２００５年４月の尼崎ＪＲ脱線事故の現場（兵庫県尼崎市久々知）について、ＪＲ西日本は電車が衝突したマンション（９階建て）を４階まで一部保存し、慰霊碑を設ける－との整備計画を決定し、２０日午前、事故遺族らに説明を始めた。昨年１１月の最終案とほぼ同じ内容で、１５年度後半に着工し、その３年後の完成を目指す。

　ＪＲ西が遺族らに示した資料によると、決定した計画は、事故の痕跡が残るマンション北側の４階部分から階段状に低くする形で保存する▽部分的に屋根や壁で覆う▽マンション東側に慰霊碑や事故関連の資料などを展示する管理棟、休憩スペースを設ける－などの内容。

　同社は今後、設計や行政上の手続き、近隣住民らへの説明を開始。マンション工事を終えた後、屋根や管理棟を整備し、慰霊碑づくりも着工に合わせて進める。

　事故現場をめぐっては、同社が３年前からアンケートなどで遺族や負傷者の意見を聞いてきた。昨年１１月、遺族らを対象にした４回目の説明会で、「４階まで一部保存」などの方針を最終案として提示。慰霊碑とマンションの間に小道を設けるなど一体感が強まるよう修正し、正式決定した。

　一方、整備にはさまざまな意見があり、マンションの「全部保存」をＪＲ西に要望した遺族もいる。長女を亡くした藤崎光子さん（７５）＝大阪市城東区＝は「事故の風化を防ぐためには現場をそのまま残した方がいい。ＪＲ西に引き続き思いを伝えていきたい」と話した。（宮本万里子、金　旻革）