「私がいくら説明しても分からない人は分からない」。西川公也農相が23日夕、取り囲む報道陣にこう告げて辞任した。補助金受給会社から違法性の疑いがある300万円の献金を受け、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の初交渉直前には利害関係のある砂糖業界から100万円の献金を受領。加えて23日の衆院予算委員会では、落選中に同じ補助金受給会社から勤務実態のないまま顧問料を受け取っていたことを明らかにした。数々の疑惑を晴らさぬまま閣僚がまた一人、辞任に追い込まれた。【杉本修作】
西川氏は23日の衆院予算委で、2009年8月の衆院選で落選した約1年後、栃木県鹿沼市の木材加工会社の顧問となり、顧問料を受領していたことを明らかにした。「落選し、非常に困った状況で経済的に大変な状況が長く続いた。そういう時に『困っているだろうから少しあなたの支援をしたい』との話を頂いた」と説明。質問者の後藤祐一衆院議員(民主)から時期や報酬、職務内容を問われると「精査して報告する」と答えるにとどまった。
だが、職務内容について再度聞かれ「(社長から)私は何も仕事は頼まない、あんたは再起に向かって一生懸命働け、と話された」と答弁。後藤氏が「ということは実質的な仕事をせずに収入を得たのか」とただし、大島理森委員長が「しっかり精査して報告すると(西川氏自身が)言っているのだから、そういうことを踏まえて答弁を」と西川氏の発言にクギを刺す場面もあった。
それでも西川氏は「社長からは、これまで地元のために尽くしてきたのだから支援してやるよと言われた。あなたは次の目標に向かって態勢をたて直してほしいと。(社長の)当社に対しては、時々社員らと意見交換してくれれば、何ら経営上の相談はしませんと言われておった。こういうことで何も経営上の問題について頼まれることはありませんでした」と重ねて答弁。その後、安倍晋三首相から「農相続投」の答弁は聞かれなかった。
西川氏が顧問に就いた木材加工会社は12年5月、林野庁の森林整備加速化・林業再生事業で7億円の補助金交付が決定。同年9月には西川氏が代表を務める「自民党栃木県第2選挙区支部」に300万円を献金した。政治資金規正法は、国の補助金を受けた企業に対し交付決定後1年間の献金を禁じており、交付決定の事実を認識していれば、受領した政治家側も同法違反に問われる可能性がある。西川氏はこれまで「(同社が)補助金を受けているとは知らなかった」と説明していた。民主党は24日、春の統一地方選の重点政策をまとめた。「現場目線の民主党か、上から目線のアベノミクスか」と自民党との違いを強調。安倍政権の経済政策を「金融緩和と大企業減税だけ」と批判し、対案として、中小企業の社会保険料負担軽減や農家向けの戸別所得補償制度などをアピールする。
2017年度末までに40万人分の保育所定員増(12年度比)や、同じ仕事なら非正規労働者にも同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金制度」の創設、非営利組織(NPO)が寄付を受けやすくする税制拡充なども盛り込んだ。【佐藤慶】