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◇陸上男子100メートル「黒つむじ風のやう」
三島由紀夫が1964年の東京五輪を取材した際のノートの内容が、初めて明らかになった。山梨県山中湖村の三島由紀夫文学館に保管されていた。三島がナショナリズムに傾倒していった時期に当たるが、取材ノートには五輪を純粋にスポーツの祭典として満喫していた様子がうかがわれる。23日に発売される学術雑誌「三島由紀夫研究」に全文が掲載されるほか、24日から同館でノートを展示する。
取材ノートはB5判で、「Olympic」と手書きの表題が付けられている。同館が99年の開館に向けて三島の遺族から購入した、小説の創作ノートや草稿などの中にあったものの、精査されることなく保管され、2020年の東京五輪開催が決まったことを受け、昨春から本格的な読解が始まった。
三島は毎日新聞など3紙の依頼を受けて、開閉会式や陸上、バレーボールなどの競技を取材した。64年10月10日の開会式では、聖火台に向かう坂井義則選手の様子を「手を高く掲げて聖火台の横に立つ。少し笑つたようだ」などとメモし、翌日の毎日新聞で「聖火は、再び東洋と西洋を結ぶ火だともいえる」と論評した。
同12日に金メダルを獲得して表彰台に上った重量挙げの三宅義信選手の様子を「金メダルを上げてみんなに見せる/ショウマンシップ満点」と描写。同15日の陸上男子100メートルで米国のヘイズ選手が優勝した際には、「黒い肉の左から右への移動あるのみ、それは全く黒いつむじ風のやうにすぎた」と驚きを記している。
三島の研究者でノートの読解に当たった近畿大の佐藤秀明教授は「前年にノーベル賞候補に挙がるなど、三島が脂の乗り切った時期。一流のスポーツを観戦する楽しさを具体的につづり、生の感覚や臨場感が残されており非常に興味深い」と話している。【丸山進】