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幅広い年齢層に人気があるJRの格安乗車券「青春18きっぷ」のちらしがこの春、駅頭から一斉に姿を消した。ほかにない叙情的な写真や惹句(じゃっく)が旅心を誘い、ちらしを収集する愛用者もいたほどだが、JR各社は「配布に見合う効果がない」と作製を中止。一方で専門家は、新幹線ばかりを宣伝するJRの姿勢に対し「もっと多様な選択肢を提示すべきだ」と話す。
18きっぷはJR全線の普通列車に乗り放題の切符。春夏冬の一定期間中、任意の5日間を選べて1万1850円(1日当たり2370円)。横浜-大阪間は普通列車で8時間以上かかるが、費用は新幹線の2割弱と安い。年齢制限はなくシニア世代にも人気だ。
JR東日本は「販売実績に結び付かない」と、中止の理由を説明する。駅貼りのポスターは残るが、掲示駅は激減した。「北陸新幹線や上野東京ライン開業関連のポスターが多く、掲示機会が少ない」とする。
とはいえ、18きっぷの人気は衰えていない。全国の販売枚数は2011年度以降、63万枚、65万枚、67万枚とむしろ増えている。
ちらし自体にもファンがいる。味わい深い駅舎や沿線の写真があしらわれ、かつては鉄道写真の第一人者、故真島満秀さんの作品も使われた。惹句も凝っていた。「たまには道草ばっかりしてみる」「通過しない。立ち止まって記憶する。そんな旅です」「なんでだろう、涙がでた」…。
横浜市港南区に住む男性公務員(51)は「ポスターが旅情を誘い、それが18きっぷだけでなく鉄道旅行のきっかけになるはずなのに…」と残念がる。
公共交通の在り方を考える交通権学会の上岡直見会長(横浜市在住)は「鉄道が味気なくなる」と懸念。「目先の合理化より、若者も利用しやすい安い切符など、多様な選択肢を示すべきだ」と話している。