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丸紅に危険事態、住友商事は赤字寸前…総合商社に異変 資源下落ショックで巨額減損

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丸紅に危険事態、住友商事は赤字寸前…総合商社に異変 資源下落ショックで巨額減損

丸紅に危険事態、住友商事は赤字寸前…総合商社に異変 資源下落ショックで巨額減損

 

 2000年代に入って以降、好業績が続いてきた総合商社が、ここにきて大きな曲がり角に差しかかった。原油をはじめとする資源価格の急落が、海外で油田権益などに積極的に投資している各社の業績を痛打した。各社とも資源エネルギー事業の保有権益などで減損を計上。14年4~12月期(国際会計基準)の純利益は、5社合計で8679億円と前年同期比29%減となり、減損額は5社合計で4368億円に膨らんだ。巨額減損を計上する住友商事や丸紅に加えて、三井物産も15年3月期決算の下方修正を迫られた。

 15年3月期の期初予想を据え置いたのは、三菱商事と伊藤忠商事のみ。三菱商事の純利益は4000億円(前期4447億円)、伊藤忠は3000億円(同3102億円)。ともに第3四半期までの非資源分野の利益が過去最高となり、資源分野の落ち込みを補った。

 資源分野の比率が高い三井物産は15年3月期の利益予想を3200億円(同4221億円)に引き下げた。巨額減損を計上した住友商事は100億円(同2330億円)、丸紅は1100億円(同2109億円)と大幅な減益決算となる。

 資源分野の損益が悪化した主因は、原油など資源価格の下落である。5社の中で最大の減損を計上したのは住友商事。1928億円に達した減損損失のうち米国シェール関連の損失が1736億円。採掘コストに見合う収入が見込めず、同案件から撤退する。さらにオーストラリアの石炭開発関連が同242億円、米国のタイヤ事業で同219億円を計上した。その結果、14年4~12月期連結の最終損益は102億円の赤字(前年同期は1804億円の黒字)に転落した。4~12月期の赤字は02年3月期に四半期決算を導入して以降、初めて。通期での減損損失は2400億円に膨らむ。

●成長を牽引してきた資源事業に暗雲

 14年4~12月期は原油安の影響などにより三井物産は480億円、三菱商事は北米や欧州のガス・石油開発事業で350億円、伊藤忠商事も米石油ガス開発で130億円の減損をそれぞれ出した。総合商社が得意としてきた鉄鉱石や銅、石炭といった資源価格が低迷しているため、減損が発生した。三井物産は、減益要因のうち710億円が鉄鉱石、100億円は石炭の市況悪化による。三井物産は、鉱山と石炭の減損の合計が石油・ガス関連の減損額を上回る。丸紅はチリの銅事業で100億円、オーストラリア・カナダの石炭事業で320億円の減損を計上した。

 過去10年の間、総合商社は資源事業の拡大に支えられて成長してきた。三菱商事と三井物産は「資源商社」と皮肉られるほど資源依存度が高い。しかし、石炭や鉄鉱石などの市況は11年をピークに低調に推移しており、各社は高値で買った案件の減損処理に追い込まれた。

 5社とも14年4~12月期決算発表の席上で、通期で資源エネルギー関連の追加減損の可能性があるとの認識を示した。石油や天然ガス、鉄鉱石の価格はすべて値下がりしており、開発計画の見直しも当然あり得る。成長を牽引してきた資源事業が、大きな曲がり角に差しかかっている。

●IFRSショックも

 商社決算でインパクトが大きかったのは、国際会計基準(IFRS)がもたらした影響である。日本は長い間、自国基準を維持してきたが、07年8月、IFRSとの共通化に舵を切った。総合商社では11年に住友商事が先行し、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅は14年にIFRSへ切り替えた。

 1月26日に通期予想の下方修正をした丸紅は、IFRSショックに見舞われたといっていい。15年3月期の当期利益を従来予想の2200億円から1100億円に大幅に引き下げた。13年に買収した米穀物準メジャー、ガビロンののれん代を500億円減損処理したのだ。株式市場はガビロンの減損を想定していなかったため、「丸紅ショック」との声も聞かれた。

 日本会計基準とIFRSとの違いの1つが、のれん代の取り扱いだ。IFRSではのれん代の償却は不要な代わり、定期的に減損テストを行って回収可能額と帳簿価格を比較し、回収可能額が帳簿価格を下回った場合には一括して減損処理を行う必要がある。

 穀物に強かった丸紅はガビロンに2700億円を投じ、のれん代は1000億円に上った。丸紅の穀物事業とのシナジー効果が上がり年間150億円の利益が取り込めると見込んでいたが、結局100億円にとどまった。減損テストの結果、500億円の減損損失を一括計上せざるを得なくなった。國分文也社長は「(ガビロンの買収額は)高値づかみだった」と語り、株式市場のシビアな見方を追認する結果になった。IFRSでは買収企業の業績次第で、突然、減損損失が発生するというリスクがあることを丸紅が証明した。

 一方、三菱商事の決算では、IFRSの導入がプラスに働いた。過年度に減損処理したローソン株式の差し戻し益など合計680億円の戻り益を計上した。過去に減損処理しても資産価格が元に戻れば、戻り益が発生するというIFRS特有の会計ルールに基づくものだ。IFRSには減損について厳しいルールがある。一方で、減損した後に価値が上がれば再びその分を計上できる「戻り入れ」もあり、業績が大きく上下に揺れるといった批判がつきまとう。

 今回、総合商社の決算はIFRSのメリットとデメリットを顕在化させた。特に三菱商事は豪州石炭開発子会社の14年10~12月期が38億円の黒字(前年同期は95億円の赤字)に転換し、底力を見せた。鉄鉱石の価格の下落が止まれば総合商社株が反発するとの見方が、市場関係者の間で台頭。3月9日に三菱商事の株価は4年ぶりの水準(2449円)に戻ったが、08年の高値である3950円まではまだ大きな距離がある。

 今回の総合商社各社の決算は、IFRS導入のメリットとリスクを証明したといえよう。
(文=編集部)

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