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国内初の全館飲食店ビルとして、77年間にわたり親しまれてきた東京・銀座の「ニユートーキヨー」数寄屋橋本店ビル(東京都千代田区)が、再開発事業に伴って8日に閉館する。半世紀以上も同社に勤め、定年後の今も1階入り口で案内係を務める石井司郎さん(74)も、感慨深くその日を迎える。
◇国内初の全館飲食店
数寄屋橋本店の開業は1937年。地上5階、地下1階の全フロアに飲食店が入居し、生ビールを提供するという当時新しい営業形態が人気となり、詩人の萩原朔太郎や高見順ら文化人も多く通ったという。戦時中の43年に強制借り上げで休業し、戦後も49年まで、占領下の配給制限で料理は休止した。57年に地上9階、地下2階に建て替えられ、88年の改築で現在の赤レンガの建物になった。
石井さんは開業26年後の63年に入社した。高度成長期のサラリーマン客を集め、各地にチェーン店を広げたころだ。その後、全国の約20店舗でビール専門のカウンターマンや店長を務め、ようやく92年、憧れの数寄屋橋本店ビル6階にあったパブの店長となった。
時はまさにバブル崩壊直後。企業の接待が目に見えて減り「景気の変化を肌で感じました」と石井さん。同時に、温かなもてなしや確かな味の料理、新鮮なビールを求める人が減ることはなく、基本の大切さを再認識する時期でもあったという。
2000年に60歳で定年退職後、同10月に再就職。チョウネクタイを締め、平日午後5時から10時まで、大好きな本店ビルに立ち来店客を案内し続けてきた。
◇「最後まで笑顔で」
8日の閉館日は、石井さんの75歳の誕生日でもある。再開発後の計画は未定で、本店は近くの有楽町電気ビル店に移転する。石井さんは「お客様には感謝の気持ちでいっぱい。最後まで笑顔でご案内したい」と話す。【大迫麻記子】