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家電や自動車などを中心に海外での生産の一部を国内に回帰させる動きが広がっているそうです。円安傾向の長期化で、海外工場でつくっても国内工場でつくってもコストがあまり変わらなくなった。となれば、目の届く国内で生産した方が品質管理がしやすいし、国内の雇用も増やせる、といった理由からですが、実はこの国内回帰、一部の野菜でも起きているのです。
レタス、ホウレンソウ、チンゲンサイ、カボチャなどの野菜について、これまで多くの外食チェーンは主に中国からの輸入品を使っていました。ところが円安で輸入野菜の価格が上昇。それなら国産野菜を使おう、との機運が高まっています。
加藤百合子(かとう・ゆりこ)1974年千葉県生まれ。東大農学部で農業システムの研究に携わり、英国クランフィールド大学で修士号取得。その後、米航空宇宙局(NASA)のプロジェクトに参画。2000年に帰国しキヤノン入社。2001年、結婚を機に退社し静岡に移住。産業用機械の研究開発に7年ほど従事したものの農業の社会性の高さに気付き、2009年エムスクエア・ラボ(M2ラボ)を設立。2012年青果流通を変える「ベジプロバイダー事業」で日本政策投資銀行第1回女性新ビジネスプランコンペティション大賞受賞。
加えて昨年、大手ハンバーガーチェーンでチキンナゲットの原料仕入れ先の中国企業が使用期限切れの鶏肉を扱っていた事件が起きました。消費者の食の安全への意識の高まりを受けて、「メニューの料理はすべて国産の食材を使用しております」と宣言したい外食チェーンが急増しているのです。
野菜需要の国内回帰は鮮明なのですが、ここから先は家電や自動車とは話が違ってきます。生産はむしろ縮小傾向なのです。
先日、宮崎県の大規模農園に視察に行きました。作付面積300ヘクタール。それを年2回転させる、効率化では先端を行く農園なのですが「これ以上は生産量を増やせない」とのことでした。理由は人手不足で、ロボット等機械による自動化を進めて現状打開を目指すそうです。
商談ベースではもっと深刻な話が聞こえてきます。今はちょうど夏の野菜の商談を進める時期で、先日、長野県の生産者と連絡を取ったのですが、「今夏は一部の野菜は作らないことに決めました」との返答。理由はやはり人手不足でした。
以前にもブログで書きましたが、日本の農業は構造的な人手不足問題を抱えており、留学生などの外国人に研修や技能実習という名目で一部作業を担ってもらわないと現場が回りません。しかし、円安で外国人労働者の実質的な賃金が目減りしたため、「働くなら日本ではなく別の国へ」となり、人材が集まりにくくなっています。建設業やサービス業などとの労働力としての外国人の奪い合いも激しさを増しています。
国産野菜を手に入れたい外食チェーンが価格面で好条件を出しても、農家側は人手不足で応じられない。強気一辺倒、農家泣かせで有名だった大手スーパーですら「最近は買いたたきをやめている」との話が、農業関係者の中では話題になっています。
どうしても国産野菜を手に入れたい外食チェーンはどうしたらいいのでしょうか。生産を縮小する予定の農家さんに「どんな基準で作らない野菜を決めるのですか」と尋ねてみたところ、スポットで出すような野菜を真っ先にやめて、次に短期契約の野菜をやめて、長期契約は最後まで死守するとのことでした。決して、利益率の低い野菜から順番にやめていくのではなく、取引相手と長く安定した信頼関係を築けるかどうかを基に判断しているのです。