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ミッチーこと及川光博が、いつになく精力的だ。歌手デビュー20周年を記念して、約5年ぶりにシングルCD「ダンディ・ダンディ/SAVE THE FUTURE!!」(ビクターエンタテインメント)を発売、さらに映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』(3月21日公開)に仮面ライダー3号・黒井響一郎役で出演という、ミュージシャン・俳優、2つの大きな仕事が重なった。そのプロモーションに音楽番組はもちろん、その強烈なキャラクターゆえバラエティ番組にも引っ張りだこだ。
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『ミュージックドラゴン』(日本テレビ系)では「レッドカーペット歴20年」とレッドカーペットで登場し、「川柳は宇宙だ!」と川柳を詠み、仮面ライダー寸劇を演じていたし、『ユミパン』(フジテレビ系)では照れまくる永島優美アナウンサーを相手に「壁ドン」や「あごクイ」を完璧に決め、『しゃべくり007』(日本テレビ系)では40歳代のおっさんトークを、『さんまのまんま』(関西テレビ)ではさんまと恋愛・結婚トーク。変幻自在でありながら、一貫して「ミッチー」であり続ける姿は驚異的だ。
思えば、及川光博は不思議で稀有な存在だ。『相棒』(テレビ朝日系)の神戸尊役に出会うまで、長らく代表作といえる役柄もなかったし、代表曲といえるようなヒット曲もない。それでも20年にわたり、及川光博はずっと「2.5次元」的な「ミッチー」というキャラで芸能界を生き抜いてきた。いわば、代表作は自ら「透明な着ぐるみ」(『しゃべくり007』)と称す、「ミッチー」そのものなのだ。
「本日諸君らの担当教官となった、見ての通りのガルマ・ザビです」
観客がキョトンとする中、『機動戦士ガンダム』に登場するガルマ・ザビの衣装に扮した及川光博が登場したのが、『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)だ。「私物」というジオン公国の軍服に身を包んだミッチーは、どう見てもガルマそのものである。そのコスプレのクオリティは、テレビ用に昨日今日始めたレベルではないことは明らか。事実、ライブなどでは、『サイボーグ009』『宇宙戦艦ヤマト』『ルパン三世』(緑ジャケット)、『ガッチャマン』『ベルサイユのばら』『セーラームーン』(タキシード仮面)などのコスプレを披露。『ガンダム』関連では、シャアを模した「赤い彗星のニャア」というキャラにまでなりきっている。
コアなアニメファンは、テレビタレントがこうした言動をすると、親近感が湧くというよりも逆に反感を抱くことが珍しくない。だが、なぜか「ミッチーなら許せる」という声が多い。それもまた、ミッチーの稀有さのひとつだ。
『嵐にしやがれ』はもともと、ゲストである「アニキ」が嵐メンバーにさまざまなことを教えていくという番組。現在はゲストも「アニキ」に限らず、ロケ企画も多くなったが、この日の及川光博出演のコーナーは原点に帰ったように、「ザビ家が変身するとザクになるの?」などと『ガンダム』をまったく知らない嵐を相手に、ミッチーが「人生の参考書」だという「ガンダムに学ぶイイ男授業」をするというものだった。
「みなさん、引かないでくださいよ。いや、引いてもいい!」
と言いながら、スラスラと、「0079」「80」「83」「87」「88~93」と数字をホワイトボードに書いていくミッチー。『ガンダム』に関連する年号である。もうこれだけでも、生粋の『ガンダム』ファンであることが分かるが、次々と浴びさられる嵐からの質問にも間髪を入れず答えていくさまは、まさに『ガンダム』マニア。そして「イイ男」としてシャア・アズナブルとランバ・ラルを挙げ、シャアは「カリスマ性はあるけど弱点は自己中」と分析。ランバ・ラルには「背負い、許し、包む」「部下思い」な理想の上司と紹介。「若手に対して堂々と説教ができる。なぜか? 自信があるからです、経験値があるから、実績があるから。その説得力が大人」と熱く語り、最大限評価した上で、最後にミッチー目線らしい欠点を挙げる。
「ラルは人間の器はでかいけど、メタボ!」
後半は、なぜか『ガンダム』を離れ『快傑ズバット』の話に急展開。「初めて自分のお小遣いで買ったレコードが『快傑ズバット』の主題歌でした」というミッチーは、ズバットを演じた宮内洋が「俳優の原点」だという。確かに、ズバットのキメキメでキザな仕草はミッチーのそれを思い起こさせる。「クール&セクシーというのが、男としてカッコいい」と。
前述の通り、及川光博は仮面ライダー3号を演じる。これは、ミッチーにとって長年の夢だった。デビュー当時、彼は「戦隊ヒーロー」もののオーディションを受けたことがある。ミッチーが希望したのは「青」役。そう、『ゴレンジャー』では宮内洋が演じた「青」だ。だが、それはかなわなかった。そして時を経て、及川光博は仮面ライダー3号に選ばれたのだ。
「3号」はもともと、原作漫画には1号、2号に続いて登場していた“幻”のライダー。しかし特撮シリーズでは、3号は“封印”され、デザインを一新した『仮面ライダーV3』が事実上の「3号」として制作された。その「V3」を演じたのもまた宮内洋なのだ。そして映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』では、その「V3」と「3号」が対決するという。ものすごい運命のつながりを感じさせてくれる話だ。それは、決して偶然ではないはずだ。及川光博はいつだって“本気”でやりきり、それをやり続けてきた。その結果、まさにシャアのような「カリスマ性」に加え、ランバ・ラル同様の「自信」「経験値」「実績」を手にし、ミッチーの「説得力」になっている。だからこそ、コアなファンも納得させ、作り手から請われるという最高の形で、夢がかなったのだ。
『嵐にしやがれ』は、そんなミッチーだからこそできる、「イイ男授業」だった。
(文=てれびのスキマ)