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ワタシの獲物 逃さない

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ワタシの獲物 逃さない

 ひざの上まで積もった新雪をラッセルしながら、カラフルな防寒着が進んでいく。

  • 息を殺し、ライフル銃を構える松浦さん。時間が止まったような静寂の中、緊張感が漂う
  •   

      足取りに合わせて肩の上で固く結んだ髪とライフル銃が揺れる。エゾシカを探しているのは松浦友紀子さん(39)と荒木奈津子さん(30)。北海道夕張市の山中を1時間ほど歩いたところで、2人の足が止まった。足跡だ。「どっちに行ってる?」。静かな雪山に漂う野生動物の気配に顔が引き締まった。

      狩猟は中高年の男の世界――。そんなイメージを覆す若い女性のハンターが増えている。狩猟免許を持っている女性は現在約2000人。野生鳥獣による農作物被害の増加で、個体数の調整や駆除などの必要性が高まる中、今や女性は次世代の育成に欠かせない存在だ。肉や皮、角、油などを活用しきる工夫や狩猟を通じた教育にも、女性の知恵が期待されている。

      梅野知子さん(29)は1年半前に鳥取市の空き家を借りて、「ハンター民宿BA―BAR」を始めた。自分で捕ったイノシシやシカを宿泊客と一緒に料理し、鍋を囲む。「女って地図が読めないでしょ? 山の中で困るのよ……」。体験談に笑いが起こる。「もっと狩猟に興味を持ってもらいたい」と話し、狩猟を通じた町おこしも目指している。

      「由葵(ゆうき)、バンビみたいだね。お洋服ができちゃうんじゃない?」。北海道七飯(ななえ)町の金森春菜さん(31)がエゾシカの毛皮を手にとった娘に語りかけた。狩猟免許を取って2年。昨夏から毛皮店の知り合いに指導を受けながら皮をなめし始めた。「子どもには、生き物の命を奪って食べることの意味を教えたい」と親子で料理をしたり、エゾシカの角でボタンやアクセサリーを作ったりしている。

      女性同士の横のつながりを強めようと、2年前に北海道に「TWIN」、昨秋には本州に「縁鹿(えにしか)小町」が発足。女性に合った道具の企画にも取り組む。女性ハンターの照準は、滋味たっぷりのごちそうと未来の豊かな自然にぴったり合っている。

      写真と文 冨田大介(昨年10月26日から1月18日に撮影)

    • 鳴き声や足跡など、エゾシカの気配を探って歩く松浦さん(右)と荒木さん。深いところではひざ上まで積もった雪が体力を奪う(北海道夕張市で)
      • 「ハンター民宿BA―BAR」で自慢の料理を振る舞う梅野さん(左)。今日のメニューはイノシシの焼き肉とシカのすき焼き風鍋だ(鳥取市で)
        • 知床の鳥獣保護区管理センターで働いていた経験からハンターになった金森さん。食べることへの感謝や、森や動物を取り巻く現状など、狩猟を通して娘の由葵ちゃんに伝えたいことがたくさんある(北海道七飯町で)
          • 「猟友会のベストって女性には大きすぎて、おしゃれじゃない……」。初めて開かれた狩猟サミットには男性に交じって全国から約50人の女性が参加した(岐阜県郡上市で)

              

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