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神奈川県川崎市の中学1年生の殺害事件など、青少年が巻き込まれる殺伐とした出来事が相次ぐ中、高校生が命の尊さ、生きるということの尊厳に真正面から向き合う姿に心を打たれた。
青森県十和田市にある県立三本木農業高校(生徒数604人、滝口孝之校長)。三本木農高といえば、ご存じの方もいると思うが、松方弘樹さんや柳葉敏郎さんら実力派俳優が出演し、盲目の馬とパートナーとなる馬術部の少女の絆を描いた物語「三本木農業高校、馬術部~盲目の馬と少女の実話~」(平成20年10月公開)の舞台となった。十和田市は旧陸軍が軍馬補充部を設置するなど、古くから馬との関わりが深い土地柄でもある。
その三本木農高で3年前から、青森県動物愛護センター(青森市)で殺処分された犬、猫の骨を譲り受け、土に混ぜて花を育てるという活動が続けられている。名付けて「命の花プロジェクト」。きっかけは、動物科学科愛玩動物研究室の当時、2年生の女子生徒が同センターを見学した際、事業系廃棄物としてゴミと同様に処分される現状を目の当たりにし、何とか殺処分ゼロの社会を実現したいと思い立ったことだ。
「何の罪もないペットが人間の勝手な都合で捨てられ、そしてゴミとして扱われる」「もっと長生きしたかっただろうに…」。そんなやりきれない忸怩(じくじ)たる思いと、土に返して花として育てることで新たな命を吹き込むという、ある意味崇高な使命感のようなものが生徒たちを立ち上がらせたと思うと胸が熱くなる。
育てた花は地域のイベントなどで住民に配布しているが、当初は「動物の骨が入っていて気持ち悪い」「教育現場としてはいかがなものか」といった批判にさらされたという。それでも学校は地道に活動し、今では地域の理解も得られているという。
同センターでは毎年、2千匹以上の犬や猫が殺処分されている。センターの担当者によると、殺処分の数は年々減っているという。病気、住環境の変化などさまざまな要因はあるにせよ、それでも殺処分が行われているという現状に、言葉を発せない動物が狭い空間の中で命を絶たれるというシーンを想像するだけで涙があふれ、胸が締め付けられる思いがするのは自分だけだろうか。
わが家でも4年ほど前に雌犬を病気で亡くした。わずか10年の命だった。ペット専門の業者に焼いてもらい、骨は専用の墓地に埋葬し、毎年、お盆などに供え物をして供養している。自宅には今でも元気だったころの写真を飾り、妻が毎朝、水をあげている。
当時、“わが子”を失ったショックで、しばらくペットレス症候群に陥ってしまったことを思い出す。「こういう悲しい思いは二度としたくない」と思いながら、性懲りもなく今もまた雌犬を飼っている。
つい余談になってしまったが、ペットを飼っている者として声を大にして言いたいのが、言葉を発せない動物の感情を分かる努力をし、自分の子供と同様に愛情を持って接しているかということだ。時の感情だけで手に入れ、人間のエゴだけで命を絶つということは決してあってはならない。命の重さは人間も動物も同じ、尊いものだということを改めて問い直したい。
愛玩動物研究室の1人の女子生徒が言った。「殺処分は減ってもまた捨てる人がいる。助ける人もいれば、捨てる人もいる。動物を飼うということはどういうことなのか飼い主に意識してほしい」。この言葉にすべてが凝縮されている。
学校の敷地内にある動物舎では、愛玩動物研究室の5人の女子生徒が毎日、犬や猫の管理をし、土・日曜日は当番制で世話をしている。「辛くないの?」と質問して返ってきた答えは、満面の笑みで「動物が大好きですから」。薄緑色の作業着に長靴で世話をするその姿にたくましささえ覚えた。生徒たちは将来、ドッグトレーナーや動物看護師に就きたいという。命と真摯(しんし)に向き合う彼女たちなら必ず夢がかなうだろうし、ぜひ、これからも応援していきたい。
彼女たちが卒業しても命の花プロジェクトは、これからも後輩に脈々とその精神が受け継がれていくに違いない。いつか殺処分ゼロの日が来ることを願って-。(福田徳行)