フランス料理に合う酒といえば、まずイメージするのはワインではないだろうか。ビール、ウィスキー、日本酒など、さまざまな酒があるが、中でも芋焼酎は、フランス料理から最も遠い存在といるかもしれない。芋焼酎で有名な鹿児島県の酒の肴といえば薩摩揚げであり、フランス料理が「マリアージュ」の対象として話題になることはなかった。
　
　　とはいえ、焼酎ブームが去り、発泡酒や第3のビール、ハイボール、ウィスキーなどに人気が移り変わるなか、焼酎メーカーも新たな魅力を備えた本格焼酎で巻き返しを模索している。
　
　　薩摩揚げ発祥の地とも言われている鹿児島県いちき串木野市にある酒造会社、薩摩金山蔵は、幻の麹と言われる麹菌を使い、金山の坑道で貯蔵した本格芋焼酎「金山蔵」を商品化。この焼酎の発表に合わせて、鹿児島県出身のフランス料理シェフがマッチするフランス料理について語っている。
　
　　ホテルメトロポリタン　エドモント統括名誉総料理長の中村勝宏氏は「芋焼酎はフランス料理に合わないというこれまでの概念は、『金山蔵』によって覆されました。フランスのアルザスで黒サクランボを使って造られる酒『キルシュ』を思わせる上質な味わいです。フランス料理ならばテリーヌ、マリネした魚やタコ、羊肉にもよいでしょう。ジビエやチーズにもよく合います」と語る。同席した東京・南青山のイタリアンレストラン　リストランテ濱崎のオーナーシェフ 濱崎龍一氏は「薩摩揚げはもちろん、イタリアンにもぴったり。ゆっくりと時間をかけて味わいたいお酒です」と魅力を話した。
　
　　なぜこの焼酎は、フレンチに合うのだろう？　そもそも他の焼酎とどこが違うのか？
　
　「金山蔵」は、黄金麹（おうごんこうじ）を使った本格芋焼酎だ。1911年に発見された黄金麹は泡盛黒麹菌の黒い胞子が白色に自然変異する過程で黄金色の菌株を分離したもの。およそ100年にわたり大学の研究室に保管されていたという。「一般的な麹と比べ、じゃじゃ馬のような扱いにくさがあり、繊細な管理が必要ですが、長期貯蔵することで独特の甘みやキレのよさが生まれます」（薩摩金山蔵社長　濵田雄一郎氏）。
　
　　貯蔵場所として選ばれたのは、薩摩藩の金庫とも呼ばれる串木野金山。現在は休鉱山となっている坑道を焼酎の貯蔵庫として利用し、3年以上の長期貯蔵を経て商品化された。「坑道内は気温が16度から19度くらいと一定で、湿度も年間を通じて90％以上。…