[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
SEBASTIAN Xの活動休止を知ったときは、正直かなり驚いた。年末から好きなバンドの活動休止発表が続いていたので、「またか!」という思いもあったし、昨年メジャーデビューを果たし、2枚目のミニアルバム『こころ』のリリースやその後のツアーの予定も発表されていただけに、「このタイミングで?」という驚きも大きかった。これまでの歩みを振り返ってみても、メンバーの休養期間があったり、事務所からの独立があったりと、決して順風満帆ではない中、それでも歩みを止めなかったバンドなので、「活動休止」という言葉がすぐに結びつかなかったというのもある。
【もっと写真を見る】
そもそもSEBASTIAN Xというバンドは、これまでずっと「人間賛歌」を奏で続けてきたバンドで、その根本には「差異を許容する」という感覚があったように思う。「楽しい / 悲しい」「明るい / 暗い」「正しい / 悪い」、その捉え方は人それぞれ違って当然で、むしろその相反する要素を一人ひとりが併せ持ち、その上で共存しているからこそ、世界は素晴らしいのだと。しかし、それは常にギリギリのバランスで成り立っていて、ふとした瞬間にガラガラと音を立てて崩れてしまうものでもある。音楽的な共通点を軸にするでもなく、青春を共有するでもなく、それでも「この四人であることが何よりも重要」だったSEBASTIAN Xは、お互いの差異を許容しながら、奇跡的なバランスで成り立ってきたバンドだったのだ。
この日は活動休止を発表してから初めての取材で、ボーカル・永原真夏は「自分の中で答えを決めて、それをただ話してもしょうがないので、あえて何も考えずに来た」と話していた。バンドが出した声明文にもあったように、活動休止の理由というのは、とてもひとつにまとめられるものではなく、その中にすらも常に相反する想いが存在する。そこで重要なのは、答えを導き出すことよりも、心を開いて対話をすること、それ自体なのだと思う。真摯に話をしてくれた永原に感謝をするとともに、これからの四人のさらなる活躍を願いたい。
■三人を呼び出して、「活動を止めたいと思ってる」っていう話をして。そうしたら、何となくもうそういう空気ができてて、それほど時間がかからず話が済んだんです。
―かなり急な活動休止の発表だったので、正直すごくびっくりしました。
永原:そうですよね……『こころ』のリリース日のアナウンスもして、ツアーのアナウンスもして……なんだろう? どこから話していいのか(笑)。
―ゆっくり行きましょう(笑)。そもそも今回の活動休止の話は、以前から話し合いが行われていたのでしょうか?
永原:もちろん完全に突発的ってことはなくて、メンバーそれぞれ感じ取っていたことではあると思うんですけど……ただ、今より上手く行ってないことも山ほどあったんですけど、これまでは上手く行ってないときも、それが何かの起爆剤になっていて。いざステージに立ったり、曲作りに向かうと、それがものすごい大きなポジティブに変換されて、アウトプットされてたんだと思います。
―確かに、これまでもベースの飯田くんが休養した時期があったり、事務所から独立したり、山あり谷ありあったバンドでしたもんね。
永原:だから、変な話ですけど、「休止しよう」って決めたときも、「でも、リリースはしたいよね」って言うし、ツアーも「できるだけ回りたい」って言って、本数増やしたぐらいで(笑)。今までずっと「相反するものがある」っていうのをテーマに活動してて、それってつまりは現場にも相反する状況があるってことで、それでもバンドが続いてきたっていうのは、やっぱり奇跡的なバランスだったと思うんです。
―そうやってギリギリのバランスで続いてきたけど、今回に関しては「休止」という決断に至った。切り出したのは真夏ちゃん?
永原:そうです、私です。三人を呼び出して、「活動を止めたいと思ってる」っていう話をして。そうしたら、何となくもうそういう空気ができてて、それほど時間がかからず話が済んだんです。それで、声明文を出すにあたって、また後日話し合いをしたんですけど、そもそも休止に関して四人で話し合ったときも言葉を連ねたりとかはしなかったので、それについて四人全員の気持ちを文章にすることは難しくて……。
―でも、真夏ちゃんが「止めたい」と思ったことは事実なわけだよね? 理由はなんだったんだろう?
永原:何て言えばいいんだろう……うーん……やっぱり、もっと真摯に向き合いたいなって思ったんですよね。
―音楽に対して?
永原:音楽に対してもそうだし、イメージに対してもそうだし。自分が作り上げてきたものが仮想だとは全然思ってないですけど……ただ、自分の作家性を考えると、やっぱり表と裏、明るいと暗い、光と影みたいな相反するものの存在がすごく強くて、でも私のパブリックイメージって圧倒的に陽だけじゃないですか? なので、その両方を抱えてる自分っていうのに、もっともっと真摯に向き合いたいと思って……それが最初なのかな。
■このすごく不安定なバランスで成り立ってるバンドには、もう体力が残ってなかったんです。
―意図的に作り上げたわけじゃないけど、長く活動する中で、結果的にパブリックイメージとしての永原真夏像ができあがってしまい、そこに違和感を感じるようになったということ?
永原:うーん……でも、それはあんまり直接的な原因じゃないのかも。そんなことはあんまり気にしないタイプですからね。「差が出てきたなあ……まあ、それを正直に伝えればなんとかなるだろう」って思う性格だから(笑)。
―むしろ最近は、パブリックイメージとしての「陽」な部分も受け入れて、より素の永原真夏っていうのがSEBASTIAN Xに投影されるようになってきてたと思う。
永原:うん、そうだと思います。だから、それは「より真摯に向き合いたい」って思ったことのきっかけのひとつっていうぐらいで……うーん……やっぱり、自分にしかできないことをやるべきだと思うんですよね。いろんな人と関わりながら、自分のスタイルを軸に持って、音楽人生をひたすら歩む。シンプルにそれだけなんです、私は常に。だからこそ、そのスタイルに少しでも疑いが出たら、そのときは自分と向き合わなくちゃいけない。これからもっともっと真摯に向き合って、いろんなものを作って行きたい。そう思ったときに、SEBASTIAN Xの現状を顧みると、このすごく不安定なバランスで成り立ってるバンドには、もうその体力が残ってなかったんです。
―今までは、例えば、真夏ちゃんが強く我を出したときでも、何とかバランスを保ってきたけど、もうこれ以上バランスを崩すことはできない状態まで来てたと。
永原:自分がいいと思うものを真摯に追求するのか、それとも、四人でできる偶発的なものを楽しむのか、その二択はずっとあったんですよね。これまでその中間をずっとやってきたわけですけど、でももっともっと真摯に向き合いたいと思って……まず、届けるべき人に100%届けないとダメだと思ったんです。まず広くじゃなくて、伝わるべき人に伝わることが何より大切で、そこを怠ったら、本来伝わる人にさえも伝わらなくなってしまう。広がらないことよりも、伝わるはずだった人に伝わらないのが一番悲しいから、まず伝わる人にちゃんと伝えたい。メジャーデビューをするにあたって、そこはすごく考えて、だからこそ、もっともっと真摯に向き合わないとダメだと思ったんです。
■悩んで悩んで、「書けないんですー!」ってことを一生懸命書いたのが、あの声明文なんです。
―「真摯に向き合う」っていうのは、「自分の表現を追求したい」っていうのとはちょっと違うわけだよね?
永原:「私の世界観を追求したい」っていうシンプルな話ではないです。それだったら、解散するし。SEBASTIAN Xって、ものすごい優柔不断なんですよ(笑)。でも優柔不断じゃないと、陰と陽は出ないんです。常に「どっちもわかるよね」っていう状態。「今人生最悪だけど、でも友達といると楽しいよね」みたいな、ホントに白黒つけないグレーなバンドで、それをそのまま伝えようと思い続けるピュアさがあるんです。そういうものだと思ってるから、「解散か? 続けるか?」じゃなくて、「休止しよう」っていう(笑)。
―でも、そのグレイな状態で続けるっていうのは、ものすごくしんどいことでもあるってことだよね?
永原:すごく難しいし、よく10年も続いたと思う。だから、活動休止をするのであれば、どういう形の活動休止なのかっていうのも話し合ったんですけど、四人が能動的に決定できる範疇って、とにかく「活動を止めたい」っていうことまでだったんです。活動休止の理由とかも、いろんな建前は作れるんですけど、それを実際に作れるほど器用じゃないというか。声明文とか、今思い返すと「意味わかんねえよ」って思うし。
「SEBASTIAN Xを応援してくださる皆様へ
我々SEBASTIAN Xは、「こころ」リリースツアーの赤坂ブリッツワンマン公演をもちまして、活動を休止いたします。
突然このような形での発表になってしまい申し訳ありません。
活動休止という決断はメンバー全員で話し合った結果です。
現時点で、活動再開の予定はありません。「解散」という言葉も話し合いの中で出ましたが、現状でメンバーの意見が一致したのは、活動を止めるというところまででした。
休止にいたるまでのそれぞれの理由や意思はひとつにまとめられるものではありませんでしたが、バンドの活動やメンバーそれぞれの意思に対して、自分達で簡潔な説明ができない、ということ自体がこのような結果になってしまった理由のひとつではあると思います。
応援してくださっている皆様に対して十分な説明とは言い難いかもしれませんが、これが四人で言える精一杯の正直な気持ちです。
既にリリースが決定していた「こころ」についても再度メンバーで話し合いましたが、納得のいく作品ができたのでそれをリリースして皆様に聴いていただきたいという気持ちや、リリースツアーまでのライブをやり遂げたいという気持ちは変わりませんでした。
応援してくださっている皆様をガッカリさせてしまうような発表をしておきながら、リリースからライブまでお付き合いくださいというのはとてもおこがましいことだとは思いますが、残りの活動はメンバー全員、全力で良いものにしようと思っておりますので、ぜひ、聴いたり、観たり、していただけたらうれしいです。
これまで約7年間にわたり絶えず活動を続けてこられたのは、応援してくださるお客様、スタッフ、関係者の皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
メンバー一同、活動休止までSEBASTIAN Xの音楽と誠心誠意向き合って行きたいと思っております。
よろしくお願いいたします。
SEBASTIAN X
永原真夏
飯田裕
沖山良太
工藤歩里
(SEBASTIAN Xオフィシャルサイトより全文転載)」
―「説明できないこと自体が理由のひとつ」っていうのは、「どういうこと?」って思った人も多かっただろうからね。
永原:メンバー各々に積み重なった理由はいっぱいあるんですけど、それがギュッと結びついて、「休止」にたどり着いてる。その結びつく過程を説明しようとしても、何も言えないじゃないですか? それに対して、「でも、そんなこと言ってたら、説明になんないじゃん」って言われても、「説明になんないけど、だってホントにそうじゃん」っていう。だから、声明文を書くにあたっても、「そんなこと言ってたら、声明文書けないじゃん」っていうのに対して、悩んで悩んで、「書けないんですー!」ってことを一生懸命書いたのが、あの声明文なんです。
■バンドのことでウジウジウジウジ悩んでるなんて、「転がってねえ」って思ったんですよ。もっともっと転がらないとって。そこを恐れてはいけないなって。
―じゃあ、今回の活動休止っていうのは、「いつかは再開するから、そこに向けての休止」ではなくて、現時点で決まってるのは「とにかく、今は止まろう」ってことだけ?
永原:そうですね。そこに関しても、みんな冷静に見てるというか、今回出した決断っていうのが、覆る可能性があるっていうことも知ってるんです。ずっとそれをやってきたバンドだから。「もうやりたくない!」って言って、翌朝には明るく「おっはよー!」って言ってるような、ホントにそういうバンドなんです(笑)。とにかく今わかってるのは「止めたい」ってことだけで、でもそれも変わっていくものだから、特に再開の目途もたてず、あとは流れに任せてみようと。
―今の話を聞いてて思ったんだけど、前にCINRAでフラワーカンパニーズの(鈴木)圭介さんと対談をしてもらったときに、真夏ちゃんが「バンドっていうのは続けるものだ」って、圭介さんから教わったって話をしてくれたでしょ?
永原:しましたね!
―「どれだけ悪い状況になっても、ゴロゴロ転がっていれば何とかなる、その先でいろんなことが起こるはずだ」ってことを、圭介さんから教わったって言ってたから、「SEBASTIAN Xが活動休止する」って聞いて、「言ってたことと違うじゃん!」って思ったわけ。でも今言ってたくれたように、活動休止はするんだけど、それでも変わっていくものだっていうのは……。
永原:それ! それだよ、金子さん! 転がったんですよ! あのね、バンドのことでウジウジウジウジ悩んでるなんて、「転がってねえ」って思ったんですよ。もちろん、四人のままで転がるのが一番いいし、ぶっちゃけ、その方が楽は楽なんですよ。でも、もっともっと転がらないとって思ったの。そこを恐れてはいけないなって。何かモヤモヤしたものを抱えたまま続けるよりは……その方が、生きてる感じがするなって。
―つまり、「活動休止」っていう転がり方をしたと。
永原:うん。やっぱり全員言ってるのは、「止まってみないとわからない」ってことで、でもこれまではハンドルを切る勇気がなかったっていうか。こっちには誰よりも切れる。切りまくってきたんだけど、でも反対側には切ったことがなかった。それはすごく勇気の要ることで、未だに自分の人生と活動休止っていうのが結びついてない感じなんですけど。
―変な言い方だけど、休止なんだけど止まるわけじゃなくて、動いてるんだろうね。
永原:そう! 重たい石のハンドルを動かそうとして「うーん!」って言ってる感じ(笑)。四人の中で、止まるつもりで止まる人は1人もいなくて、ハンドルを切るつもりで止まるんだと思います。その精神論こそがSEBASTIAN Xだと思うし、そこで意見が揃う四人っていうのが、改めてバンドだなって思いますね。ああだこうだ言うんじゃなくて、「ハンドル切りたいね」っていう。で、その理由はいっぱいある。だって、普通こんな話し合いが短時間で終わるわけないじゃないですか? 「なんでだろう?」ってずっと思ってたんですけど、ただハンドルを切りたかったんですね。
■今回は人間関係の歌が歌いたいと思って。今だったら、いわゆるラブソングじゃなくて、もっと違う歌が歌えるんじゃないかなって。
―『こころ』に関しては、話し合いをする前に録っていたわけで、活動休止をするっていう前提なく作ってたわけですよね?
永原:そうなんですけど……でもね、メンバーみんな予感はしていたと思う。そこは「バンドだから」としか言いようがない!
―僕は「活動休止をする」っていうのを知った上で、『こころ』を聴いたから、どうしてもそこに引っ張られて、「活動休止前のアルバムっぽい」って思っちゃったんだけど、バンドの中にもその感じはあったんだ?
永原:言葉には絶対しないですけど……でも、何かあったと思います。
―これまでとは違う空気があった?
永原:レコーディング中は、常に空気悪いんですよ。みんなピリピリするし、細かいことが気になるし。そこは当然だと思うんですけど……今回はなんかちょっと、毛色が違ったというか。今までのレコーディングはアレンジの方に頭が向いてたんですけど、今回はライブみたいに息を合わせることにとにかく集中したんです。リードの“こころ”はアナログで録ってるんですけど、クリックも使わず、バンドの息だけで作った感じ。特に何も言わなかったけど、そこが大事だったんです。
―“こころ”は歌詞に関しても、すごく他者を希求する内容になってて、最初に言ってた「まずは届けるべき人にちゃんと届ける」っていう想いが反映されてるのかなって思ったし、<けどちがう ここじゃない>っていう歌詞は、魂の居場所を探してるような印象で、それってバンドの状況にもあてはめられちゃう気もして。
永原:つながっちゃいますよね……でも、これを書いたときはそういうことは考えてなかったんです。普通に男女のストーリーで、前作の“イェーイ”が決意表明のような歌だったので、次は人間関係の歌が歌いたいと思って。それは個人と個人、友達でも、男と女でも、一対一の歌を歌いたいと思ったときに、今だったら、いわゆるラブソングじゃなくて、もっと違う歌が歌えるんじゃないかなって。
■常に仲良かったし、常に仲悪かったけど、かけがえのない存在であることは変わらない。だからこそ、やっぱり心を開いて決断したかったんです。
―「違う」っていうのはどういうこと?
永原:例えば一緒に美味しいお店にご飯を食べに行ったとしても、そのご飯が美味しかろうがまずかろうが、相手の気持ちが理解できてないと、どうしようもないって思ったんですよ。人間として通じ合っていなければ……じゃないな、「通じ合いてー!」と思ったんです。自分のエゴですよね、それは。「相手と自分の関係性を築く」とかじゃなくて、「どうして私を信頼して話してくれないの?」っていう、そういう気持ちの方が強くて。
―それって、バンドに向けられた気持でもあったのかな?
永原:うーん……今思うと、そういう部分もあるかもしれないですね。休止を決断したっていうのは、心を開いた状態だったわけじゃないですか? 心を閉じたまま活動を続けて、何となく新しい形ができてっていうのは、嫌だったんだと思います。なので、“こころ”に関しては、ホントに思ったことが書けたなって思う。大人にならないと書けなかったと思いますね。私ラブソングと言えば、“世界の果てまで連れてって!”みたいな、「どこー?」って感じだったから(笑)。
―今は<ちゃんと私をわかって>って言ってるんだもんね。
永原:そうですよ……<誰かが必要だ>なんて、絶対言えなかったですもん。バンドは休止するけど、もちろん三人のことを必要ないなんて全く思ってなくて、自分にとってめちゃくちゃ必要な人たちだと思う。でも、それこそ10年一緒にいるわけで、別居を決めた夫婦みたいな話になってきちゃうんですよね。「毎日一緒にいるだけが正解じゃないじゃん?」みたいな(笑)。常に仲良かったし、常に仲悪かったけど、かけがえのない存在であることは変わらない。だからこそ、やっぱり心を開いて決断したかったんです。何も決断しないよりは、できるんだったらした方がいいし、全然違う方向にハンドルを切れるんだったら、切ってみた方がいいと思う。なので、通過点……とか言うとアスリートみたいだけど(笑)、でもホントに通過点なんだと思います。これで私の人生が終わるわけではないですからね。
■集大成なんて、このバンド一生ないと思う(笑)。
―今はもうツアーに向けた準備に入ってるわけですよね?
永原:そうですね。とにかく、余生みたいな感じにはしたくないです。だって、現在進行形で、止まってないから。「止まる前提」みたいなのは絶対に嫌で、「あれ? 止まるの?」って感じでやりきりたいです。
―集大成とかではなくってことだよね。
永原:全然集大成じゃない! 集大成なんて、このバンド一生ないと思う(笑)。そういうバンドなので、止まるときはいつ止まってもわけわからないタイミングなんだと思います。『こころ』だって、ある意味新境地だし。でも、いろんな方向にハンドルを切らないと、いつか集大成をやっちゃうから、それは嫌なんですよ。「集大成だね」って言われるよりは、「どっちに行きたいの?」って言われる方がまだマシ。集大成は一生やりたくないかも。
―ちなみに、これは気の早い質問だとは思うけど、SEBASTIAN Xの活動がひとまず終了して、その後に永原真夏個人としてやることっていうのは、現段階ではどの程度見えてるんですか?
永原:うん、ビジョンは明確です。もちろん、それをやりたくて休止するわけじゃないけど、ある意味では、せっかくのチャンスなので、やったことがないことをやってみようと思ってます。
―止まるわけじゃないんだもんね。
永原:そう! 「死んだと思うな」って感じ(笑)。そこはホント、フラカン先輩のおかげかもしれないですね。ただ、私はホントSEBASTIAN Xしかしたことがないので、別のことをやるっていうのは初体験で、ものすごく怖いことだし、全然ポジティブばっかりじゃないんですけど……でも、新しくなれないよりはマシかなって。やっぱり、初体験を繰り返したいなって思うんですよね。で、この四人でやる一番の初体験は、休止だったってことかもしれない。それによってまた新しい何かが生まれるかもしれないし……生まれないかもしれない(笑)。そこはでかい気がしますね。何か選ばなくちゃいけないときは、挑戦する方を選んでしまう。そういう四人なんだと思うんですよね。