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秋田県仙北市の乳頭温泉郷にある源泉付近で3人が死亡した事故は一夜明けた19日、県警や消防が約30人態勢で実況見分を行い、事故当時の状況や原因の究明に向けて動き始めた。
一方で、突然の訃報を受けた3人の地元では、家族や知人らが深い悲しみに包まれた。
仙北署の発表によると、死亡したのは、仙北市田沢湖生保内(おぼない)、市職員柴田政文さん(42)と同市田沢湖田沢、管工事会社社員坂本栄さん(78)、同、同羽根川次吉さん(67)。司法解剖の結果、死因は硫化水素中毒が原因とみられる急性循環不全。
市によると、源泉から湯を引いている施設から「湯の量が減った」と連絡を受け、3人は18日朝、別の男性職員と4人で同市田沢湖生保内の休暇村乳頭温泉郷から約700メートルの源泉付近に湯量などの調整に向かった。
源泉から約200メートルの引湯管(いんとうかん)の空気バルブ付近で分かれ、夕方、柴田さんらが戻ると、雪に開いた深さ約2メートルの穴の中で坂本さんと羽根川さんが倒れていた。柴田さんは、穴に入って2人の足をさするなどしていて倒れたという。
穴は雪面から約0・8メートルまではスコップで掘った跡があったが、地表に近い約1・2メートルは、バルブから出た熱気で自然に解けた空洞だった。空気バルブは、引湯管の流れを悪くする管内のガスを自動放出する仕組みで、バルブのコックは通常、開いているという。
この日の実況見分では、穴の中の硫化水素の濃度が高すぎたため、署員らは中に入らなかったという。
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仙北市のカラ吹源泉から温泉の供給を受ける田沢湖高原温泉郷では、温度の低下や湯量の減少で、市にたびたび改善を要望していた。
駒ヶ岳グランドホテルの見上覚副支配人は「冬場に温泉の温度が下がったり、量が少なくなったりするのは日常茶飯事だった」と話す。温泉を各施設に分配する分湯槽を週に2回、点検したり、温泉成分が固まった湯の花を取り除いたりするが、それでも改善しない場合は市企業局に源泉施設の調整を依頼していた。
先週も、同ホテルのタンクに供給される温泉の温度が通常より約5度低くなったため、企業局に点検を依頼していたという。
今回の事故について見上副支配人は「人が亡くなるほどの危険があるとは思いもしなかったので、驚いている。掃除や点検での安全対策も考えなければ」と話した。
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10年前、4人の尊い命を奪った事故の教訓は生かされなかったのか――。湯沢市の泥湯温泉では2005年12月、湯で解けてできた雪穴に落ちた都内の一家が、たまっていた高濃度の硫化水素ガスを吸って死亡する事故が起きている。
同市では事故後、立ち入り禁止区域看板を多数設置したり、観光客らに注意喚起のチラシを配布したりしたほか、県内の自治体、旅館関係者を対象に事故対策の事例を発表するなど啓発活動に力を入れた。当時防災担当だった市総務課の男性職員は「他の自治体に教訓として生かしてほしいと考えていたが、似た事故がまた起きたことは本当に残念」と肩を落とした。
また、県は当時、硫化水素泉を使用する温泉旅館など約80か所に対し、事故防止対策を講じるように文書を送付していた。
仙北市の倉橋典夫副市長は19日、取材に「泥湯温泉の事故を受けての対策は、特に取っていなかった。源泉付近の危険性は認識していたが、源泉から離れたところでの認識は薄く、このような危険は正直想定していなかった」と語った。