が取りにくい状況になっている」(富山県の観光業者)というのだ。善光寺のご開帳と北陸新幹線人気が宿泊需要を押し上げたといえる。
■人気はいつまで続く?先行開業の鹿児島、青森などは1年後に「観光客」失速
過熱気味の北陸新幹線人気だが、そのブームはいつまで続くのか。
「金沢や富山など北陸地方は観光資源が豊富だが、宿泊施設の供給量はそれほど多くはない。しかし、むしろそうした環境こそが息の長い観光ブームにつながる」
JR東の幹部はこんな見通しを口にする。
地理的条件も追い風となりそうだ。日本政策投資銀行北陸支店(金沢市)が平成25年3月に発表した北陸新幹線開業に伴う経済波及効果をまとめたリポートによると、例えば金沢市は首都圏だけでなく、関西圏、中京圏とほぼ同等の時間距離で結ばれ、「九州にも東北にもない北陸エリアの大きな強みとなる」とし、観光地としての潜在力の大きさに着目する。
ただ、開業2年目の宿泊数はある程度の反動減を覚悟する必要があるとも指摘している。先行開業した新幹線をめぐっては、金沢と同じような終着駅となった長野、秋田、鹿児島ではいずれも開業当初こそ宿泊数は伸びたが、2年目にはそろって減少に転じたからだ。
来年3月に新青森-新函館北斗間で延伸開業し、東京とも直結する北海道新幹線の存在も気がかりだ。
日本政策投資銀行のリポートでも、北海道新幹線の開業により「東日本の人々の関心が東北・北海道方面へ向くことも予想される」と指摘。首都圏向けの誘客だけでなく、関西圏や中京圏への情報発信の維持の必要性も強調している。
北陸地方の住民にとって、基本計画決定から40年以上待ち続け、やっと開業にこぎつける北陸新幹線は地元活性化の“切り札”に違いない。それを生かすも殺すも、沿線自治体の主体的な取り組みにかかっている。