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「漫画みたいな人生でした」。人気ボカロP・椎名もた、20歳を迎える前に人生を振り返る

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「漫画みたいな人生でした」。人気ボカロP・椎名もた、20歳を迎える前に人生を振り返る

「漫画みたいな人生でした」。人気ボカロP・椎名もた、20歳を迎える前に人生を振り返る

 

中学2年のときにボーカロイドでの楽曲制作を始め、ニコニコ動画を中心に活躍し、2012年に16歳でCDデビューを飾った若き音楽家・椎名もた。それから3年が経ち、20歳を目前に発表される最新作『生きる』は、これまでの人生を振り返り、全13曲にそれぞれサブテーマが設定された濃密なコンセプトアルバムになっている。そこで今回は、アルバムに沿って20年の歩みを振り返り、椎名もたの魅力を改めて検証すると共に、人生の節目を迎えた現在の心境を本人の口からじっくりと語ってもらった。これは「ボーカロイド世代」の一面を切り取った貴重なテキストであり、一人の表現者の成長の記録である。

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■まんがみたいな、19年間の人生でした

「おさき真っ白、うしろ真っ黒 まんがみたいな、人生でした これからも、これからも」。こんなキャッチコピーが添えられた椎名もたの3作目『生きる』は、3月9日に20歳の誕生日を迎える椎名が、これまでの人生を振り返って制作した、コンセプチュアルな作品である。「誕生」をテーマに描いた1曲目からスタートし、「未来」「人生」について歌う曲で締めくくるこの1枚は、椎名自身の人生における心境の変化をそのまま音楽に落とし込んだドキュメンタリーアルバムとも言える。

椎名:20歳を迎えるにあたって、何か記念になる作品を作りたいという思いがまずありました。ちょっと前に「ひどすぎる耳コピを作った中学生」として話題になった黒魔(2007年にニコニコ動画に投稿された『中二の俺がスーパーマリオブラザーズを頑張って耳コピしてみた』でひどい耳コピを披露したが、8年の時を経て抜群の作曲力を持つミュージシャンに成長したということが話題になった)っているじゃないですか? 僕、今そいつとルームシェアしてるんですけど、彼が作った『想いで旅行記』ってCDがすごい好きだったんです。黒魔が行ったことのある場所をテーマに、ピアノだけで奏でるっていうコンセプトアルバムだったんですけど、それを聴いて僕もコンセプチュアルな作品を作ってみようと思ったのと、それと同時に、「今後音楽で食べていくことを考えると、ただ好きに作品を作るのはこれが最後かも」とも思ったんです。だから、これまでの人生を振り返った作品にしようって。

■地元での成人式、中学の頃から一番変わったのは自分だった

去る1月11日、椎名は地元である石川県小松市の成人式に出席。そのときに撮った写真が今回のアーティスト写真として使われている。

椎名:うちの地域は治安が悪くて、成人式っていう刹那の瞬間なのに、「エンドレス」って旗を掲げたリーゼントの人たちがいたのにはびっくりしました(笑)。あと、僕は地元のテレビや新聞に何度か取り上げられたことがあって、変に有名になってたので、友達から「今アーティストやってるんでしょ? 印税どうなの?」とかすごい訊かれて……。

―周りとは少し温度差がありました?

椎名:衝撃だったのは、ひさしぶりに会った地元の友達が車を持ってたこととか、昔は全然女っ気なかったやつが「あの子のLINE教えてよ」とか言ってきたりしたことですね。

―でも、もたくん自身も当時から相当変わったんじゃないですか?

椎名:めちゃくちゃ言われました。ってか、自分で言ってましたもん(笑)。「みんな変わったけど、僕が一番変わったよね」って言ったら、「マジそれな!」って(笑)。小学校や中学校のときは漫画が大好きだったので、ずっと1人で絵を描いてるか、もしくは同じ趣味の根暗な友達といじけ合ってるかだったんですよね。でも、ネットで活動するようになってから、人に対してだいぶオープンになったと思います。

そもそも椎名が音楽の道を歩み始めたのは、まだ4歳のとき。姉がエレクトーンを習っていた影響で教室に通い始め、それが現在に至る作曲の基盤となっている。しかし、ボーカロイドと出会うまでの音楽活動は、苦い思い出の方が多かったようだ。

椎名:通ってたエレクトーンの教室が体育会系で、先生に「そこが弾けるようになるまで、私に話しかけないで」とか言われて、泣きながら練習してたのを覚えてます。すごく嫌でした。

―それでも、音楽自体は嫌いにならなかったんですね。

椎名:好きだったんでしょうね。だからこそ、小5でマーチングバンドに入って頑張ってました。僕らの年代は謎の団結力があって、全国大会まで行きましたからね。

―中学校のときは?

椎名:中学でも吹奏楽に入ったんですけど、女子の先輩からいじめにあったんです。放課後に公園裏でカバンの中身をひっくり返されて、ものを投げられたりして、家に帰ってきてわんわん泣いているような毎日だったので、部活はやめました。その部活をやめたと同時に初音ミクを知って、「1人で完結できる音楽があるんだ」と思って没頭したんですよね。だから、今回「成長」っていうテーマをどう曲に落とし込もうか考えたときに、「あ、いじめだ」って思ったんです。なので、“ワガハイは”(2曲目)は「いじめってなくならないよね」って曲なんです。

■不幸も幸福も人に見せびらかしてはいけない

中学2年生のときにニコニコ動画への投稿を始めると、「ぽわぽわP」とあだ名が付けられ、再生回数50万回以上を誇る“ストロボラスト”をはじめ、椎名の曲はすぐに話題を呼んだ。ボカロPとして順調なスタートを切ったかのように見えたが、決してハッピーなだけではなかったことが“9から0へ”(3曲目。テーマは「衝動」)に表れている。

椎名:軽い気持ちで作った曲なのに、思ったより評価してもらえたことに不安がありました。当時「にゃっぽん」っていうボーカロイドのネットコミュニティーがあったんですけど、幼いと叩かれるのがわかってたので、本当は中学生なのに大学生だって嘘をついてたんです。でも、高校受験のときに家庭の事情で行きたかった高校に行けなくなって、このストレスをどこかで吐き出したくなったときに、ネットで「実は僕受験生なんです」って言ってしまったんですよね。そうしたら、めっちゃざわついちゃったんです。

椎名は徐々に体調を崩すようになり、志望校の代わりに進んだ高校から定時制の高校に編入。しかし、そこも満足に通うことができず、中退することになる。ストレスの原因となっていた家庭環境への不満などをネットで吐き出してしまい、批判的な言葉をユーザーから浴びた結果、2011年に音楽活動も一時休止。そんな椎名に手を差し伸べたのが、後に所属レーベルとなる「GINGA」だった。

椎名:今思えば、不幸も幸福も人に見せびらかしちゃダメなんだなって思うんです。でも、そのときは見せびらかしちゃって、「死んでやる」みたいなことも言っちゃって。ちょっと神経がいかれちゃってて、ネット上の自分に対する悪口とか、見なきゃいいことも見ずにはいられなくなってたんですよね。

―そこから回復への道筋を作ってくれたのが、「GINGA」からの誘いだったと。

椎名:そうですね。“プリーズテルミーミスターワンダー”(5曲目。テーマは「栄光」)の<栄光とともに崩れる>っていう歌詞は、石黒正数さんの『ネムルバカ』って漫画からきてるんですけど、パンクバンドをやってる主人公が、「天才はどんな壁もぴょんと飛び越えていくけど、我々は地道にスコップで掘っていくしかない」って言いつつ、壁に触れてみると「あれ? 意外と柔らかいんだ」って気づくシーンがあるんです。それって、言ってみれば「壁が崩れた」ってことで、僕も「GINGA」に誘われて、壁って意外と柔らかいんだって思えました。

こうして2012年3月、ファーストアルバム『夢のまにまに』を発表。「~P」名義で、初音ミクをはじめとしたボーカロイドのキャラクターがジャケットを飾るCDが多い中、作家性を重視するレーベルと椎名自身の意図のもと、「椎名もた」名義で、キャラの登場しないシックなジャケットでリリースされたこのアルバムは大きな反響を呼び、南波志帆への楽曲提供や、渋谷慶一郎のリミックスなど、活動の幅を広げて行く。そして、1年後にはEP『コケガネのうた』を発表したが、椎名は当時を「半信半疑」と回想する。

椎名:“ハンシンハンギミー”(7曲目。テーマは「旅立」)に<疑り深く歩き出したのさ>ってあるように、とにかく自分の現状を歌ってみたものの、わりと不健康な歌が生まれちゃってたから「いいのかな?」って気持ちだったんですよ。「実は自分には歌いたいことなんてないんじゃないか?」って気がして。

―でも、もたくんはデビュー当時から「マイノリティーであることを自覚して、ちゃんと表現がしたい」ということに意識的だったと思うのですが?

椎名:言ってしまえば、ちょっと開き直ったんですよね。だから、「旅立」がテーマっていうのは、「もう引き返せないぜ」ってことなんです。

■本当にこんな自分が歌っていいのだろうか?

17歳のときに上京して一人暮らしを開始し、2013年2月に『コケガネのうた』をリリース後、椎名は「憧れだった」というDECO*27、sasakure.UK、Buffalo Daughterなどが所属するエレクトロミュージック系レーベル「U/M/M/A」へ移籍を果たす。約半年後にセカンドアルバム『アルターワー・セツナポップ』を発表し、傍から見ればボカロPとして順調にステップアップしているように見えていたと言えよう。しかし、「自分に歌うことはあるのか?」というモヤモヤはこのときも解消されてはいなかった。そして、アルバムの発売から1か月以内でネット上に投稿されたのが、椎名が「本作の軸」と語る“普通に歳をとるコトすら”(8曲目。テーマは「孤独」)と、レーベルに許可を取らずに勝手にアップしたという“少女A”(9曲目。テーマは「変化」)だった。

椎名:“普通に歳をとるコトすら”に<有りもしない心を紡ぐんだ>っていう歌詞があるように、やっぱり「歌いたいことなんて大してない」っていうのが引っ掛かってて、むなしさを感じてたんですよね。

―それでも歌わずにはいられないっていうのが、まさに「表現者の孤独」ってことかなって思うのですが。

椎名:「まんがみたいな、人生でした」っていうコピーになぞらえて言えば、<「なんでもない毎日」を 「非日常」と表したボクらは>っていう歌詞は、要は「自分の人生は普通じゃない」ってことですよね。漫画に例えるなら、初期の浅野いにおさんとか、TAGROさんとか、西島大介さんあたりの、ナヨッとした感じの漫画かなって。でもそんな風に思うのって、僕にとっては慢心のようにも思えたから、<この慢心を 歌うボクを許してくれないか>って言ってるっていう。歌わざるを得ないってことはないんですけど、歌いたかったんでしょうね。

―そして、同時期に“少女A”もアップされています。

椎名:これもネガティブな歌詞だなあ(笑)。よく大人に「君は若いんだから、まだ失敗してもいい」って言われるんですけど、そんなことないと思うんですね。それで、「時に躓いたって大丈夫だよ」みたいな風に言われるのに対して<寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い>って連呼してる。

―反抗の表れだったと。

椎名:フラストレーションがたまって爆発してますね。<夢を見てたはずが 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い>とか、これホント歌ってよかったのかな……。

■やっと見つけたフラストレーションの拠り所

そんなフラストレーションを抱えた時期に、椎名にとって救いとなったのが「恋愛」だった。かつて引きこもり気味だった椎名は、上京後に様々な出会いを経験し、コミュニケーションの喜びを覚えていった。「今」をテーマにした“みんなの黙示録”(10曲目)はつまり、人と人との関係性をテーマにした曲だと言っていいだろう。

椎名:生きる執着が音楽と恋愛以外にないというのが、今顕著に表れてるんですよね。高校の病んでた時期に、「ぽわぽわさん、恋愛をしてください」って言われたことがあるんですけど、今になってその意味が分かりました。

―今はそれが救いになってて、精神のバランスが保たれていると。

椎名:そうです。言っちゃうと、“みんなの黙示録”は「いつまで恋愛にうつつを抜かしてるんだ?」って曲ですね(笑)。人と触れ合う喜びを覚えた上で、人と離れることについての現実感も歌ってるんですけど。

『生きる』には“みんなの黙示録”以外にも、恋愛をモチーフにした楽曲が数曲収められていて、今の椎名にとっていかに「恋愛」が重要かが伝わってくる。しかし、恋愛が成就する曲はほぼなく、常に曲の背景には別れが存在しているのが特徴だ。

椎名:“ドラッグ・スコア”(4曲目)の「葛藤」っていうテーマは、恋愛の葛藤のことで、宇多田ヒカルの“Be My Last”の<間違った恋をしたけど 間違いではなかった>って一文を、自分なりに拡大したような曲です。離れた後に幸せだったことを思い出すって曲で、<あなたとわたしで つながる世界を見た>の歌詞の後には「つもりだった」って続くんですよね。

―“夢でも逢えない人がいる”(6曲目。テーマは「決意」)も恋愛の曲ですよね?

椎名:この曲は「earth music & ecology JAPAN label」とのコラボ曲で、ブランドのターゲットが若い人だったので、ボーイミーツガールの感じというか。ただ、歌詞に関しては悲恋で、「悲恋が行き過ぎると夢で逢ったって悲しいだけ」っていう、現実はおろか、夢ですらあなたに逢えないっていう歌なんです。

アーティストとして、自分だからこそできる表現をしたいと真摯に思いながら、同時に「自分には歌いたいことなんてないんじゃないか?」という考えからも逃れられない。また、人と触れ合うことに喜びを感じると同時に、それと隣り合わせのサヨナラにも常におびえている。「おさき真っ白、うしろ真っ黒」というのは、「白紙の未来と過去の黒歴史」を表しているわけだが、白と黒の間、グレーのグラデーションの間で思い悩み、揺れ続けてきたこれまでの歩みを表してもいると言えよう。しかし、そんな揺らぎを何とか楽曲に落とし込んできたからこそ、椎名もたの楽曲には魅惑的なセンチメンタリズムが宿り、聴く人の胸に響くのではないかと思う。

■普通は案外つまらない、音楽家として第2のステージへ

「明日」をテーマにした“6畳半の隙間から”(11曲目)以降、椎名は再び前を向く。そして、西島大介の漫画をタイトルのモチーフに、「未来」を描いた“アイケアビコーズ”(12曲目)には、最後に<誰かが生きてる一秒ずつ 言葉にできたならば 僕らは生きてく気がするのさ 言葉をばらまくように>というラインが登場する。初期の代表曲“ストロボラスト”の一節だ。

―今のもたくんにとって、リスナーはどんな存在ですか?

椎名:なんだろう……クローズドな場所だったら、パキッとした答えが出ると思うんですけど、こういうお仕事をさせていただいているので、あんまりはっきりとは言えない……あえて言うなら……仲間? 共感してくれる仲間というか。なので、最後に“ストロボラスト”の一節を出したのは、ここまで聴いてくれた人たちへのご褒美というか、「ありがとう」っていう意味を込めました。

―『コケガネのうた』が出たときのインタビューで、もたくんは「<ありがちな未来>が自分にとっての憧れなんです」っていう話をしてくれました。あれから約2年経って、この曲ではどんな「未来」を描いていると言えますか?

椎名:「普通になりたいんだったら、普通のことをしてみろよ」って自分で思って、バイトをしてみたり、音楽から離れた普通な生活をしてみたんです。そうしたら、「普通って、結構つまんないな」って思ったんですよね。結局自分にとって歌を作ることが理にかなってるのかなって。普通は性に合わなかったというか、「やっぱり歌ってる方が楽しいから、これで食えたらいいな」って思いました。

―「未来への覚悟」と言うとちょっと大げさ?

椎名:覚悟っていうか、必然性って感じ。やっぱり、自分がそんな大それた人間だとは思ってなくて、「決意」って呼ぶほどの瞬間を実感することもないから、フワッとしてるんですよね(笑)。でも、今回の制作にあたって、普通の道に実際寄ろうとしてみたんだっていうことは、ちゃんと伝えておきたいと思います。それってすごく重要な気がする。

ラストを飾るのは、アルバム1枚を1曲に集約したような“さよーならみなさん”(13曲目。テーマは「人生」)。人生は「さようなら」の連続で、辛く悲しいものだけど、この「さよーなら」のニュアンスは、決して後ろ向きではない。

椎名:これは最高の曲ですね。これができたとき、自分で拍手しました(笑)。

―この「さよーなら」は、決してネガティブな意味じゃないと思ったのですが?

椎名:「さよーならー、みなさーん!」って感じ(笑)。

―「いってきまーす!」みたいな感じですよね?

椎名:そうですね。この曲は別れじゃなくて、むしろ旅立ちです。「また始まるんだ」って。

20歳という区切りの年を迎え、『生きる』というアルバムでこれまでを振り返った椎名は、ここからまた新たなステージへと旅立っていく。椎名自身の手によってジャケットに描かれた、画面から飛び出していく傷だらけの女の子の姿は、今の椎名そのものなのだと言っていいだろう。

―今後の展望はどんな風に考えていますか?

椎名:今までは「楽しいことをやりたい」と思ってやってたんですけど、今後は楽しくないことも出てくると思うんです。音楽で食っていくなら、そのための表現をちゃんと覚えなきゃいけないと思います。

―これまでの取材で、好きなアーティストとして宇多田ヒカルさんとサカナクションの名前がよく出てきましたが、今理想とするアーティストって他に誰かいますか?

椎名:今参考にしてるのは椎名林檎さんです。歌の符割り、歌詞、キャッチーさ、あとは身の振る舞い方とか、アーティストとしてのあり方もかっこいいなって。

―それはつまり、もたくん自身が、曲を作るボカロクリエイターとしてだけでなく、アーティストとしてこれまで以上に前に出て行く可能性もあるということですか?

椎名:うーん、どっちとも言えるかも。裏方に回って、ブランドを作るのもありだと思うし、前に出て行くのもありだと思うし。ただ、ぶっちゃけそこは僕自身判断がつかないので、スタッフと相談しながら決めて行こうと思います。もちろん、ボーカロイドは続けたいし、嫌だと思ったことは嫌だって言うつもりですけどね。

―では、最後に大きめの質問。今のもたくんにとって、「音楽を作ること」はどんな意味を持っていますか?

椎名:そうですね……例えば、「息を吸うこと」って言ったら、大げさなんですよ、たぶん。そこをあえて言うなら、「ちょっと美味しいジュースを飲むこと」かな(笑)。

現在の椎名が目標とする同じ苗字のアーティスト、椎名林檎のファーストアルバムは『無罪モラトリアム』。このアルバムについて当時林檎は「是は、十代のあたしが考えた、「人として生きること」に関する集大成である。生を受け、其れが衰えるということは、常に何かの過程に過ぎず、何時だって不完全なものに思えるのだ」と語っている。十代の椎名は多くの苦労と直面したが、林檎の言うように、人間は誰もが常に不完全であり、モラトリアムは無罪なのだ。

これから始まる椎名もたの第二幕がどんなものになるのかはまだわからない。これまで常に「自分はボーカロイドの出身なので、あくまでボーカロイドにこだわりたい」と言い続けてきた椎名だが、この日の話しぶりからはそこに若干の変化が出てきたようにも感じられた。しかし、どんな表現形態を選ぼうとも、椎名もたが椎名もたであることに変わりはないだろう。一ファンとして、今後の動きを楽しみに待ちたいと思う。

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