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林明輝『ラーメン食いてぇ!』の最終話が公開された。いま、読み終わった。よかったー。ちょっと泣いた。
2月26日(木)から、9日連続で1日1話ずつWEB上にアップされ、今日全話がそろった。
ていねいな描写、巧みな伏線。奇譚でありながら進むべき道がまっすぐで、読者をすっと物語の中に取り込むパワー。
予想がついても読む手が止められない感動する。すばらしい。
これが無料で読めるとは。インターネット万歳!
新疆ウイグル自治区西端パミール高原を歩く男。
ラーメン漫画とは思えぬシーンからはじまる。
ぶったおれて「も……もう体が動かん…… 俺はここで死ぬのか……」
シーン変わって、ビル屋上にいるおじいさん。
「圭子……どうやらわしも死ぬしかなさそうだ……」とつぶやく。自殺しようとしているのだ。
またもシーン変わってベッドで横になっている女子高生。「あたしなんか死んだほうが……」
死の直前にある三人が描かれ、ラーメン漫画じゃないのか?と思いながらも読みすすめる。
放浪している男は料理研究家。ロケで事故にあったのだ。
「思い残すことはないと言っていいだろう……」と目を閉じる。が、がばっと起き上がり叫ぶ。「清蘭のラーメンが食いてぇ!」
飛び降り自殺を考えているおじいちゃんの絶望は、圭子と二人三脚で作ってきた清蘭のラーメンがもう再現できないこと。「俺は圭子がいてくれないと何もできない情けない男だ……」 死んだ圭子のところに行こうと飛び降りようとしたときに。
ベッドの女子高生は学校裏サイトにひどいデマを流されていた。自殺しようとガラスの破片で手首を……。
三人三様の絶望が描かれるが、第一話のラストには三人は生きる気力を取り戻そうと歯を食いしばる。
自殺未遂をした女子高生がおじいちゃんに叫ぶ。
「おじいちゃん あたしにラーメン教えて!!」
ここから残り八話は、生きるために走り続ける三人が描かれる。
引き算したうえで描かれる密度の高さとテンポの良さ、デティールの確かさ、その人物が言うだろうと感じさせるセリフ。
読んでいて気持ちいいのだ。
かといって地味じゃない。
駅構内で女子高生が追いかけっこする青春の輝き、ラーメン修行、友情と恋愛と裏切り、『我々はどこから来たか我々は何者か我々はどこへゆくのか』を思索する大草原での冒険、家族のドラマ……。
読んでいるときは話にのせられてストレートな物語だと感じていたが、なんて具もりだくさんの漫画なんだ。
『ラーメン食いてぇ!』、無料公開である。リンクをクリックすれば読める。いますぐ読むべし。大おすすめ。
ぼくは、いまから同じ作者のボクシング漫画『Big Hearts』(林明輝)を読むことにします。(米光一成)