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「味のストック」仲間と共有

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「味のストック」仲間と共有

「味のストック」仲間と共有 
  • 材料や加工の条件を変えて試作を繰り返す。「最終的には自分の味覚や嗅覚が頼りです」(東京都内の研究所で)=清水敏明撮影
  •   グリコ乳業(東京)商品開発研究所の緒方朋子さん(44)は、ヨーグルト製品を中心にヒット商品を打ち出してきた。「試行錯誤の連続。でも、そこに面白さがある」と話す。

      中でも、「朝食りんごヨーグルト」は付き合いの長い製品だ。「すり下ろしたリンゴを使ったヨーグルトの開発を」と社命が下ったのは1995年。まだ入社3年目だった。

      試作してみたが「全く面白くない味」だった。1年半かけ、リンゴを角切りにし食感を生かす方法に行き着いた。発売後、じわじわと人気が広がった。

      だが、完全に納得してはいなかった。リンゴを加熱する際、生の食感や風味が損なわれる弱点があったからだ。発売から5年後の2002年、ベースのヨーグルトから作り直し始めた。

      工場で試作を繰り返すあまり、「工場は実験室じゃない」と叱られたことも。カップに充填(じゅうてん)する際の温度を工夫するなどして、生の「シャキシャキ感」を残す製法を編みだした。

      この3月に発売されたゼリー飲料「クラッシュド野菜」はトマトなどの食感や風味を閉じこめた新しい飲料。開発に5年かかった。

      現在は4人の研究員を率いるグループ長。カフェオレや果汁飲料など、扱う製品の幅はぐんと広がった。

      「新しい味は、自分が体感した味からしか生みだせない」と話す。研究職は室内にこもりがちだが、部下へは外へ出ることを勧める。自らも週2回以上、カフェやレストランで食べ、味や香り、食感を記憶する。「『味のストック』を増やすことで、目指す味を組み立てられるようになる」

      「味」には数値に表せない感覚的な面がある。折に触れ、料理や果物などをメンバーと一緒に食べるように心がけている。「味について、言葉や感覚を確認し合い共有する。チームの土台を作る大事な作業です」

      研究の原動力は「食を豊かにしたい」という欲求だ。「野菜や果物が持つおいしさを生かした、今までにない製品を作りたい。理想の味の追求に終わりはありません」(上田詔子)

     【退社後】レストラン巡り 「食」と「酒」探求

    • 仕事オンオフ~レストラン巡りで「食」と「酒」探求

        「食」と「酒」との最高の組み合わせを求めて、食べ歩きを続けている=写真=。「おいしいものを食べたいという欲求が、ものすごく強いんです」。探求心の深さは、ワインエキスパートや利き酒師の資格を取得したことにも表れている。

        10年ほど前から月に1回、東京・表参道にあるワイン教室に通っている。午後7時の開始に間に合うように、教室がある日は、きっちり仕事を仕上げる。

        香りを表現する講座では、中身が見えないグラスに入れた食材を匂いだけで当てる練習をすることも。ワインには、味わいや香りを表現する言葉が約300もあるという。酸味や渋み、うまみ……。「感じたことを、そのまま言葉にするのは難しい」と話す。

        しかし、その表現の多彩さに強くひかれている。「食の奥深さを再発見するよい機会になっています」

       【道具】味見用 海外出張に必携

      •   原料となる果物の味の確認や加工テストなどで、年に1回ほど海外へ出張する。その際に必ず持っていくのが、プラスチック製の小さなコップとスプーン=写真=だ。1週間ほどの出張では、コップ250個、スプーン100本をスーツケースに詰め込む。

          仕入れ先の工場で使うだけではない。地元のスーパーなどで、乳製品や果物、ケーキなどを買い求め、宿泊先で片っ端から味見をしていく。時には、移動中の車内や空港のロビーで試食することも。「味のストック」を増やすためだ。

          これまで訪れた国は、アジアや欧米、アフリカなど計24か国。特に、トルコのプレーンヨーグルトが忘れられない。ヨーグルトを調味料として使うトルコではスーパーでキロ単位で売られている。「酸味が少なく、クリーミー。本場の味に納得しました」

        おがた・ともこ 1969年、宮崎県生まれ。93年、九州大農学部を卒業後、グリコ協同乳業(当時)入社。研究部門に配属され、主にヨーグルト製品の開発を手がける。2011年、同社商品開発研究所の「開発研究企画グループ長」に就任。

         

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