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『ちょっとした気づかいがあなたの人生を変える』(森本早苗著、アスコム)の著者は、55年間にわたってトップを走り続けているという、83歳にして現役のカリスマポーラレディ(老舗として有名なポーラ化粧品のセールスレディ)。
何のとりえもない自分が半世紀以上にわたりポーラレディを続けられたのは、ひとえに若い頃から常日ごろ、「気づかい」を心がけてきたことによると思います。(中略)気づかいは、難しいことはなく、いたってシンプル。相手が喜ぶ姿を想像する。それだけでいいのです。(「はじめに」より)
この言葉にも明らかなとおり、本書では、長い活動実績から導き出された「気づかいの心得」が紹介されているわけです。あらゆるビジネスパーソンがすぐに応用できそうな第3章から、「心と心をつなぐ会話術」に目を向けてみたいと思います。
話し上手より、聞き上手「人をひきつける話をするのが苦手」という相談をよく受けるという著者は、落語家や芸人でもない限り、「話し上手」になる必要なんてないと断言しています。むしろ「聞き上手」になった方が、相手とのコミュニケーションを図れるとも。事実、著者も昔から、誰に会ってもまず「聞き上手」になることを心がけてきたそうです。
おかげで「これは、森本さんだからいうのだけれど...」と、多くの人にいわれてきたそうですが、「○○さんだからいうのだけれど...」という言葉は、親密度のひとつのバロメーターになるとも説明しています。
だからこそ、むやみに「おもしろいことをしゃべろう」とするのではなく、まずは相手の話をしっかり聞いて、信頼関係をより強くし、「○○さんだからいうのだけれど...」を引き出せる人になることが大切。できれば、話してもらった内容は、相手のいないところでノートなどに記録しておけばベストだと著者。(88ページより)
気づかいをするには声も重要
年を重ねるにつれ、耳は次第に聞こえにくくなるもの。「若い世代には想像がつかないかもしれませんが」という言葉にあるとおり、私たちが実感するまでにはまだ時間がかかりそうですが、どうあれ加齢に伴うこうした変化を、著者は「チャンス」ととらえているといいます。なぜなら自分自身が、「大きな声でしゃべらなくては」と気づくことができたから。
話が聞き取りにくいことは大きなストレスになるため、話すときは大きな声でしゃべることがなにより大事。そこで仕事ではもちろんのこと、自分が客として店員さんに説明を受けているときでも、聞き取りづらい場合は「もう一度いってくださる?」と大きな声でお願いするようにしているそうです。…
そんな著者は「大きな声で話せている」という自負があるそうです。それは、訪問販売の仕事で半世紀以上も鍛えられてきたから。「50年以上も『インターホンごしに、まったく知らない方に話をする』ということを、何万回も繰り返してきました」という一節には、強い説得力があります。その経験が蓄積されているからこそ、インターホンごしの営業が、ボイストレーニングの場となって自身を育ててくれたことに感謝しているともいいます。学ぶべきことのある話ではないでしょうか?(94ページより)
名前を呼んで、心の距離を縮める
挨拶をするときに相手の名前を添えると、自然に聞こえるもの。だから著者は、大切な人の名前をなるべく多く口にすることを心がけているのだそうです。その話をするとき、「初対面の方の名前を、なかなかおぼえられなくて困っている」と相談されることも少なくないといいますが、これに関しては著者ならではのコツが紹介されています。
ビジネスの現場においては、初対面の方の場合、名刺を机の上に出したままであることが多いもの。そこで名刺が目の届く範囲にあるうちに、会話の中でできるだけ相手の名前を織り込むようにして口に出し、聴覚からおぼえるようにするのが早道だというわけです。とはいえ、2回目以降に会う場合、相手が複数になるとたしかに記憶しきれないこともあります。そういう場合は、ノートの隅にローマ字などで相手の名前を書いておくと安心。
たった1文字でも名前を間違えられると、本人にとっては不愉快。心の距離を縮めるつもりが、逆効果になることもありえます。だから著者はお客様とお会いする際、どんなに忙しくても必ずノートを開き、お客様の名前をフルネームで確認するのだそうです。そして購入履歴はもちろんのこと、最近の相手の悩みなど、共有できている情報を確認してから面会するようにしているのだとか。
大切なことは「記憶力」ではなく、「会う前に、名前を確認する」という手間を惜しまないことです。それこそが気遣いだからです。(100ページより)
また本人だけに限らず、相手の子どもや孫、可愛がっているペットなど、「相手にとっての大切な存在」の名前をおぼえることも大切。「お子様は、次は6年生に進級ですか?」といわれるよりも、「○○ちゃん、次は6年生に進級ですか?」といわれた方が、気持ちが相手により強く伝わるからだというのがその理由。小さなことではありますが、たしかに忘れるべきではないかもしれません。…(98ページより)
会話に表れる気づかいの本質
口数が少なくて注文がなかなか取れなかった営業職の女性に対し、著者は「会話の"間"は"魔"」であると伝えたことがあるそうです。家から一歩外に出て、誰かと良好な関係を保とうとしたら、会話を続けなければならないのは当然。ただし、その話は深い内容である必要はまったくないといいます。一文一文は、短くてOK。「疑問系」にすると、相手も答えやすくなるものだとか。
さらに著者は、たとえていうなら会話とは洋菓子の「ミルフィーユ」のようなものだという比喩を用いています。フランス語で「1000枚の葉」という意味のミルフィーユは、「たくさんの層をなしている状態」がその由来。つまり会話も、ミルフィーユのように多層的であることが理想だというわけです。
そして究極のところ、会話に「結論」はいらないともいいます。特に女性の場合は、話している過程(プロセス)が楽しければそれでいいということ。なお、使い古された言葉が重なっていても問題なし。「ありきたりのことしか話せない」と尻込みして黙っていたり、口数が少なくなったりする方がよほど失礼だというわけです。(102ページより)
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ひとつひとつの心得は難しいものではなく、それどころか、いたってシンプル。しかしそれらは、忘れるべきではない本質であるともいえます。加えて印象的なのは、柔らかな文体でつづられた言葉は、ときに力強さも見せる点。おそらくそれこそが、55年の実績の本質なのでしょう。そんな先輩からは、多くの気づきを見つけ出すことができるはずです。
(印南敦史)
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