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文●川本梅花
◆チームのGK代表として戦う
スタメンを告げられたのは、試合当日のクラブハウスだった。
加藤順大は、あの日の出来事を思い出していた。加藤がJリーグの公式戦にデビューしたのは、Jリーガーになって9年目となる2011年6月11日のことだった。スタジアムはあの日と同じく、NACK5大宮スタジアム。もちろん当時の対戦相手は、現在所属している大宮アルディージャである。昨シーズンまで浦和レッズに加入していた加藤は、今度は逆に、背番号1番を背負って大宮のゴールマウスの守護神として立つことになった。
「自分のJリーグデビュー戦がこの場所だったので、長かったな、と感じました。んーん、やっぱり……年月というのは長いものだと思う」と話す。
昨年の12月11日に30歳になった加藤は、9年間という年月を経て物事を俯瞰して見られるようになったという。
「去年30歳になりましたけど、『妙に落ち着き出したな自分』と感じて」と言ってあどけなく笑う。「なんか、心の成長があったのかなと思いましたね」。そう話す加藤は、渋谷洋樹監督にスタメンを告げられて「チームのGK代表として戦う」という決意を胸に刻む。
「誰が試合に出てもおかしくない状況なので、試合に出るときにはGK代表として出るという気持ちをもっていました。僕が今日は試合に出ましたけど、しっかりGKの代表としてという気持ちをもって戦おうと考えていました」と述べた。
◆チームのバランスを考えながらのコーチング
試合が始まる前のロッカールームで、加藤はディフェンス陣に自分がどんな意図をもってコーチングするのかを伝える。
「後ろのバランス。そこだけはうるさく言うから」
加藤は、第2番手あるいは第3番手のGKとしてベンチから試合を見てきた。そうした状況に置かれたときでも、チームが戦うためにGKとして何が必要なのかを必死に考えてきた。
「バランスというところは非常に僕自身が意識して今日までやってきたことです。GKが声を出して指示しても、前にいる攻撃的な選手にまで声が届くわけではない。だから後ろにいる守備的な選手に声が届くようにと考えて、チームのバランスを中心にコーチングしています」
180cmという身長は、GKとしては決して高い部類には入らない。一見不利だと思われることを有利な側面に代えることは大切なことだ。しかし、人が勝手にもつGKの印象を変えるのは至難の業である。…