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THE PAGEが放送したTHE PAGE 生トーク「中東とどう向き合うか~イスラム国から日本外交まで~」(http://thepage.jp/detail/20150302-00000006-wordleaf?)。出演は、黒木英充・東京外国語大学教授、鈴木恵美・早稲田大学イスラーム地域研究機構招聘研究員、高橋和夫・放送大学教授。司会・進行は、萱野稔人・津田塾大学教授、春香クリスティーンさん。
以下、「中東が混迷を深める理由」について議論した部分の書き起こしをお届けします。
※討論の動画は本ページ内の動画プレイヤーでご覧頂けます。
人質事件の印象
[画像]萱野稔人・津田塾大学教授(左)と春香クリスティーン(右)
(以下、書き起こし)
春香クリスティーン:皆さんこんばんは。春香クリスティーンです。今日は、THE PAGE 生トーク、「中東とどう向き合うか~イスラム国から日本外交まで~」をお送ります。ゲストの皆さんをご紹介したいと思います。黒木英充、東京外国語大学教授。
黒木英充:こんばんは。
春香クリスティーン:鈴木恵美、早稲田大学イスラーム地域研究機構招聘研究員。
鈴木恵美:こんばんは。
春香クリスティーン:高橋和夫、放送大学教授。
高橋和夫:どうぞよろしく。
春香クリスティーン:そして、司会は萱野稔人、津田塾大学教授です。
萱野稔人:こんばんは。
春香クリスティーン:お願いします。さて、番組ではご覧の皆さまから、番組をご覧の皆さまからTwitter、そしてメール、Facebookのコメントなどで質問と意見を募集しています。詳しくはご覧のページの説明をご覧ください。そしれでは、萱野さん、お願いします。
萱野:よろしくお願いします。春香さんは「THE PAGE 生トーク」初めてですね。
春香クリスティーン:はい、初めてです。
萱野:ちょっと頑張っていきましょう。
春香クリスティーン:はい。
萱野:はい。今日は中東問題がテーマなんですよ。ちょっと重いテーマなんですけれども、中東問題、最近ものすごく日本でも話題になってますけど、春香さんはどんな印象を持ってます?
春香クリスティーン:そうですね。本当に日本でも話されるようになったのって、本当に今年に入ってからとか去年辺りからっていう本当に最近だなっていう感じはするんですけど、物心ついたことから、もう非常にやっかいな状態になっていて、で、それがどんどんどんどん複雑になってきていて、いったいどのようなことが今現在起きているのかっていうのは今非常に気になりますね。
萱野:そうですね。距離も遠いですから、なかなか何が起こってるのか分かりにくい。そんな中で人質事件が起きた。これ国民的な関心を中東に向けたわけですけれど、まずこの点からですね。人質事件に関してどんな印象を持ったかということを今日のゲストのお3方に聞いていきたいと思うんですけど、まず鈴木さん。
鈴木:はい。
萱野:人質事件に関して、どんな印象を持たれました?
鈴木:そうですね。やはり、一言で申し上げれば、イスラム国の問題っていうのはしばらく続くであろうと思われますから、日本政府および日本国民は大変な、現実的な国際問題に直面、もうせざるを得ない時代になったなと。新しい時代って言うとちょっと大げさかもしれませんけども、大変な時代に日本は直面するようになったなというふうに思いました。
萱野:あの事件によって、中東と日本の関係ががらっと変わった可能性もあるということですね。
鈴木:そうですね。はい。より現実的な問題として、対峙しなくてはいけなくなったというふうに思いました。
萱野:黒木さんいかがですか。
黒木:はい。あの2人の映像が最初に流れたときですね。やはり非常に深刻な、と言いましょうか。それまでにもイラク人とかシリア人が同じような形でずっとたくさん、もう本当にたくさんの人々がああいう形で命を失ってきた、殺されてきたのを見ていたわけで、そういう意味ではついに日本人がっていう感じですよね。それと、今、鈴木さんおっしゃったように、これによって日本社会自体が変質していくんじゃないかっていうような。
萱野:ああ、日本社会自体がですね。
黒木:ええ。そういう予感と言いましょうか、それを感じました。
萱野:なるほど。どんなふうに変わっていくのかっていうのは、またのちほど深く聞いていきたいと思いますけれども、日本社会自身も変わっていくかもしれないっていうことですよね。高橋さん、いかがでした。あの人質事件、今から総括すると。
高橋:なんか一番最初に思ったのは、あのオレンジの服を着て出てきて、無事に帰ってきた人はほとんどいないんですよね。だから、非常に暗い予感を受けたんですけど、テレビではそんなに暗いお話もできないっていうのが少しつらかったですね。それから、もう1つは自己責任か政府の責任か、いろんな議論があったんですけど、1つはやっぱり日本の大手メディアが自分のところの社員は出さなくて、フリーの人たちが危険なところに行って映像を撮ってきて、それを流すというシステムで動いてるんですよね。ですから、なんかメディアの人たちもその自分たちの在り方をちょっと考えてほしいなっていうのが、大手メディアでは言えない自分の本音でしたね。
萱野:なかなか、かなりこの問題、人質問題ではテレビ出られてましたけど、言えない問題もかなりあったということですよね。
高橋:そうですね。
萱野:今日はその言えない問題、言えないことをたくさん言ってほしいですけどね。
高橋:はい。
萱野:ネットならではというか、ネットだからこそ言えるっていうこともあると思いますので、よろしくお願いします。
高橋:はい。
春香クリスティーン:さあ、それではまず、最初のテーマに進みたいと思います。
宗派対立の激化
萱野:はい。最初のテーマなんですけれども、今イスラム国がシリア、イラクの領土の中で勢力を今時点では拡大してると言えないかもしれませんけど、大きな勢力を今、まだ保っているということで、先日はリビアでも人質を大量に殺したという映像がアップされてるということで、中東がまた新しい混迷に陥っているんではないかなと思うんですけれども、今の中東の混迷の原因ってそもそもなんなんですか。ここからお伺いしたいんですけれども、まず黒木さん。ちょうど今日、今朝ですよね。中東から戻られてきたの。
黒木:はい。
萱野:どちらに行かれてたんですか。
黒木:はい。レバノンのベイルートに行ってました。
萱野:レバノンですか。レバノンと言えば、イスラエルの北側にあって。
黒木:そうですね。
萱野:ヒズボラを抱えているというとこですよね。
黒木:そうです。
萱野:いかがでした。
黒木:1週間ぐらいの滞在だったんですが、地中海に面してまして、もうこの季節になると春爛漫でして、気候はいいし、という感じなんですが。
萱野:本来なら。
黒木:しかし、実際良かったんですが、社会の亀裂と言いましょうか、すぐ隣シリアで、山を1つ、2つ超えるともう戦闘があるわけなんですね。車ですと順調にいけば小1時間ぐらいで行ってしまうような距離なわけです。そういう地域で、しかもレバノンの国軍の兵士自体もまだ人質にそれこそ取られている。で、その家族が私の、うちの大学の研究所がベイルートに現地拠点を持っているんですが、そのすぐ近くに国連関係の建物がありまして、そこで国連に訴えるっていうんで、その家族たちがテントを張って座り込みをしてるんですね。
萱野:人質に取られた人たちの家族。
黒木:兵士の家族たちがですね。それで、それはヌスラ戦線っていうアルカイダ系の民兵組織に、シリアの反政府組織に拘束されてるわけですが、それで、そういう家族たちがいるっていうこともあって、周りが鉄条網で封鎖されたりしまして、うちの事務所の周りもですね。それでそういう、町のそれ、中心部なんですけれどもそういう状況と、それからレバノンは今9カ月にわたってまだ大統領が決められないんですね。空位なわけです。で、そういう要するにこれは中でいろんな駆け引きが続いてるんですけれども、その中でだんだんと社会の基盤が溶けていくんじゃないかっていうような恐れですね。そういうものが人々の間にたまって、充満しているっていう感じがありましたね。
萱野:なるほど。今、例えばイスラム国が支配を広げてる地域っていうのはイラク、それからシリア、あとリビアもこの前ありましたけれども、どこも例えばイラクであれば、政府がなかなか統治を貫徹できない、非常に不安定になっている、で、シリアは内戦、リビアはそこも事実上の内戦になってる。政情不安定なところでイスラム国が勢力を伸ばしているとこがあると思うんですけれども、レバノンもそういった雰囲気というか、政情不安定がまたいろんな反政府組織だとか、テロ組織を生むような雰囲気っていうのがあるんですか。
黒木:地方、地方によって小さい国なんですけれども、実際に一部、旗を、黒い旗を掲げて写真を撮ったりするような、そういうところもあるわけなんですね。ですので、いろいろ火種はあちこちにあるという感じですね。でも、レバノンの人たちは総じてそういったものには非常に強い拒否反応を持ってまして、そういう点では今すぐどうなるっていう、そういう心配はないと思うんですが、しかし、やっぱり人々に不安はあるっていうことですね。
萱野:なるほど。もうちょっと聞きたいんですけれども、その政情不安になっている中東全体。比較的安定しているところもあれば、不安定なところもあると思いますけれども、要因って一言で言えばなんだと思います?
黒木:これは話すと長くなりますが、いろんな形で、今で言うとスンニ派対シーア派っていうこの宗派対立ですね。これが中東全域を覆い尽くしつつあるんですね。その一環としてさまざまな現象が起こっているわけです。
萱野:宗派対立が一番やっぱり根深いっていうことですね。
黒木:そうですね。最初は宗派対立じゃなかったかもしれない。例えばシリアの内戦はそうなんですけれども、だんだんそっちに流れが傾いていって、社会が2つに分極化していくっていう、そういう現象ですね。
アラブの春の影響
萱野:なるほど。鈴木さんはどのように見られてますか。今の中東の混迷の原因というのは。
鈴木:原因は本当に1つではなくて、いくつもあると思うんですけれども、1つには2011年に始まった、いわゆるアラブの春、アラブ動乱後のそのときに崩壊してしまった秩序ですね。主に共和制を取る国においてアラブ動乱があったわけですけども、その後の秩序が崩壊して、新しい新秩序っていうのを作っていければいいんですけれども、そこに至らないと。新しい体制を模索する以前の、まだ崩壊しているような今、状況にたぶんあるんだと思うんですね。ですので、しばらくはこのような状態でいる、続くと。で、そういう過程でシーア派対スンナ派であるとか、若者のフラストレーションが爆発するだとか、いろんな次元で、さまざまなレベルで複合的に問題が今、噴出しているんだと思いますね。
萱野:今のこの混乱の一番近いところでの出来事っていうのを考えるなら、2011年のアラブの春だろうというふうに考えていいわけですか。
鈴木:そうですね。はい。
萱野:なるほど。そこでどこの国も長期政権、独裁政権でもあったわけですけども、崩壊しましたよね。それが結局、秩序のふたを取っちゃうというような、そういうようなことがあって、今のような混乱に陥っていったっていうふうに考えればいいですか。
鈴木:そうですね。はい。独裁者、決していいというわけではないですけれども、ああいう独裁者、あるいは権威主義体制っていうのは国のいろんな不満を押し込める、いいとは言えないですけども、少なくとも多くの人が今のように亡くなることはなかったわけですよね。みんな我慢していたと。そのたがが外れてしまった状態なんだと思いますね、今。
萱野:なるほど。リビアなんてもうそうですよね。
鈴木:そうですね。まさに。
萱野:カダフィ政権倒そう、そこではNATOも空爆しましたからね。カダフィ政権倒すために。で、倒れたはいいけれども、結局、もっと最悪の事態になってしまったのかもしれないということですよね。
鈴木:そうですね。いっぱい武器をためこんでいた国家ですから、その武器を管理する人、ない状態でつぶしてしまったというところに、私の専門はエジプトですけども、エジプト、今非常に大混乱ですけれども、その一因はお隣の国、リビアから大量の武器弾薬が入り込んでしまっているっていうところですね。
イラク戦争とは
萱野:なるほど。高橋さん、どのようにご覧になってますか、今の中東の混乱。
高橋:私もお2人の意見に賛成なんですけど、新たなポイントを1つ指し示すとすると、やはりイスラム国、今、イラクとシリアを支配してますよね、一部をね。で、イラクでサダム・フセイン体制をアメリカが無理やり倒したと、そのつけが回ってきているというのは指摘できると思いますよね。ですから、リビアもそうですし、エジプトもそうでしたけど、独裁体制が強い間は混乱はなかったわけですよね。その平和がいいのかっていうのはまた別問題ですけど、安定してたわけですよね。それを無理やりに倒してしまって。
私はよく言うのはやっぱり、イラクっていうのはまとまりの悪い国で、スンニ派とか、シーア派とかクルドとかアラブとか。だから、われわれが持ってるこの台本みたいなもんで、サダム・フセイン体制っていうのはこのホチキスみたいな人だったわけですよ。それをアメリカが無理やり引っぱがして、中東は風が強いから今、ばらばらばらとなろうとしているという、そういう要因があると思いますね。ですから、1つの秩序が壊れて、まだ新しい秩序が出来上がっていない。そういう時代だと思いますね。
萱野:なるほど。今の秩序の混乱の原因をもっとさかのぼると、やはりイラク戦争まで行き着くんだということですよね。
高橋:そうですね。
萱野:で、アメリカ自身がその秩序のふたというか、このホチキスを取ってしまったというところが原因だということですよね。
高橋:そうですね。だから、イラクは難しいから、そのあとが難しいからって専門家はみんな思ったんですけどね。いや、簡単だよ、と思った人たちが戦争を始めて。
萱野:そうですね。
高橋:ほら、見たことかと言ってみても、イラクの混乱はもう止まらないですからね。
萱野:なるほど。あれが最初の秩序崩壊の序章というか、きっかけになったということですね。お伺いしたいんですけれども、イラク戦争からアラブの春のまで、だいたい8年ぐらい期間がありますよね。2003年にイラク戦争が始まって、アラブの春が2011年。何か関係があるんですか。イラク戦争があったからアラブの春が起きたとか、イラク戦争によってアメリカがイラクの秩序をがっと転覆というか、倒してしまったが故に、ほかの地域まで秩序の揺らぎが波及したっていうことは言えるんでしょうか。
高橋:イラクに関して、ですから、おそらくそのイラクが混乱したということと、ほかの国々でアラブの春が起こったということはたぶん直接な関係はないと思うんですね。やはり、エジプトはエジプトでやっぱり長年の矛盾というのが、イエメンもそうですし、いつ爆発するだろうかという感覚でずっとわれわれ見守って、で、それがたまたま2011年だったということですね。ですから、人口問題、失業問題、格差の問題、いろんな問題があって、そこで、たまたま2011年だったというふうに見てますね。
萱野:なるほど。これ、中東をどう見たらいいのかっていうことにもつながると思うんですけれども、2011年のアラブの春って何が原因で起こったんですか、鈴木さん。いろんな要因があると思いますけど、当時は日本ではインターネットだとかソーシャルネットワークとかいろいろ言われたと思うんですけれども、もっと別のところに原因があるような気もするんですよ。アラブの春の原因、なんなんですかね。
鈴木:私の個人的な意見ですけれども、独裁体制を倒せっていうことを言いましたけれども、あの一連の革命というか動乱というのは、やはり反汚職運動、反汚職革命だったと思うんですね。で、その汚職っていうのは本当に私たちが思うような悪いビジネスマンとか、政治家と癒着したビジネスマンが不当に利益を得るだとか、そういう金銭的な汚職もそうですけれども、縁故主義ですよね。コネのあるいいとこのお坊ちゃん、お嬢ちゃんばかりが就職できたりとか、そういう広い意味での腐敗、汚職っていうのがもう社会の末端にまで浸透していたので、それに対してこれからの将来、生きなきゃいけない若い世代が立ち上がったということだと思いますね。で、その腐敗、汚職の象徴が大統領だったっていうことだと思いますね。非常に反汚職色が強いのがアラブの春だったと思います。
萱野:なるほど。今の話、よく分かりやすかったんですけども、ということは、縁故主義が蔓延してるということは、そういう社会なんだというふうにアラブ社会をわれわれ、見ていいということですか。根強い。
鈴木:ええ。少なくとも2011年まではかなりそういう傾向はあったと思うんですね。で、今も残念なことに、今もあまり本質的には変わってはいないと思います。ただ、それに対して「ノー」を言う若い世代が今ちょっとがつっとやられてしまってますけども、今少しおとなしいですけどれども、若い世代が確実に育ってきているので、10年後、20年後はまた別な形で、いい作用っていうか、汚職は駄目だっていうような、そういう空気っていうのがまた出てくるかもしれないですね。
シリアの汚職問題
萱野:次、例えば、シリアで政府軍の戦いと反政府軍。イスラム国もあればイスラム戦線もあるんですけど、彼らも反汚職として戦ってるんですか、もともとは。
黒木:汚職の問題はシリアも汚職でしたし、今の要するに縁故主義ですね。それはもうありましたよね。で、ただ、始まりは治安機関の暴力ですね。それに対する講義ですよね。ですから、エジプトなりチュニジアなりで人が町に出て、デモができるっていう、その感じを、感覚を持った人たちが、要するにそれまでのシリアでは考えられなかったことだったんですが、この暴力はないだろうと、子供を拷問したっていうですね。で、それに対する、だから、そもそもの最初はその拷問をした治安機関の人間をちゃんと処罰しろということが始まりだったわけですね。
ですから、その背後にはその都市の問題とか、人口、若者の問題とか、そこが結局、縁故主義につながっていくとか、腐敗の問題も含めてずっとそこに収斂していって、だんだんあとは外から、先ほど鈴木さんがリビアの武器がエジプトに入ってるっていう話がありましたけども、リビアの武器はシリアにもたくさん入って、人もたくさん来ましたしね。そういう形でいろんな、お金が流れ、武器が流れていったっていうことですよね。
萱野:春香さん、なんか質問ありますか。今の話で聞きたいことっていうのは。
春香クリスティーン:そうですね。なかなか広く、いろいろな議論がありましたけど。
中東の国境意識
萱野:そうですよね。いや、僕聞いててもうちょっと聞きたいなと思ったのは、リビアの武器が例えば、中東中に広がるじゃないですか。そんな簡単に国境を越えられるのかな。超えられるのかな、あの地域っていうのは、そんなに簡単に国境を越えることって簡単なのかっていう疑問なんですけど、実際どうなんですか。
高橋:やっぱり国の力が弱いですよね。だから、政府はある意味、税金を集める力もないし、一応、国境は管理してるんですけどね、長い国境線で、管理してないことは砂漠で渡っちゃえば簡単ですし、地中海なんて船で自由には行き来できないんですけど、自由に行き来してますよね、勝手にね。ですから、日本人は割と国境っていうのがびしっとあって、それをなんか守ってるという雰囲気があるんですけど、たぶん中東の人は、世界のグローバルスタンダードは、自分たちのほうが昔から勝手に動いてて、国境のほうからあとから来て失礼なやつらだなと。なんでパスポートなんて持たないといけないんだっていう感情のほうがたぶん、素直だと思いますね。
萱野:中東の人にはかなりその意識、強いですか。
高橋:そうですね。かつては1つの国でしたし、言葉も通じますし、そういう意味ではそれは非常に中東的だって思うかもしれないですけど、アメリカに行けば非合法で住んでるヒスパニックの人が何百万人といて、それは当たり前のことですよね。ですから、ある意味、日本が異常なのかもしれないと私は思うんですけどね。
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※書き起こしは、次回「第2部(http://thepage.jp/detail/20150315-00000002-wordleafv?)」に続きます。
■プロフィール
黒木英充(くろき ひでみつ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。専門は中東地域研究、東アラブ近代史。1990年代に調査のためシリアに長期滞在、2006年以降はベイルートに設置した同研究所海外研究拠点長として頻繁にレバノンに渡航。主な著書に『シリア・レバノンを知るための64章』(編著、明石書店)など。
鈴木恵美(すずき えみ)
早稲田大学イスラーム地域研究機構招聘研究員。専門は中東地域研究、近現代エジプト政治史。著書に『エジプト革命』中公新書、編著に『現代エジプトを知るための60章』、他、共著多数。
高橋和夫(たかはし かずお)
評論家/国際政治学者/放送大学教授(中東研究、国際政治)。大阪外国語大学ペルシャ語科卒。米コロンビア大学大学院国際関係論修士課程修了。クウェート大学客員研究員などを経て現職。著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『アメリカとパレスチナ問題』(角川書店)など多数。
萱野稔人(かやの としひと)
1970年生まれ。哲学者。津田塾大学教授。パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。博士(哲学)。哲学に軸足を置きながら現代社会の問題を幅広く論じる。現在、朝日新聞社「未来への発想委員会」委員、朝日新聞書評委員、衆議院選挙制度に関する調査会委員などを務める。『国家とはなにか』(以文社)、『ナショナリズムは悪なのか』(NHK出版新書)他著書多数。
春香クリスティーン
1992年スイス連邦チューリッヒ市生まれ。父は日本人、母はスイス人のハーフ。日本語、英語、ドイツ語、フランス語を操る。2008年に単身来日し、タレント活動を開始。日本政治に強い関心をもち、週に数回、永田町で国会論戦を見学することも。趣味は国会議員の追っかけ、国会議員カルタ制作。テレビ番組のコメンテーターなどを務めるほか、新聞、雑誌への寄稿も多数。著書に、『永田町大好き! 春香クリスティーンのおもしろい政治ジャパン』(マガジンハウス)がある。
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[写真]どこか懐かしさを感じるパッケージに包まれた「生しるこサンド」。つぶあんとこしあんの2種類
愛知みやげとして知られる「しるこサンド」を製造販売する松永製菓(同県小牧市)が、直営店「しるこサンドの森 あん・びすきゅい」をオープンさせた。その直営店で販売される目玉商品のビスケット菓子「生しるこサンド」が早くもSNSなどネット上で話題となっているが、いったいどのような商品なのだろうか?
小牧市で製造、1966年販売開始
愛知県をはじめとした東海エリアで老若男女に長く愛されている「しるこサンド」。愛知出身のタレントやアイドルなどがテレビ番組や雑誌、SNSなどで紹介したことで近年全国に知名度と人気が広がったビスケット菓子だ。
今や愛知の定番みやげのひとつとも言え、名古屋駅などのみやげ店はもちろん、全国のスーパーマーケットなどでも購入することができるが、愛知県小牧市で製造されていることはご存じだろうか。
このしるこサンドは、同市に本社工場を構える松永製菓が1966年に販売を開始した看板商品。北海道産あずきとりんごジャム、はちみつなどを独自のブレンドで練り上げた特製のあんをビスケット生地ではさみ焼き上げた三層構造の菓子で、昔から変わらない味も人気の秘訣だという。
アイデアの集大成・新商品「生しるこサンド」
話題の生しるこサンドは、構想から10数年の時を重ね完成したという新食感の半生菓子で、直営店だけの販売。つぶあん(160円)とこしあん(140円)の2種類があり、北海道産のしゅまりあずきが入ったクリームとしっとりしたクッキーとの相性が絶妙だ。つぶあんにはこのクリームとふっくらと炊き上げられた、かのこ豆がサンドされている。
同社コンプライアンス室チーフの藤田さんによると、「生しるこサンドは、長年あたためてきたアイデアの集大成といえる自信作です。
この直営店でしか手に入らない商品なので、ぜひ足を運んでもらいたいです。ここだけの限定商品が他にもあるので楽しんでもらえると思いますよ」という。
直営店で楽しめる「ビスケットバイキング」
[写真]買い物客で混雑する店内。写真の右奥がカフェスペースとなっている
直営店では、生しるこサンドや限定商品が買えるほか、併設された飲食スペースでは、しるこサンドをはじめとした20種類のビスケットのうち、常時12種類が食べ放題となる「ビスケットバイキング」を開始。休日などには待ち時間も発生するほどの人気ぶりだ。
バイキングを楽しんでいた同県安城市から訪れたという28歳の女性は、「テレビの情報番組で知りました。しるこサンドのファンなのでさっそく家族で来ました」と話した。バイキングはフリードリンク付き60分間380円(4月1日以降は価格未定)。
地図URL:http://map.yahoo.co.jp/maps?lat=35.29318430000001&lon=136.89652169999994&z=15
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[写真]展覧会会場。マチオモイ帖が地域別に展示され、自由に手に取って鑑賞できる
ふるさとや青春時代を過ごした大切なまちを、全国のクリエイターが冊子や映像で伝える「わたしのマチオモイ帖」を集めた展覧会が、大阪で開かれている。2011年の第1号刊行以来、今年は作品が千冊を超えた。既存の地域情報誌には盛り込まれない私的な体験、詩的なつぶやきに、ほろ苦い思い出も。体裁はシンプルでも、一冊の詩集や一篇の短編小説にも通じる意欲作が少なくない。
「生まれそうになったら黄色い旗をふる」
[写真]マチオモイ帖活動を推進する清水柾行さんと村上美香さん=大阪市北区扇町2のメビック扇町
この展覧会は「わたしのマチオモイ帖 日本中がマチオモイ2015」大阪展。大阪市が運営するクリエイター支援施設「メビック扇町」(大阪市北区扇町)を会場に、大阪市、メビック扇町、「わたしのマチオモイ帖制作委員会」の共催で開催中だ。
マチオモイ帖は、ふるさとのまち、学生時代を過ごしたまち、今暮らしているまちなど、自身にとって大切なまちを、クリエイターたちが冊子や映像にまとめるもの。編集、文章、写真などの大半をひとりでこなす自主制作だ。
「生まれそうになったらみかんの丘にむかって黄色い旗をふる」――印象的な書き出しで始まるのは、「わたしのマチオモイ帖」第1号の「しげい帖」。大阪市のコピーライター村上美香さんが生まれ育った広島県尾道市因島重井町への思いをかたちにした。
瀬戸内海に浮かぶ因島で、実家は農家を営む。村上さんが生まれる際、臨月を迎える22歳の母と、心配しながらも畑仕事を休めない26歳の父が、ある取り決めを交わす。
『陣痛が来たら、黄色い旗を、みかん山に向かって振ります』『旗が見えたらすぐに駆け下りるから安心しろ』。若い父母の約束に守られて、村上さんは重井町の一員になった。一般的な地域情報誌とは一線を画し、個人の思いを重視する。手作りの「黄色い旗」は、「しげい帖」の編集方針を伝えるシンボルフラッグの役割も果たす。
「しげい帖」は手のひらサイズで、11年4月に完成し、重井町の町民たちに配布された。東日本大震災直後、クリエイターとして社会に何ができるかと自問していた村上さん。自分なりに導き出したひとつの答えだった。
「まちおこしは一朝一夕にはできませんが、まちを思うことはだれでも、今すぐでも始められます。人生を通じて社会から与えられたことを思い出すことも大切なことではないかとの考えから、『マチオモイ帖』と名付けました」(村上さん)
ゆるやかな連携とさりげなく人をつなぐ力
[写真]個性あふれるマチオモイ帖作品集の一部
同年6月開催の大きな展覧会に向け、マチオモイ帖グループとしての出展作品を募集したところ、34点が集まった。村上さんの第1号刊行からわずか2カ月しか準備期間なかったが、大阪のクリエイターたちがすばやく反応した。
翌12年からマチオモイ帖独自の展覧会を大阪以外でも開いたところ、延べ作品数は340点、650点、800点と、年を追うごとに増加。今年はついに1033点に達し、地域も北海道から沖縄までを網羅する。大阪生まれのマチオモイ帖は4年間で、新しい表現活動、全国的なメディア・ネットワーク運動に成長した。
「わたしのマチオモイ帖制作委員会」の中核メンバーで、アートディレクターの清水柾行さんは「大阪のクリエイターはお山の大将的な独自性が強い半面、日ごろからゆるやかな連携でつながっており、いざとなると力を合わせる」と分析。「マチオモイ帖が全国的な支持を集めることができたのは、大阪人のさりげなく人をつなぐ力を、社会が必要としているからではないか」と振り返る。
祖父のスケッチブックや未来へのメッセージ
千点を超えるマチオモイ帖。体裁、内容とも千差万別だが、いずれもクリエイターの作品だけに、クオリティは高い。
「八田西町帖」(大阪府堺市・池田正嗣作品)は、失ったふるさとを再訪するほろ苦いセンチメンタルジャーニー。父親の家業の不振でわが家からの退去を余儀なくされた著者が、久しぶりにふるさとを訪ねる。お世話になったアルバイト先の人たちや兄弟で通った学習塾の女性教師らが、突然の訪問にもかかわらず温かく出迎えてくれた。
「唐津帖」(佐賀県・藤本愛作品)は、祖父が遺したスケッチブックに描かれた唐津の情景を訪ね歩く。祖父の波乱万丈の人生が、スケッチの余白に浮かび上がってくるようなミステリアスな展開だ。鉄筆を握るガリ版図案家だった祖父と、グラフィックデザインの道に進んだ孫。著者は隔世遺伝で同じ仕事に向き合う家族の不思議さをかみしめる。
「ホリエ帖」(大阪市・Rica Morita作品)は、大阪市西区堀江で暮らし始めた母からわが子に贈る未来への一冊。「このマチがキミのステキなフルサトになりますように」などの愛情あふれるメッセージが、布製の手作りページに散りばめられている。
地元中学生とマチオモイ帖第2号を共同制作
[写真]展覧会会場入り口
歳月を重ねてマチオモイ帖の活動が広がってきた。村上さんは「広島にこれだけ多くのクリエイターがいるのかと驚く」ほど、同じフィールドで奮戦する仲間たちと知り合った。
大阪から帰省する際、これまでは新幹線などを乗り継いで島へ急ぐだけだったが、今は島へ向かう前に尾道市内のカフェで小休止。「お帰りなさい」と待ち受けてくれる友人たちとの会話が弾む。
地元の出身中学の授業をサポート。生徒たちと共同で「しげい帖」第2号を刊行する島思い部プロジェクトが立ち上がったという。
清水さんは「マチオモイ帖の領域を広げ、市民がまちへの思いを表現する出版活動を、クリエイターが手伝う仕組みを醸成していきたい」と意気込む。
ガイドブックにも載っていない、小さなまちの埋もれかけていた物語。しかし、編集作業を通じて気になるまちと改めて向き合うことで、クリエイターたちの中で、何かが変わったような気配が、誌面から伝わってくる。村上さんに続き、読者それぞれの「黄色い旗」を探してみたい。
会期は29日まで。入場無料。午前11時~午後9時(土日祝日は午後7時まで)、会期中無休。大阪展以降、全国で順次開催予定。詳しくはメビック扇町の公式サイトで。
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)
地図URL:http://map.yahoo.co.jp/maps?lat=34.70477226&lon=135.51021702&z=18
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[写真]小中学生から募集した真新しいヘッドマークで出発する北しなの線の妙高高原行き一番電車=長野駅
北陸新幹線が14日、金沢まで延伸開業しました。待望の新幹線に期待が集まる一方、延伸区間の並行在来線の第三セクターへの移管や新幹線と航空路線の競合など、地域・広域交通の再編成の動きが波紋を広げています。
金沢延伸により、長野、新潟、富山、石川各県にわたるJRの在来線は地元自治体などで構成する第三セクター4社に経営が移されます。これは、新幹線と在来線の両方を経営することによる負担を軽減させるための従来からの政府方針です。各社はそれぞれの地域の支援策など課題を抱え、これからが正念場です。
少ない乗客とのしかかる除雪費用
[図表]並行在来線の路線図
長野新幹線開業時(1997年)にJR信越本線・軽井沢~篠ノ井間(篠ノ井~長野間はJR篠ノ井線に乗り入れ)を引き継いでいだ第三セクター「しなの鉄道株式会社」は、北陸新幹線開業に伴い、14日からJR信越本線の長野駅~妙高高原駅間37.3キロメートルを「北しなの線」として営業区間に加え運行開始です。
新潟県の同「えちごトキめき鉄道株式会社」もJR東日本の信越本線・妙高高原駅~直江津駅間とJR西日本の北陸本線・直江津駅~市振駅間の2路線合わせて98.3キロメートルを運行。富山県の「あいの風とやま鉄道株式会社」や石川県の「IRいしかわ鉄道株式会社」も県境を挟んで北陸本線区間の運行を担います。
これら並行在来線は短区間であることや、もともと経営が苦しい区間だったことなどから、将来は楽観できません。山間部の積雪地帯の線区を引き継いだ場合は、乗降客が少ない上に除雪費用などの負担も大きいのです。このため長野駅~妙高高原駅間の場合は、県や沿線自治体の財政支援のほか、広域的な貨物輸送機能を確保する狙いの国の補助金、年間4億円を見込み、赤字転落を避けることになりました。
[写真]北しなの線開業に取り組む「しなの鉄道」(長野県上田市)
しなの鉄道「北しなの線開業準備室」の高野昭次室長は「かつて経営危機に陥った経験から万全の態勢で臨みます。利用者にご迷惑はかけません」と強調します。危機の後、これまで経営努力で10期近く黒字を出してきましたが、沿線自治体や国の支援が大きな支えになっているため、経営見通しに楽観は許されない状態は続きます。
このため第三セクターの鉄道は料金がこれまでより高くなる傾向があり、利用者増を図りたい三セクにとってはつらい板挟み。厳しい経営努力や地元自治体などの支援が今後の大きな課題です。
三セク移行で北陸を結ぶ特急が廃止
また、三セク移行に伴い、新潟と金沢など北陸を結ぶ従来の特急などの廃止も決まり、在来線の使い勝手が変わってきます。新装の長野駅ビルがオープンした3月7日、大阪から鉄道写真を撮りに長野を訪れたという男子学生(20)は「大阪から見ると、金沢までは在来線特急があるから便利だが、せっかく新幹線ができても特急の廃止などで金沢以北から新潟、東北への利便性が見えてこなくなったのが残念」と話していました。
一方、複数県、首都圏にまたがる広域交通として、早くも新幹線と航空各社の競合が激化。空路の料金設定などが焦点になりそうです。空陸2つの高速交通に、利用者の選択の行方は? 7日に長野駅ビルを訪れた千葉県の主婦(62)の場合は「金沢に単身赴任している夫を訪ねるときは飛行機で羽田から小松空港に行き、バスで金沢に向かっていたが、北陸新幹線なら金沢駅着でとても楽。これからは新幹線にします」と話していました。
金沢延伸が実現した北陸新幹線は、当初予定を前倒しして、2022年度末に福井県敦賀市まで開業する方針が決まっています。
(高越良一/ライター)
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[写真]長野駅で金沢行き一番列車「はくたか591号」の発車合図をする加藤久雄長野市長(左)と大峽和志長野駅長
北陸新幹線の長野~金沢延伸区間が14日、開業しました。東京~金沢間は最高速度260キロ、2時間28分で、1時間20分余の短縮。首都圏と長野、上越、北陸、関西圏を結ぶ高速・幹線鉄道網の整備が一段と進みました。情報、人の交流促進や観光の地域間競争・連携の拡大で関係地域の活性化が期待されています。
金沢延伸の基点となるJR長野駅ではこの日午前6時前から出発式があり、6時11分発金沢行き「はくたか591号」をテープカットや記念撮影で祝いました。
東京~金沢が最短2時間28分
[写真]阿部守一長野県知事らが金沢延伸へテープカット
国交省の本田勝事務次官や阿部守一長野県知事らが「延伸により、沿線・関係地域の発展を期待したい」「北陸がいよいよ“近くて近い”関係になる。北しなの線をJRから引き継ぐ第三セクターのしなの鉄道とともに地域を盛り上げていきたい」とあいさつ。反対側ホームなどに集まった市民や乗客が盛んにカメラのシャッターを切っていました
一番列車を見送った長野市内の男性(23)は「金沢に行ってみたい。何か興味深いものが見つかるかも」と話し、朝のジョギング途中にホームに入ったという男性会社員(45)は「北陸はこれまで遠すぎました。兼六園を見たり、おいしいものを食べたい。長野は通過点になるという懸念もあるようだがそんなことはありません。信州も善光寺に人を迎え、スキー、登山を楽しむ魅力ある地域として自信を持ちたい」と話していました。また、20代の会社員女性2人は「富山のおいしい魚が食べたい。長野も頑張っているけれど、金沢や富山の魅力も大きいです」と、期待していました。
「かがやき」など4つのタイプ
北陸新幹線は、東海道新幹線と並び首都圏と関西圏を結ぶ延長約700キロの計画で、長野冬季五輪の前年の平成9(1997)年10月に東京~長野間が開業。その後長野県内の飯山、新潟県内の上越妙高、糸魚川、富山県内の黒部宇奈月温泉、富山、新高岡の各駅を経て石川県の金沢に至る建設を進めていました。
速達タイプの列車「かがやき」は東京~金沢間10往復、停車タイプの「はくたか」は同14往復と長野~金沢間に1往復、東京~長野間の「あさま」は16往復、富山~金沢間のシャトルタイプ「つるぎ」は18往復します。金沢延伸の基点となった長野駅にはこれまでの27本を大幅に上回る41本が停車します。
沿線の時間短縮は、在来線の上越経由がネックになっていた長野へのメリットも大きく、長野~金沢間が約2時間の大幅短縮になります。長野~上越間も近距離でありながら富山~東京間とほぼ同じ約1時間の短縮です。
沿線各県は、首都圏や関西とも近くなる金沢までの延伸効果に期待し、県によっては100億円近い波及効果を試算。誘客対策などで各県がしのぎを削り、商工会議所なども含め戦略を練っています。金沢、富山、長野など沿線の主要都市を中心に“都市間競争”と呼ばれる状況が生まれるとの予測がある一方で、都市間の協調・連携で信越・北陸の広域的な観光戦略の展開も可能になるとの期待も広がっています。
(高越良一/ライター)
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