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業務上の何らかの事故やクレームが発生し、社内でなんとか火消しが終わった後で担当者が必ず報告書に記すのが「再発防止に努めます」というフレーズだ。現場の担当者としては、事故ないしはクレームの責任を取るために、こう言わざるを得ないのは当然だ。
また、担当者からの報告を受ける側にとっても、監督責任を問われる以上、再発しうる状態で放置するわけにはいかないので、こうしたフレーズとともに、具体的な対策を引き出さなくてはいけない。報告書のテンプレートの中に、こうした対策を記すための欄があらかじめ用意されている場合も少なくないだろう。
もちろん、人命に関わるような事故やクレームにおいては、これはまったく正しい対応である。しかし事故やクレームの規模があまりにも小さい場合、わざわざ全社的な再発防止策を講じるよりも、対処療法で応じたほうが、トータルでのコストがかからない可能性もある。たった1人のユーザーからのほんのちょっとしたクレームを再度起こさないために、全社を巻き込むような大規模な業務フローの変更を行っていては、どれだけリソースがあっても足りなくなってしまう。
しかし現実的には、こうした全体のコストやリソースが考慮されることはあまりない。とにかく再発防止のフローを整えることが、より「会社的」であり、業務改善の一環として評価されやすいからだ。何より立案している側は大真面目であり、また効果もあるわけで、その改善案がきちんと手順を経て上がってきたものであれば、よりよい対案でも出さない限り、拒否しにくいという事情もある。
だが、現場の業務フローの改善でとどまるならまだしも、こうした「再発防止策」が、製品やサービスの開発工程にまで及ぶと、話は少々厄介になってくる。今回はこの問題について見て行きたい。
●「再発防止」の名のもとにコストを無視
会社にお勤めの方であれば、現在の業務フローの中で、すでに習慣化しているのであまり気にとどめないが、何の役に立っているのか実はよく分かっていないルールの1つや2つは、身近にあるのではないだろうか。
特にアナログな業務フローが残っている会社であれば、例えば「稟議書を提出する前には必ずコピーをとること」「ファイリングの前には必ず連番を付与すること」など、代々受け継がれているアナログ作業は少なからずあるはずだ。余談だが、こうした「○○する前には必ず○○すること」というフレーズに当てはまる作業は、要注意と言える。…