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花王ハウスホールド研究所の柳沢友樹さん(44)は、入社以来18年間、衣料用洗剤の研究に携わってきた。
目指すのは消費者の価値観に響く商品開発。「洗剤を通じ新たなライフスタイルを提案したい」と話す。
昨年8月に発売した「ウルトラアタックネオ」は、「時短」をキーワードに打ち出した洗剤だ。すすぎが1回で済む「エコ」をうたった商品は既にあったが、「『環境』だけでなく『時短』も価値になる。そう気づいた時、これはいけると思った」と振り返る。
だが、アイデアを形にするのは容易ではない。様々な洗浄成分の組み合わせを何百パターンも試した。納得のいくものができず、新たな洗浄成分を作ることにゼロから取り組んだ。
同社の従来品と比べ約2倍の速さで汚れを分解する成分の開発に約2年半を要した。発売に際して、洗濯機の「スピードコース」の利用を提案し、仕事や家事に忙しい消費者の心をつかんだ。
周囲からは「論理的」と評されるが、粘り強さやあきらめない心が大事だと思っている。「頭で考えるだけでなく、動いてみて初めて分かることは多い」
例えば、14年前に開発に関わった粉末洗剤は、工場での大量生産化に課題を抱えていた。工場は交代制で24時間稼働。ならばと、研究員も交代勤務を組んで、現場に通うようにした。製造される粉末の性質を15分ごとに細かくデータにとり続け、少しずつ目指す品質に近づけていった。単調な作業を延々と続ける姿に、工場の担当者も協力を惜しまなかったという。
現在は、国内向けの衣料用洗剤の開発を担当する四つのグループを束ねる立場だ。既存の商品に改良を施す一方、消費者にとっての新たな価値の掘り起こしを考える。部下たちには「間違えたっていい。まずトライしてみよう」と話している。
洗浄力の強化と環境への配慮。その両立の追求に終わりはない。「日本の環境技術で世界で愛される洗剤を作るのが夢です」(佐川悦子)
【休日】娘の高跳びフォーム分析
スポーツの分析が趣味。中でも、中学3年生の娘の走り高跳びの試合は必ず応援に行き、ビデオに収めている。
家に帰ると、パソコンで映像をコマ送りにして、踏み切りの時の体の向きや足の動きなどを細かく分析する=写真=。良かった点、悪かった点を2人で話し合う。次の試合に生かすためだ。「娘も高く跳びたい一心で、真剣に聞いてくれる。いいコミュニケーションになっています」
中学から5年前に引退するまで続けた野球も好きで、メジャーリーグの試合をよく録画する。ピッチャーをしていた経験から、映像を見ながら配球を考えるのが習慣だ。「現役の頃は、相手の裏をかいた配球が得意でした。データ重視なのは昔からかも」と笑う。
昨年の娘の最高成績は県大会4位だった。得意の分析力を生かして、親子でさらに上を目指している。
【道具】温度計を駆使 データ収集
数種類の温度計=写真=は必須の仕事道具だ。対象に接触せずに測る表面温度計や、温度や湿度が本体に記録できるタイプのものなど、数種類を使い分ける。少しずつ条件を変えたりしながら、商品の洗浄力を比較する。「水温は、汚れの落ち具合に大きく影響するので、しっかり記録します」
調査のために一般家庭を訪問する際や、出張先にも持って行く。出張は国内にとどまらない。10年ほど前には、タイ向けの手洗い用洗剤の開発に携わり、バンコク郊外の家庭に何度も足を運んだ。手洗いをしている洗濯おけに温度計を差し込んではデータを取った。
「水温はもちろん、水の硬度や汚れ、細菌の数、天気や季節によっても洗浄力は変化します」。わずかな変化も見逃さない。その緻密さが、商品開発を支えている。