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昨年7月、安倍政権は憲法解釈を変更して、集団的自衛権を行使できるように閣議決定した。
しかし、それだけで自衛隊が海外で戦えるわけではない。同時に、安全保障法制を整えなければならないのだ。
その準備をするのが自民と公明による「与党協議会」で、そこで話し合われたことが法案化され、国会に上程される。
だが、何やら様子が変だ。この与党協議、昨年の閣議決定からあまりに逸脱してきているのだ。安全保障に詳しい東京新聞の半田滋(はんだしげる)論説兼編集委員はこう言う。
「与党協議が終わると、自民、公明の担当者から記者たちにブリーフィングがあるんですが、その内容がおかしい。昨年7月の閣議決定の内容を明らかに飛び越えたキナ臭い論議がされているんです」
どういうことなのか? 半田氏に解説してもらった。
●アメリカ軍以外も守ろう!
閣議決定では、米軍が日本のために活動してくれている時は、自衛隊は米軍を守る、とされている。日米間には安全保障条約があるからだ。だが…。
「与党協議では『オーストラリア軍も自衛隊が守れるようにしたい』などの論議が交わされているのです。日豪間には安全保障条約はなく、守ったり、守られるという義務はありません。なのに、日本の自衛官が命がけでオーストラリア軍を守るというのは筋が通らない」(半田氏、以下同)
●後方支援も制約なし!
第一線の部隊に対して、武器・弾薬や燃料の補給や衛生、通信環境整備などの援助することを「後方支援」という。しかし、憲法9条で戦争を放棄している日本は、その後方支援が「(他国による)武力の行使との一体化」と見なされないよう、活動地域を「非戦闘地域」に限り、
(1)他国軍への武器・弾薬の提供はできない。
(2)発進準備中の航空機への給油・整備はできない。
としてきたが…。
「1999年に成立した『周辺事態法』でも、米軍が日本周辺で戦闘行為を行なう際に(1)と(2)は『自衛隊ができないこと』とされているし、昨年の閣議決定でもそこは『前提』と明記されています。ところが現在の与党協議では、その制約を解禁すべきだと自民が強硬に主張し、そうした方針で法制化されそうです」
●多国籍軍に参加したい!
昨年の閣議決定は、集団的自衛権を行使できる「新3要件」を定めている。
(1)日本や、密接な関係国への攻撃が発生している場合。
(2)武力行使しか方法がない場合。
(3)武力行使を最小限にとどめる場合。
「ところが、安倍首相は昨秋、この新3要件を満たせば、集団的自衛権の行使だけでなく、集団安全保障(国連加盟国が国連の決議に基づいて多国籍軍をつくり、制裁すること)にも参加可能と言い出しました。その具体例として首相が示すのが中東のホルムズ海峡での機雷除去です。
この首相発言を受け、自民党の中では自衛隊の多国籍軍参加が議論されています。安倍政権は新3要件を多国籍軍に自衛隊が参加できる“通行手形”にしようとしている。閣議決定では『多国籍軍への自衛隊参加』はまったく触れられていなかったのですが…」(半田氏)
昨年の閣議決定の内容を決めたのは安部首相のはず。それなのに、わずか1年足らずで自分で決めたことも守れないとは、正直、かなり不安だ。
■週刊プレイボーイ13号(3月16日発売)「首相~! 自分で決めた閣議決定ぐらい守ってくださ~い!」より(本誌では、さらにその強引ななし崩しぶりを詳細)