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自民党内紛激化、怒号飛び交う県連、統一地方選に暗雲?暴走する二階総務会長に不満続出

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自民党内紛激化、怒号飛び交う県連、統一地方選に暗雲?暴走する二階総務会長に不満続出

自民党内紛激化、怒号飛び交う県連、統一地方選に暗雲?暴走する二階総務会長に不満続出

 

「お前なんか辞めちまえ」「お前なんか人間じゃない」――2月21日、福岡市内で行われた自民党福岡県支部連合会大会でのひとコマだ。剥き出しの感情をぶつけ合った怒号の応酬は、警察が駆けつける乱闘となり、大手マスコミがこぞって報道したほか、インターネット掲示板や動画投稿サイトなどでも拡散される炎上騒ぎとなった。

 騒動の原因は、福岡県議会議員選挙の立候補予定者についての地元支部と県連執行部の対立にある。地元にとって意中の人物を県政や国政に送り込むことは、自らの選挙から予算獲得に至るまで、ありとあらゆる活動を左右する生命線だ。一方で執行部は息がかかった人物を地方議員や首長に据えることで影響力の拡大を図ろうとする。過去の遺恨や、些細な感情の行き違いからでも、対処を誤ると今回のような騒動へと発展するのだ。

 このようなせめぎ合いは決して珍しいものではなく、“火薬庫”は全国に散らばっている。元民主党所属の衆議院議員で、衆議院兵庫12区選出ながら、自民党兵庫県連の激しい反発を受けて和歌山県連所属という異例のかたちで自民党入りを果たした山口壮氏と兵庫県連でも事情は同じで、目前に迫った統一地方選を前に、昨年末の総選挙に引き続き、波乱の予感を感じさせる。

●衆院選の遺恨が県議選にも波及

 民主党を離党後、自民党総務会長・二階俊博氏を後ろ盾に自民党入りした山口氏。地盤とする兵庫12区は兵庫県最西部にあり、県議選では赤穂市・赤穂郡・佐用郡(定数1)、相生市(定数1)、たつの市・揖保郡(定数2)、姫路市の一部(定数8)、神崎郡(定数1)の5選挙区が絡む。このうち、自民党衆議院議員元秘書と山口氏の元秘書がともに現職で議席を分け合うたつの市・揖保郡選挙区に関しては無投票の公算が高いが、残りの選挙区に関しては、山口氏側と兵庫県連で分裂すると予想されている。

 地元記者は「山口氏は、兵庫県連の支援を受けて兵庫12区で立候補した戸井田真太郎氏への不快感を隠そうとしていませんでした。また、彼の選挙を手伝ったとされる県議や市議に対しても同じような姿勢を見せていて、『刺客を送り込むのではないか』と記者の間で噂になっていました。今回の県議選では、県連が当初公認から漏れた議員も含めて会派として単独過半数を維持できるかは不透明で、その意味で山口氏の地盤の中心となる1人区の行く末は非常に大きな意味を持っているといえます」と解説する。 改選前の兵庫県議会定数は89人。今年4月の統一地方選では2人削減され、87人となるが、現在、自民党はセクハラ問題などで会派離脱した県議を頭数に入れてなんとか単独過半数を維持できているのが現状だ。自民県連関係者は「引退議員などを考慮すると、1人区では取りこぼしは許されない。投開票まで残された時間は少ないが、ぎりぎりまで候補者の擁立や、当選後の会派入りなどの調整が続く」と打ち明ける。

 しかし、そのような調整を尻目に、県西部の複数の1人区で、自民党に入党したはずの山口氏が“暴走”を繰り返している。

●赤穂市・赤穂郡・佐用郡―山口系が出馬模索?市長選の因縁や謎の町議長辞任

 現職の自民県議は、これまでの各種選挙で山口氏と抗争を繰り広げるなど因縁浅からぬ関係だ。また、地盤とする赤穂市では1月に市長選が行われ、山口氏が支援した元県職員が敗北するという事件も起こっている。まずは市長選を振り返ってみたい。

 立候補したのは、表明順に、地元青年会議所などの支援を受けた民間出身候補と、山口氏がバックアップした元県職員、そして当選した元副市長だった。選挙戦ではかつて山口氏が民主党時代に支持を受けていた連合票など組織票が元副市長に流れ、約200票の僅差だった。元県職員陣営には山口事務所から支持者名簿なども多数流れていたとみられ、地元記者によると「山口氏から元県職員支持を呼びかける電話が掛かってきた」との声が多数地元住民から聞かれたという。

 山口氏は、これまでの選挙戦を通じて「山口党」とも呼ばれる強固な支持基盤を築き上げ、最近の総選挙では対立候補の2倍弱の得票を誇るなど終始優勢な選挙戦を展開していたことで知られるが、自民党移籍直後の市長選で久々の辛酸をなめることとなった。地元記者は「民主党の政策を掲げていながら、結局自民党へ行ったことへのアレルギー反応は予想以上でした。市役所OBが市長に就くという流れが長年続いていることに対し、市民の間には閉塞感や不満が漂っていましたが、逆に『相生市の人に赤穂市をかき回されるほうが不愉快』というムードでかき消された感じでした」と振り返る。

 また、県議選を前に、赤穂市の北に位置する上郡町では不可解な議長辞任劇も起こっている。同町議会では昨年、議長が議会運営の不手際などから辞任するものの、再度議長選に立候補し再選。しかし1月にこの議長が隣接する町議会に対し、県議選への立候補が取り沙汰される同町議への選挙協力を依頼する文書を議長名で配布。これが問題視され、2月に再度辞任。1期で2度議長就任と辞職を行う珍事を引き起こした。 地元政界関係者は「2度目の辞任の引き金となった文書で、支援を呼びかけられた町議は山口氏との関係も良好で、昨年の衆院選で現職県議が山口氏を推さなかったことへの意趣返しとして出馬させようとけしかけられていた。ただ、支持者などから賛同が得られず動きが止まっているので、実際に出馬するかは不透明です」と証言する。

 この町議以外にも、赤穂市長選で山口氏が擁立した元県職員の出馬も噂されている。県議選で使用した事務所を拠点に、いまだ活動を続けているとみられることが理由だ。

 なぜ、そこまで候補者擁立工作を行うのだろうか。ある自民党関係者は「とにかく我々は県会で過半数を維持したい。山口氏はそれを見透かしたうえで、我々の同志を落選させて子飼いの人間を送り込み、その議席を使って駆け引きをしたいのだろう。12区の支部長として認められず、和歌山県連所属となっているのも、県連が反対しているからだが、そんな現状は彼にとって極めて不愉快なのだろう」と話す。

●元山口派現職vs.山口派新人vs.自民系新人、混迷の相生市

 赤穂市・赤穂郡・佐用郡の東隣、山口氏のお膝元である相生市でも情勢は混乱を極めている。民主系現職はかつて、山口氏が選挙戦で支持を訴えた人物だ。しかし、今回は自らの後援会員を擁立。一方で自民党は元相生市議を公認している。

 地元記者は「山口氏の後援会員も自民党公認を申請する動きを見せましたが、そもそも、その時点ですでに地元支部では元市議の公認上申を決めていました。昨年末に報道機関向けの出馬会見をした直後、公認申請のため県連に向かいましたが、その日は県連の御用納め後。入党の経緯はさておき、曲がりなりにも自民党公認を欲しいのなら、党のスケジュールぐらいは把握しておくべきで、お粗末すぎる印象です」とあきれる。

 また、自民党関係者も「山口氏が自民党に入ることについて、我々は一貫して反対している。ただ、山口氏がそれでも自民党に入りたいというのであれば我々の流儀に従うべきで、対立候補の擁立など論外。結局、自分のわがままを通したいだけで、組織人としての資質が決定的に欠けていると言わざるを得ない」と憤慨する。

●世襲候補vs.民主系現職の神崎郡

 世界遺産・姫路城で知られる姫路市の北にある3町が舞台となる神崎郡。ここでは前回統一選で落選し、引退した自民元職の地盤を継いだ元福崎町議の二世候補が民主系現職に挑む構図だ。 現職の地盤は選挙区北部の神河町。同町は人口県下最少というだけでなく、各種選挙で高い投票率を誇ることでも知られる。地元関係者は「高い投票率はもともとの母数が少ないだけでなく、各種組織・団体の力が非常に強いからだ」と解説する。そして、それらと良好な関係を築いている人物が山口氏だとしたうえで、「彼にはどのような背景がある組織や団体であっても、臆せず飛び込んで虜にしてしまう魅力や能力がある。地元、相生以上に山口氏にとって強固な地盤ではないかと思います」と話す。

 一方で、新人候補の地盤は選挙区南部の福崎町。関係者は「率直に言って現職の壁は非常に厚い。しかし、今回は山口さんも自民党入りした以上は表だって相手の支援には回れないはずで、そこに勝機を見いだすしかない」と打ち明ける。地元記者は「相生や赤穂などと違い、山口氏が『神崎郡では今回何もしない』と明言しているという話は確かにあります。ただそれが、改めて何かする必要すらないからなのか、本当に手を引いていることを意味するのかは不透明です。個人的には前者ではないかと思っています」と話す。

●苛立つ自民県連

 議会で単なる最大会派ではなく、単独過半数を占めるメリットは議会対策上も首長や役所に対しての発言力上も非常に大きい。ある県連関係者は「万が一、半数を割り込んでしまったら、山口氏に頭を下げないといけなくなる事態も考えられるので、今回は今まで以上に自分たちの力だけで単独過半数を維持しなければならない」と話す。

 自民県連の山口アレルギーは山口氏の政治姿勢だけでなく、山口氏の後ろ盾となっている二階氏へのアレルギーでもあるとの指摘がある。

 地元記者は「総選挙の際、兵庫12区へ二階氏が介入したことで反発を招きました。それ以前に神戸市長選でも二階氏や彼と通じた元市会議員の分派工作などで引っかき回されたという思いを持っている関係者は多く、それらの事情が相まって、より山口氏の問題が複雑化しているのです」と解説する。

 ある県政関係者も「神戸では、元市会議員の影響力が強かった港湾関係の利権に二階氏が噛んでいたという噂は絶えない。また、慢性化する交通渋滞の解消を図るため、県西部の臨海部に新たな自動車専用道を建設する構想が長年進められているが、山口氏を可愛がる背景には、そこにも介入したいという思惑が透けて見える。とにかく二階氏は金の臭いには敏感で、だからこそ政党を渡り歩いてもなお影響力を誇示できているのだろうが、これ以上、兵庫県をかき回すことは我慢できない」と話す。

 号泣県議で世界中に恥を晒した兵庫県議会が、自民県連と山口氏が引き起こす場外乱闘でまた、話題を集めてしまうのだろうか。
(文=編集部)

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