[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
◇仙台高裁 1審・仙台地裁判決を支持、遺族側の控訴棄却
東日本大震災の津波で亡くなった宮城県山元町立東保育所の鈴木将宏君(当時6歳)の遺族が、町を相手取り約3150万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審。仙台高裁は20日、請求を退けた1審・仙台地裁判決(2014年3月)を支持し、遺族側の控訴を棄却した。遺族で原告の鈴木あけみさん(49)は控訴審で高裁の和解勧告に応じず、ただ一人裁判を続けてきた。疑問がある限り無理に納得しないことが、息子の無念に向き合う道だと信じたからだ。「結果は覚悟の上のこと。全く後悔していません」。判決後に涙は無く、きっぱり前を向いた。
長男将宏君が生まれたのは39歳の時。間もなく離婚し、父親(86)を介護しながら1人で育てたせいか、パートナーのような存在だった。「うちはママしかいないから、あんまり頑張らないでね」。働く母親の顔を心配そうにのぞき込んだ。自宅には入学式に着るはずだった紺色のブレザーを飾り続けている。
震災の翌日。やっとたどり着いた保育所で、保育士に「将宏君がどこに行ったか分からない」と告げられた。隣町の遺体安置所で息子と対面したのはその2日後だった。
津波到達は地震の約1時間15分後。園庭には園児13人と、保育士ら大人14人がいた。なぜ避難しなかったのか。保育所長から「『現状待機』が役場の指示だった」と言われ、役場幹部には「未曽有の災害」と繰り返された。納得がいかず、2遺族で裁判を起こした。
1審は請求棄却。町に法的責任があるとは言えない−−。控訴審の和解協議でも裁判官たちの言葉からそんな雰囲気を感じ取った。昨年12月、共に提訴した1遺族は町が哀悼の意を示して300万円を支払う内容で和解した。敗訴すれば金銭補償もない。それでも「第三者の判断を仰ぎたい」と判決を求めた。
中西茂裁判長は控訴を棄却した一方で「少しでも早く、少しでも高い所に避難していれば被災を免れた可能性が高い。園児の生命が失われたのは悔やまれる」と異例の所感を述べた。鈴木さんは「少しは亡くなった子供たちのことを考えてもらえた」と感じた。上告するかは今後検討するという。【伊藤直孝】