現在、公開中のマイケル・ベイ監督の最新映画『ミュータントタートルズ』。薬品によってミュータント化(突然変異)した忍者カメがニューヨークを舞台に大暴れする今冬話題のアクション映画である。
『ミュータントタートルズ』は日本では80年代末~90年代中盤にかけてテレビアニメで放送されたこともあり今の20代後半~30代前半にはお馴染みの存在である。当時の少年たちは「人語を喋るカメたち」に胸をときめかしたものだ。
さて、未確認生物や妖怪の世界では『タートルズ』のように人間のような亀は昔から存在する。
日本では「和漢三才図会」という江戸時代の書物に「和尚魚」という名称で首の長いおじいさんのような顔をしたカメの姿が描かれている。人語を喋るかどうかは不明だが、いかにも漫画やアニメに出てきそうなビジュアルのため妖怪ファンの間での人気は高い。
また、海外では右の画像のように体中に人間のような毛の生えた亀の姿が報告されている。
これは1871年のサイエンス雑誌に掲載されたイラストとされており、文中では「多毛水亀(日本語直訳)」と名付けられている。
甲羅までびっしりと生え揃った体毛のような毛はもはや亀ではなく全く別の生き物おようであるが、実はこのような体に毛が生えてしまった水棲生物は数多く報告されており、アメリカでは未確認生物の情報として「毛の生えたマス」の目撃がある。
当初、このマスは湖が寒いため毛皮が発達したものとされていたが、後の研究によるとミズカビが魚の体に付着したものという報告がなされている。
多毛水亀もおそらくはミズカビや藻が甲羅に付着して毛のように見えているだけ、という可能性が高く、藻が甲羅中に生えた亀は「蓑亀(みのがめ)」と呼ばれ、長寿の印として大事に扱われている。我々のよく知る掛け軸などによく描かれる尾から毛が生えた亀も、甲羅に藻の生えた蓑亀の一種とされている。
かつてこのような体に毛の生えた亀は「見世物」として高値で取引されていた過去があり、平成以降も九州地方の湖などで見ることができるという。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)