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世界遺産の二条城(京都市)や国宝の長谷寺本堂(奈良県桜井市)などで油のような液体がまかれた事件で、奈良県警は4月8日、世界遺産の金峯山寺(きんぶせんじ)の本堂(吉野町、国宝)など、3寺院で新たに同様の被害を確認したと発表した。県警は同一犯の可能性もあるとみて、文化財保護法違反などの容疑で調べている。
県警によると、被害が見つかったのは金峯山寺と近くの東南院、橿原市の久米寺。金峯山寺は本堂外側の柱や堂内の木造蔵王権現立像(重文)など4カ所、東南院は多宝塔と護摩堂の縁側計2カ所、久米寺では本堂や金剛力士像など計10カ所に痕跡があった。
金峯山寺は3日午前10時~8日午前9時半の間、久米寺は8日午前8時10分~午後4時までの犯行とみられる。東南院は6日正午ごろに発見したが、最後に確認した時期は不明という。
県文化財保存課によると、金峯山寺は飛鳥時代に修験道の開祖、役小角(えんのおづぬ)が創建したとされる修験本宗の総本山。天正19(1591)年に建立の本堂は、高さ約28mの威容を誇る吉野山のシンボル的な大建築。木造蔵王権現立像は高さ約4.4mのヒノキ造りで、明治期の廃仏毀釈で吉野山にあった安禅寺から移されたとみられている。
東南院は金峯山寺と同じ修験本宗の別格本山で、役行者の開基とされる。奈良県内ではこれまで、ほか5社寺で同様の被害が確認されており、県警で調べている。
桜の名所として知られる奈良県吉野町の吉野山にある創業300年の老舗旅館が昨年9月、水道水を沸かした湯の風呂を「天然温泉」と表示していたことが景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、県から是正指導を受けていたことが分かった。旅館によると、温泉水をくみ上げるポンプが昨年8月末に故障し、沸かし湯で代用していたという。しかし、その後も約1カ月、ホームページなどで天然温泉とうたって客を集めていた。
【写真】天然温泉をうたった部分が隠されている「さこや」の看板
旅館「さこや」で、経営者の大村陽会長(78)は吉野町議も務めている。大村会長は「県の指摘まで(景品表示法という)法律があることを知らなかった」と釈明している。
県によると、さこやは2004年10月に敷地内の谷間で温泉を掘削。泉質の分析書を提出し、05年7月に温泉利用許可を受けた。館内の露天風呂などにポンプでくみ上げて「100%源泉かけ流し」と表示し、ホームページにも掲載。吉野山では数少ない天然温泉の宿泊施設として人気を集めた。
ところが昨年9月29日、県吉野保健所に「水道水を利用している」という趣旨の匿名の投書があった。保健所が同日中に確認したところ、ポンプの故障で温泉をくみ上げられなくなっており、水道水を沸かして湯船に張っていたことが判明。「天然温泉」とうたいながら水道水を提供している点が、景品表示法違反に当たるとして、保健所は是正を求める行政指導をした。
さこやは直後に「天然温泉」などと記した看板に張り紙をしたほか、ホームページに「お知らせ」として温泉の一時停止を説明する文章を掲載する措置を取った。ポンプの修理は完了したが、まだ温泉は再開していない。
一方、さこやは行政指導を受けた後の昨年10月、保健所に報告書を提出したが、ポンプの故障時期は「9月23日」と記してある。大村会長は食い違いについて「理由は分からない」と述べている。【伊澤拓也】
◇景品表示法
不当な表示や過大な景品提供などを取り締まる目的で1962年に制定された。食品に限らず、消費者に商品やサービスを提供する業者が、品質や内容を実際より良く見せかけて表示することなどを禁じている。輸入牛肉を国産のブランド肉と偽って表示した場合や、温泉の成分を偽った場合などは、「優良誤認」に当たる。食品偽装問題などを受けて昨年11月、不当表示した事業者に課徴金を科す改正景品表示法が成立した。
石川県白山市の物流会社工場で職業・住所不詳の水上龍さん(38)の遺体が見つかった死体遺棄事件で、遺体放置に関与した疑いが強まったとして、県警白山署捜査本部は8日、死体遺棄容疑で知人の男ら3人の逮捕状を取ったと発表した。3人は水上さんの交友関係を調べる中で浮かんだという。いずれも所在が分かっておらず、捜査本部が行方を追っている。
【地図】連れ去りが目撃された場所は? 遺体発見現場は?
捜査本部によると、遺体は3日夕、工場建物内に放置された車の後部座席から、シートにくるまれた状態で見つかった。死因は頭部打撲による外傷性くも膜下出血と、背中を刺されたことによる失血死だった。
遺体発見前日の2日深夜、同市内の路上で、水上さんとみられる男性が複数の人物に車で連れ去られるのが目撃されていた。工場と連れ去り現場で検出された血液のDNA型が水上さんのものと一致。捜査本部は殺人容疑も視野に捜査している。【中津川甫】
昨年8月に横浜市の認知症の男性(当時83歳)が行方不明になり、東京都中野区で倒れているのを発見されたが、駆け付けた消防や警察は救急搬送や保護をせず、2日後に死亡していたことが分かった。消防は「男性が搬送を辞退した」として現場を離れ、警察は「受け答えがしっかりしていて認知症の人とは思わなかった」という。認知症に詳しい専門家は「再発防止のため協議を」と呼び掛けている。
【男性の家族の思い】「何度も助ける機会あったのに…」
警視庁や家族によると、男性は2014年8月19日夕、横浜市鶴見区のデイサービス施設から行方不明になり、家族は同日夜、神奈川県警に届け出た。
21日午前10時20分ごろ、JR中野駅近くの路上で男性が倒れているのが見つかり、東京消防庁中野消防署の救急隊が先着、警視庁中野署の駅前交番の警察官も駆け付けた。男性はのどの渇きを訴え37.6度の発熱があったが、搬送を拒んだという。救急隊は「搬送の必要性を認めたが傷病者(男性)が辞退」との項目にチェックを入れた不搬送の同意書に、男性に署名させて現場を離れた。
一方、警察官に対して男性は氏名を答え、住所は話さず、生年月日は「昭和26年2月26日」(実際は昭和6年2月4日)と答えたという。警察官は男性に水を飲ませ、「休憩できる安全な場所」と考えて約300メートル東側にある紅葉山公園に連れて行き、ベンチに座らせ、現場を離れた。
ところが21日午後10時過ぎ、「男が公園で寝込んでいる」との通報があり、午前のやり取りを知らない同交番の警察官が駆け付けると、この男性が公園トイレの床で寝ていた。警察官が救急車を呼ぶかと尋ねると「大丈夫」と答え、「家はないんですか」と聞くとうなずいた。名前と生年月日の問いにも「大丈夫」を繰り返し、後に分かるが実際とは1字だけ違う氏名を答え、この時も警察官はそのまま現場を離れた。
男性は23日朝、トイレ脇の地面で死亡しているのが見つかった。解剖の結果、死因は脱水症と低栄養状態の疑い。身元不明遺体として扱われ、家族が今年2月、警視庁のホームページで持ち物や特徴が一致する遺体情報を見つけ、ようやく身元が判明した。男性は最初の発見時に正確な氏名を答えていたが、警察はこの時、身元照会をせず、死亡後も家族が見つけるまで身元を特定できなかった。
警察庁は2カ月前の昨年6月、認知症の行方不明者の早期発見や保護に努めるよう通達したばかり。保護や身元照会をしなかったことについて警視庁は「外傷や自傷他害の恐れもない」「受け答えがしっかりし不審点も認められない」などと判断したと説明。21日午前は「一時的に気分を悪くして横になった近所の人」、夜は「最近ホームレスになった人」と推測し、認知症と考えなかったという。
警視庁地域部は「謹んでお悔やみ申し上げます。速やかに身元確認できなかったことは誠に残念です。警察官の取り扱いは必ずしも適正を欠くところがあったとは言い難いと思っていますが、今後に生かしたい」と話した。一方、中野消防署にも遺族の同意を得て取材を申し込んだが、同署は「個人情報保護条例があり、第三者に話せない」として一切、応じていない。【銭場裕司、山田泰蔵】
◇認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長の話
救えるチャンスが幾重もあり残念でならない。当時の最高気温は連日35度に近く、発熱もあった。本人からは救急隊や警察官はどう見えていたのか。声かけや目線の位置、質問の仕方は本人が助けてと言いやすい対応だったのか。専門職や地域の人たちとは連携できなかったのか。この事案から具体的に学び、再発を防ぐためにそれぞれの地域で何ができるかを話し合うべきだ。
◇死亡した認知症男性を巡る経過(家族や警視庁などへの取材に基づく)
【2014年】
8月19日夕 横浜市鶴見区のデイサービス施設から行方不明になる。家族が夜、神奈川県警に届け出る
21日午前 東京都中野区の中野駅近くの路上で倒れているのを発見され、119番通報。救急搬送を断り、不搬送の同意書に署名。警察官も保護や身元照会をせず、水を飲ませた後、約300メートル東側の紅葉山公園に連れて行く(1)
同日夜 同公園で「男が寝込んでいる」と110番通報。警察官が公園のトイレの床で寝ている男性を見つけ、救急車を呼ぶか尋ねると、手を挙げて「大丈夫」と断る。警察官はこの時も保護や身元照会を行わず(2)
23日朝 再び110番通報があり、同公園トイレ脇で死亡しているのが見つかる。身元が分かる物などがなく、身元不明遺体として取り扱われる
9月下旬~10月上旬 身元を調べていた警視庁中野署の担当者が(1)(2)のやり取りを把握し(1)で男性が答えていた正確な氏名も認識するが、それ以降も、家族が届け出ていた行方不明者届と一致できず
12月19日 身元不明のまま火葬される
【2015年】
1月15日 身元不明遺体として男性の所持品や服装などの情報を警視庁がホームページに掲載
2月上旬 家族が警視庁ホームページで男性と思われる身元不明遺体を見つけ、同庁に申し出る
27日 DNA鑑定で遺体は男性本人と確定
3月1日 家族が遺骨を引き取る
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