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“3Dプリンターの普及は、モノづくりに大きな変革をもたらした”などとありがたがっていた私たちは、まったく甘かったようだ。ある観点からすれば、3Dプリンターなんてまったく物足りないものだった。
どういう観点か? それは生産スピードだ。そしてその問題をいきなり打ち破る3Dプリンターが発表された。
■ 造形物がみるみる現れる
まずは下の動画を見てほしい。従来の3Dプリンターの工程を知っているひとからすれば衝撃的なはずだ。成形した物体が、液体レジンのなかからニュルニュルと出てくるのだ。
左下に「7× SPEED」と書いてあることからもわかるとおり、7倍のスピードに圧縮されてはいるけれど、それでも従来の3Dプリンターと比べて25から100倍のスピードで造形することができるという。
従来の3Dプリンターは、3Dプリンターとはいっても、じつは2Dでプリントしたレイヤー(層)を重ねていくという方式をとっていた。そのために造形に時間がかかり、しかもできあがった完成品はレイヤーの向きによる弱さがあった。しかし、この3Dプリンターは違う。連続的にプリントしていくのだ。そのため時間を短縮でき、レイヤー構造による弱さもない。
■ 紫外線と酸素を活用する
シリコンバレーのCarbon3Dという企業が発表したこの3Dプリンターの技術は、“Continuous Liquid Interface Production”の頭文字をとって『CLIP』と名づけられている。この『CLIP』の特徴は、紫外線と酸素をうまく組み合わせて使っていることだ。
材料として使用するのは紫外線硬化樹脂の液体(レジン)だ。そのレジンのプールの下側は、紫外線を通すとともに、酸素も透過させる(コンタクトレンズをイメージすればいい)“窓”になっている。酸素は樹脂の硬化を妨げる働きをする。そこで、窓から取り込まれた酸素が、窓とレジンとのあいだに、硬化が起こらない薄い層“デッドゾーン”を形成する。
その状態で、下から窓に紫外線の映像を当ててやると、紫外線が当たったデッドゾーンのすぐ上のレジンが硬化する。そこでレジンプールの上に設置した“成形プラットフォーム”でゆっくり対象物を引き上げつつ、映写する紫外線の像を変化させてやれば、連続的な造形が可能になるというわけだ。
■ 『CLIP』技術による大幅なスピードアップ
瞬間的に見ればこの3Dプリンターも2Dの積み重ねではあるが、時間の経過とともに見れば対象物は連続的に成形される。…