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小児がん克服 働きたい

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小児がん克服 働きたい

 一面のハクサイ畑で、葉っぱをのぞき込んだ泉達朗さん(29)に、農家の樋口茂さん(69)が「それは開いちょる。もうよかばい」と声をかけた。

  • 樋口さん(右)からハクサイの収穫の仕方を教わる(左から)物部さんと泉さん。物部さんの体重は35キロほど。苗の育て方から作物のネット販売まで、働きながら学んでいる(福岡県うきは市の「うきはスマイルファーム」で)
  •   福岡県うきは市の「うきはスマイルファーム」。泉さんは小学6年の時に血液のがんである急性リンパ性白血病を発症したが完治、同じ病気を克服した物部安宣さん(33)とともに、樋口さんの農場で働いている。

      泉さんのような人たちは「小児がんサバイバー(克服者)」と呼ばれる。かつては治るのが困難だった小児がんは、今は約8割が完治する。しかし成長期の放射線治療や骨髄移植で、発育の遅れや障害が残るため、就労などの苦労は並大抵ではない。2人ともきゃしゃな体格だ。

      泉さんは高校中退後、工場やコンビニで働きながら大検に合格、3年前にスマイルファームにたどりついた。「引きこもっていた時期もあった。今は、しんどいことはしんどいけれど、楽しく充実している。結婚もしたいね」と話し、将来の独立を目指している。

      全国の小児がん経験者のうち、就労支援を必要としているのは推計約5000人。厚労省は難病患者への医療費助成を拡大する方針だが、「社会に復帰した元患者」へのバックアップは十分ではない。

      新潟市内に昨年4月に設立された自立支援施設「ハートリンク喫茶」で働く山田陽子さん(29)は生後6か月で急性リンパ性白血病を発症。放射線治療などで治ったが、成長期に身長が伸びず、体力面の不安も抱える。

      「重い物が持てない、棚に届かない」と言われて1か月で退職に追い込まれた会社もあるといい、履歴書の職歴欄には10以上の社名が並ぶ。中学3年で亡くした母の墓前に「見守っていてね」と語りかけながら働き口を探し、空き時間には医療事務の本を開いて資格取得のための勉強を続けている。

      子どものころ、大きな試練を乗り越えた「サバイバー」たち。その強いハートで、さらに続く険しい道を一歩一歩進んでいく。

      写真と文 青山謙太郎(昨年8月26日から1月6日に撮影)

    • 「お待たせいたしました」。凛(りん)とした声がカフェに響く。山田さんは「ここで働く経験を積んで、自立するステップにしたい」と笑顔を見せる(新潟市の「ハートリンク喫茶」で)
      • 職歴が書き込まれた山田さんの履歴書。1か月で退職に追い込まれた会社もあったが、あきらめずに職を探し、働き続ける
        • 子どもをがんで亡くした親たちが、小児がんのことを知ってほしいと写真展を各地で開く。6歳のまりちゃんを脳のがんで亡くした福永純恵さんは「まりが天国から、小児がんを克服した人たちを応援している」(新潟市で)
          • 10歳で白血病を発症、完治したものの、半身にまひが残る千家(せんげ)航陽さん(38)。「できることから少しずつ、なんとか職を得たい」とハローワークに通う(千葉市で)

              

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