安倍晋三首相は12日の施政方針演説を通じて「改革」と計36回連呼し、改革姿勢をアピールした。さらに、改革を目指した幕末・明治の先人3人の言葉を随所にちりばめた。
まず明治維新で中心的な役割を果たした岩倉具視の「日本は小さい国かもしれないが、世界で活躍する国になることも決して困難でない」との言葉を引用。「この道を再び歩み出す時だ」と訴えた。農政改革では、日本画に新風を持ち込んだ岡倉天心の「変化こそ唯一の永遠である」との言葉を紹介。幕末の思想家、吉田松陰が行動の大切さを説いた「知と行は二つにして一つ」も引いて「国会に求められているのは批判の応酬ではなく行動だ」と野党をけん制した。
一方、外交・安全保障分野で「改革」と明言したのは「国連を改革する」の1カ所だけ。演説では、経済重視・軽武装路線を取った吉田茂元首相の「日本国民よ、自信を持て」との呼びかけも紹介しており、「経済最優先」の姿勢を改めて示したかったようだ。【念佛明奈】安倍晋三首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党代表質問が16日午後の衆院本会議で始まった。民主党の岡田克也代表は、首相の経済政策について「成長の果実をいかに分配するかとの視点が欠落している」と指摘し、「成長と格差是正を両立すべきだ」と批判。首相が成果を強調する農協改革を「重要なのは農家のための農政改革で、その道筋が全く見えない」と問いただした。
岡田氏は首相の経済政策を「短期的に株価を上げる政策に重点が置かれ、本質的な成長戦略には見るべき実績がない」と追及。労働者派遣法改正案などの労働法制見直しを「誤りだ」と批判した。非正規労働者の増加や貧困率上昇などを挙げた上で「日本で格差が拡大している事実を認めるか」と迫った。その上で所得税の最高税率引き上げなどの格差是正策を求めた。
農協改革では「いったいどのようにして自民党が(2014年)衆院選で公約した農業の所得倍増を実現するのか」と説明を求めた。集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制を巡り「今まで以上に自衛隊を海外で活用することが必要か」と見解をただした。戦後70年談話については村山談話で使われた「植民地支配」「侵略」などの文言を「極めて重要な意味を持つ」と指摘し、継承を求めた。
16日は岡田氏のほか、自民党の谷垣禎一幹事長、維新の党の江田憲司代表が質問に立つ。代表質問は衆院が17日まで、参院が17、18両日に行われる。【福岡静哉】